途転の力学

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help リーダーに追加 RSS ASEANの時代が来る(2008年世界情勢を考えるための10の視点:その5)

<<   作成日時 : 2008/01/21 20:36   >>

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今世紀に入ってからの大きな流れとして、
新興国経済の目覚ましい発展というのが上げられると思います。


一方の先進国経済はどうかというと、
世界一の経済大国である米国は、
サブプライム問題から景気後退懸念が出ていますし、
第二位の日本も一向にデフレを脱却できないばかりか、
お上の余計な規制強化による官製不況のせいで、
世界からの関心と競争力の低下は著しいものがあります。

【参考】家が建たない 「国交省が引き起こした官製不況だ」 (産経)
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/071224/sty0712241744005-n1.htm
【参考】「東京市場、魅力失いつつある」・斉藤東証社長が年頭あいさつ(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080105AT2D0400204012008.html


この経済力の勢いの違いというものが、
地政学的パワーバランスの変化をもたらしているとも言え、
世界は「米国一極集中」から「多極化」へ
移行し始めており、この流れはこれからも続くのでしょう。


さて、新興国経済の中で、
その発展の象徴として中心的な役割を担っているのは
恐らくみなさんご存知かと思いますが、
「BRICS」と総称される、「中国・ロシア・インド・ブラジル」
の4つの国々です。

【参考】BRICs(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/BRICs


株価を見ただけでも、もう一目瞭然ですよね。
先進国とは伸び率の桁が違う。
これがそのまま勢いの差として表れているわけです。


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では、これからも「BRICS」ブームは続くのか。
いやいや、「抜け目ない人」はもうその次を見ているんですね。



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<金融の巨人が定めた次の狙いは?>


その「抜け目ない人」とは、
まさに「BRICSブーム」を作り出した張本人のことです。


その「張本人」とは、米国の大手証券会社
「ゴールドマン・サックス(以下 GS)」のことです。


彼らは、BRICSブームを作りだし、
いち早くそこでビジネスを展開して大もうけしました。

【参考】Global Economics Paper No. 99: Dreaming with BRICs: The Path to 2050
http://www2.goldmansachs.com/insight/research/reports/99.pdf


サブプライム問題でも米大手金融機関では唯一傷つくことなく、
それどころか、逆張って過去最高の利益を手にする
見事の相場観を働かせ、いまや世界最強の金融機関
との呼び声が高くなっています。

【参考】米ゴールドマンが巨額利益 サブプライムで「逆張り」(産経)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/071214/fnc0712142109023-n1.htm

米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題に絡み、大手金融機関が相次いで巨額の損失を出す中、米証券大手ゴールドマン・サックスが、同ローン関連の資産担保証券の急落を見込んだ「逆張り」投資で、1年間で40億ドル(約4500億円)近い巨額利益を上げていたことが14日、分かった。


そんな「一人勝ち」状態の彼らが次に目をつけたのはどこか。
それはBRICSでもアフリカでもなく、
何と「ASEAN」だったのです。

【参考】Goldman targets Asean opportunities(FT)
http://www.ft.com/cms/s/0/a6b68160-9d18-11dc-af03-0000779fd2ac.html

(抜粋拙訳)

ゴールドマン・サックス(以下 GS)は、東南アジア部門を統括する責任者を新たに設け、取締役級の人間をそのポジションに任命した。これはGSが東南アジアを強気に見ていることの表れである。

国際的な投資銀行のアジアにおける活動は、中国やインドなどの急発展している国に経営資源が注がれている中、インドネシアやタイなどの規模の小さい東南アジアの国々を統括するポジションを設けたGSの動きは非常に注目されるだろう。




「BRICS」はもうお腹一杯十分儲けたからか。
他者が中国に本腰!となっているのに早くも次の一手を出してきた。
やっぱりこの巨人の「抜け目なさ」はすごい!


BRICSブームを作ったのも彼らだし、
そこでしこたま儲けたもの彼らだし、
サブプライムで唯一こけてないのも彼らだし、
財務長官(ポールソン)出してるのも彼らだし。

【参考】ゴールドマンサックスと米政府の間にある”緊密な関係”(中岡望の目からウロコのアメリカ)
http://www.redcruise.com/nakaoka/index.php?p=179

ブッシュ政権の3人目の財務長官が誕生します。ゴールドマンサックスの会長兼CEOのヘンリー・ポールソンの財務長官就任人事に関する公聴会が議会で開かれています。同氏の財務長官就任に関連して、今、ウォール街の勇ともいうべきゴールドマンサックスとアメリカ政府の間にある密接な関係が話題になっています。同社出身で、閣僚や政府の要職についた人物の数は、他の民間企業を比べると圧倒的に多いのです。


こうしてみると、

「世界の金融はGSを中心に回ってるんだね〜」

っていうことがよくわかります。
(サブプライムで何であんな逆張りポジションが取れたのかな〜
っていうのはただの相場観だけではないような気がしないでも・・・)


そんな彼らが次に「ASEAN」に目をつけてきたという事実は、
ここに新たなブームを予感させるというわけで。


では、なぜ「ASEAN」なのでしょうