途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 原油価格高騰の謎を解く【中編】(「Next石油時代」の主導権争いを読む:その4)

<<   作成日時 : 2008/07/18 09:15   >>

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世界の原油価格のベンチマークとなっている「WTI」という指標は、
生産量の多い「中東産」ではなく、
極々わずかしか取れない「米国産」の、しかも「先物」の値段だった。
この奇妙な現象がなぜ起こってしまったのか。
それは、「先物」という仕組みの存在に、
この謎を解くカギが隠されていたのだ。


この「先物」という仕組みは実に巧妙だった。
「先物」という仕組みを用いれば、
本来実物のモノを動かす必要のある取引を
カネの受渡だけで済む「金融商品」に変えることが出来た。


「金融商品」に変わるということは、
実物の受渡を欲しない人たちにも、
オイルマーケットへの
門戸を開放することを意味していた。



この効果は絶大だった。
「先物」という仕組みによって「金融商品」に変わったことで、
オイルマーケットへの参加者は飛躍的に増えた。


その結果、生産量が極小であるにも関わらず、
取引量が爆発的に増えたことによって、
「WTI」は世界の原油価格のベンチマークとなった。
原油の価格決定権を中東から米国が奪ったのだ。


しかし、門戸を開放しただけでは、
参加者が増える保証など全くなかった。


事実、1983年にこの仕組みが出来た当初から
いきなり参加者が増えたわけではなかった。
取引高が急激に増え始めたのは2006年に入ってからだ。

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そして、取引高の増加を伴って、
価格も急激な上昇を描き始めたのですが、
そのきっかけとなったのは一体何だったのでしょうか。


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<某投資銀行が出した「ぶっ飛び」予測>


今を去ること3年前の2005年3月。
ある一人のアナリストが
こんな大胆予測を打ちたてて、世間を驚愕とさせました。

【参考】Goldman sees oil price 'super spike'
But others are skeptical $105 forecast is reasonable(MarketWatch:2005/3/31)
http://www.marketwatch.com/News/Story/Story.aspx?guid=%7BF25E14D4-FDFE-4CC6-BDC2-FCB6BCA84E57%7D

原油価格は今後数年続く急騰相場に突入し、経済成長と需要増大によって価格は1バレル105ドルまで上昇しないと、エネルギー消費を顕著に抑制させることは出来ないだろう、とゴールドマンサックス(GS)のアナリストが火曜述べた。

「我々は、原油市場は『超急騰相場(Super-Spike)』の初期段階に入ったと考えている。エネルギー消費が顕著に減るまで相場は上昇し続け、十分な供給余力が創出されることによってのみ、価格は元の水準に下がることになるだろう」とアナリストのMurti氏は述べた。

(Oil prices have entered the early stages of a multi-year period of trading in which economic growth and rising demand could push oil to $105 per barrel, enough to meaningfully reduce energy consumption, Goldman Sachs analysts said Thursday.

"We believe oil markets may have entered the early stages of what we have referred to as a "super spike" period -- a multi-year trading band of oil prices high enough to meaningfully reduce energy consumption and recreate a spare capacity cushion only after which will lower energy prices return," said analyst Arjun Murti. )



そのアナリストの名は
「Arjun Murti(アルジュン・ムルティ)」


実は、彼が所属していたのは、
あの「BRICSレポート」で中国を「ほめ殺し」にした
ゴールドマンサックス(以下:GS)だった。


【参考】外貨準備急増が示していた巧妙な「仕掛け」
(五輪開催に向けて仕掛けられた中国包囲網:その5)
http://keyboo.at.webry.info/200805/article_6.html


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GSと言えば、サブプライム問題で
欧米の銀行・証券が軒並み大赤字を噴出する中においても
逆張って大儲けしたという、
まさに「世界最強の」証券会社である。

【参考】米ゴールドマンが巨額利益 サブプライムで「逆張り」(産経)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/071214/fnc0712142109023-n1.htm

米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題に絡み、大手金融機関が相次いで巨額の損失を出す中、米証券大手ゴールドマン・サックスが、同ローン関連の資産担保証券の急落を見込んだ「逆張り」投資で、1年間で40億ドル(約4500億円)近い巨額利益を上げていたことが14日、分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が報じた。



そして、そのマーケットに対する影響力は、
「BRICSレポート」によって、投資家を雪崩のように
中国に飛びつかせたことからわかるように、
とてつもなく「甚大」だ。


そんなマーケットに甚大な影響力を持つGSが、
原油価格の先行きに対して、
当時としてはとんでもなく強気の見通しを立ててきた。


いくら影響力のあるGSだからって、
この見通しはちょっと強気すぎるんじゃないのか。
1バレル50ドルでも高いのに、ここからさらに倍になるなんて??


当初は多くの人が、
この「ぶっ飛び予測」に懐疑的だった。


しかし、ムルティはひるまなかった。
3月に出した100ドル予測では飽き足らず、
その年の年末には、
何と「100ドルでも保守的だ」と言ってのけたのだ。


【参考】Goldman's Murti Says `Peak Oil' Makes $105 Price Tame(Blomberg:05/12/19)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=10001099&sid=aFJyCHnwQLHU&refer=energy

3月に1バレル105ドルになると言って市場を撹乱させた、GSのMurti(ムルティ)アナリストだが、今ではもし「原油枯渇シナリオ」が正しく、原油供給が途絶えていくのであれば、自身の前回の予測は保守的であり、原油価格はさらに上がると述べている。

(Goldman Sachs Group Inc. analyst Arjun Murti, who roiled oil markets in March by saying crude may reach $105 a barrel, now says that may be conservative if the ``peak oil'' theory is right and world supplies are running out.)



このムルティの執拗な「熱意」は、
ついに、夥しい数の投資家を原油先物市場に引きずりこんだ。
それは、取引高の激増から見て取れた。

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これは「新しい投資家層」が
大挙として参加してきたことを意味していた。



では、その「新しい投資家」とは
一体誰のことだったのでしょうか。








<槍玉に挙げられた「投機筋」>


ムルティの予測どおり、WTIは100ドルを越えた。
いや、100ドルで止まるどころか、
直近では150ドル近くまで上昇し、
世界中で暴動が起こっていることは記憶に新しいところだ。

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【参考】インドネシアが石油製品値上げ、抗議デモで多数の逮捕者(読売:2008/5/24)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080524-OYT1T00613.htm?from=navr
【参考】漁船員、パリで暴徒化=燃料費高騰で抗議−仏(時事:2005/5/21)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008052100915


そんな社会不安を巻き起こすくらいにまでになると、
にわかに沸き起こってくるのが「犯人探し」だ。
その矛先は「いわゆる『投機』」なるものに向けられた。

【参考】オバマ氏が原油高対策、投機的取引への監視強化(日経:08/06/23)
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080623D2M2300F23.html
【参考】「富の移転」食い止め 投機マネーは退場を(フジサンケイビジネスアイ:08/07/12)
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200807120041a.nwc

このような事態に陥っている大きな要因の一つが投機筋のマネーだ。世界的な株安、ドル安で行き場を失った膨大な投機マネーが商品相場に流れ込み、異常ともいえる資源・食糧高を引き起こしている。つまり、この投機マネーに対して、なんらかの規制を設けることが、この異常事態収拾のカギになるのではなかろうか。



では、「投機」とは
そもそも一体何のことを指すのだろうか。

【参考】投機(AllAbout)
http://allabout.co.jp/glossary/g_money/w001662.htm

投機とは、その証券や通貨の価値よりも値動きに目をつけて短期的に利ざやを稼ごうとする行為。

例えば、為替取引の場合には、実際に外貨を決済のために買うことを実需という。それに対して、短期的な値動きから利ざやを得るためだけに売買することを投機という。



どうも、「投機」とは
「短期的」というところがポイントであり、
それが忌み嫌われているらしい。



たしかに、言われて見れば
「デイトレ」なんかの「ド短期」な部類は、
格好の非難の対象になったりする。

【参考】デイトレーダーは「バカで無責任」経産省次官が失言(08/02/08)
http://www.zakzak.co.jp/top/2008_02/t2008020801_all.html

経済産業省の北畑隆生事務次官(58)が先月、株の短期売買を繰り返すデイトレーダーや投資ファンドを「バカで強欲で無責任で脅かす人」などと誹謗(ひぼう)中傷していたことが明らかとなり、大きな波紋を広げている。



近年原油先物市場には、
投資銀行のトレーディング部門が続々と参戦してきている。
確かに、出来高がここ数年で急膨張したのは、
彼らの高い回転率によるところも大きいだろう。


【参考】NYMEX石油先物取引の実態(ひまわりCX株式会社 国際事業部部長山崎秀人氏)
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/542/200311_001a.pdf

現金決済で取引が終了するスワップ等の石油の店頭取引には殆どの大手投資銀行が参加しており,一部の商業銀行も参加している。

これらの銀行は大規模なトレーディングデスクを持ち,デリバティブ市場で盛んに取引を行っている。この一群は一般的にスワップハウスと言われ,金融界を背景にした広範な顧客層を持ち,価格を顧客に提示し約定される事でリスクを取り,収益機会を探す売買を繰り返す。

一部のデスクは,取引量の70−80%は投機で,方針として自己の取引での利益追求が中心となっている所もある。大きなリスクを取る事が出来るのは,優れたリスク管理手法が確立されている反映である。

米国では,70年代後半から80年代前半にかけて株式手数料と金利が自由化された。その間,グラススティーガル法に基づき,分離されていた商業銀行と証券会社(投資銀行業務を含む)の業務上の垣根は,互いの領域を侵食し合う事で事実上無くなり,金融の大競争時代を迎える事になった。

投資銀行でも,当時の4大投資銀行の内ディロンリードなどの保守的な企業が力を失い,変わってトレーディング部門の強いゴールドマンサックスやソロモンブラザーズが台頭するようになってきた。トレーディングの対象商品は,本業である株式,債券や為替に加え,貴金属やスワップまでと多種多様に渡ってきた。顧客の為に新しい商品を開発すると共に,リスクを軽減し,自己の利益を追求するビジネスモデルである。

当初は商品の中でも,貴金属や非鉄金属を取引していたトレーダーが,より裾野が広く収益機会の大きいと思われる石油に移ってきた。



そして、ムルティの属する当のゴールドマンも、
原油先物市場で主要なプレーヤーを演じており、

実はムルティの予測は、
「純粋な」予測ではなく、
GSによる「自作自演」なのではないか


という疑いまで出てきた。

【参考】石油高騰の謎(田中宇の国際ニュース解説)
http://tanakanews.com/080514oil.htm

米大手投資銀行のゴールドマンサックスは最近、原油価格は今後2年以内に1バレル200ドルまで上がるかもしれないとの予測を発表した。同銀行は3年前、原油が100ドルになる現状を正確に予測していたことで知られ、今回の200ドル説も重視されている。しかし、原油価格がWTI先物の投機によってつり上げられ、ゴールドマンが投機筋の親玉の一人であると考えるなら、自作自演の高騰なのだから、予測が当たるのは当然だ。



では、本当に昨今の原油価格高騰は、
GSによる「自作自演」なのか。
本当に「短期的な投機筋」の仕業なのでしょうか。








<本当に「投機筋」が犯人なのか?>


「デイトレ」などの短期の投機家が
相場のかく乱要因として批判されたりすることはよくある。


確かに、彼らは短期的に大量の商いをするので、
相場の変動に大きく寄与するのは間違いない。


では、やはり「短期的な投機家」が
原油価格高騰の犯人と断定してよいのでしょうか。

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「出来高の急増」は
「投機筋」の大量参加によって説明できるかもしれないが、
「価格の急騰」まで
「投機筋」の存在で説明できるのだろうか。


実は、その指摘は半分正しくて半分正しくない。
なぜなら投機家は時間の制約があるため、
大きなポジションを取ったとしても、
早晩それを解消するからだ。



つまり、買いから入った人は早晩転売し、
売りから入った人は早晩買い戻すのだ。


だから、「短期的な投機家」は、
ボラティリティの上昇要因にはなったとしても、
「長期的な」相場のトレンドを作る力は持っていないのだ。


【参考】価格変動の本質(矢口新のDealer's WEB)
http://www.geocities.com/dealers_web/J066.html

ここに1つの出合があるとします。このとき買い手はロングポジション、売り手はショートポジションを同一価格で、同一量抱えることになります。

この条件の下では、その日は何も起こりません。しかしその翌日には、与えられた条件によって売り手は必ずショートカバーをさせられます。踏みです。

買い手Aと売り手Bがいるとき、翌日には売り手Bはそのショートポジションを売り手B'に、その翌日には売り手B'がそのポジションを売り手B''にと転嫁し、当初の買い手Aが1年後にそのロングポジションを閉じにくるまで、毎日ショートカバーが入ることになります。つまり市場には毎日、条件によって定められた切実な買い手が現れるわけで、たった1つの出合で価格は限りなく上昇するのです。

ここで得られる結論は、価格変動はポジションの保有期間の長さによって決定されているということです。



「短期的な」トレンドは
投機筋にも作ることはできるだろうが、
原油価格は既に5年以上もの長期に渡って上昇を続けている。


この長期にわたる上昇トレンドは、
「短期的な」投機家だけで作れるものではない。


【参考】初心者向け:金価格上昇は投機的バブルか?(豊島逸夫の手帖:三菱マテリアル)
http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/2008/417.html

最近、金価格が注目され、市場の裾野が広がるに連れ、改めて“金価格上昇=単なる投機マネーのバブル”という固定観念の根強さを痛感しています。たしかにヘッジファンドなどの投機筋が先物市場で2−3か月サイクルの短期的売買を繰り返し、価格の乱高下を引き起こしています。しかし、同時並行で、欧米の年金基金とか中国、インドの現物購入などの長期保有が急速に増えていることこそ価格水準の切り上げをもたらしているのです。この部分がなくては、短期的売買の繰り返しだけで、価格水準が徐々に切り上がってゆくはずもありません。

イメージ図で示せば、投機マネーだけのゼロサムゲームの場合がこれ。

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つまり、この「価格変動の本質」からわかることは、

昨今の原油価格高騰の背景には、
「保有期間の長い『長期投資家』の存在がある」


ということに他ならないのだ。


そして、その「長期投資家」こそが、
上昇トレンド形成に大きく寄与していたという事実が
厳然と存在していたのです。


では、その「長期投資家」とは
一体誰のことなのでしょうか。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200807/article_5.html


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
新快速播州赤穂行きさん,こんばんは。

またでかいヤマに挑んでらっしゃいますね! ワクワクして見てますよー。

最近云われるようになった「透明性の確保」をやられて本当に困るのは誰か,という事でしょうか。 EXXONへの経営圧力も関係がある? 全然想像できないので焦らしてください(^^) 

GSは財務長官以外にも政府関係者がたくさんいるのかなぁ? インサイダー情報も半端じゃなく持っていそうで。 証拠は出ないでしょうけど確信はしています。 
umejum
2008/07/20 00:53
umejumさん>
コメントありがとうございます。意気込んで「でかいヤマ」に取り組むのはいいのですが、構想がまとまりにくいのと、仕事の都合で更新が遅れてしまうことが多々あるのが難点ですね(笑)。いつもご覧頂きありがとうございます。さて、「透明性の確保」(=時価会計の徹底と損の全償却)についてですが、これは多分漸進的にしか出来ないんだと思います。これを早急にやっちゃうとただでさえ起こっているクレジットクランチがさらにひどくなって、クレジットクランチが起こって困るのは、過剰な借金をしている人たちですから、米国全体に及んでしまう。そして、米国にとどまらず、いくら衰退したからといっても、米国は世界一の経済大国ですから、この国がコケてしまうことの影響は今でも十分大きいわけですね。マーケットもろくに機能していない状態で「実現損」を出せるわけなどありませんから、かつて米国が日本に促したように「一気に」損出しなんてことは出来ないんですね。それを今回米国は身に染みて感じたんだろうと思います。
新快速 播州赤穂行き
2008/07/23 15:52
(続き)
GSの政府とのリンケージは以前から言われており、かなり「お上」に食い込んでますよね。私も確信に近いものを持っておりますが、あまりそれを振りかざすと「陰謀論」と一緒にされると嫌なので、なるべく「タッチ」は気をつけるようにしております。
新快速 播州赤穂行き
2008/07/23 15:52

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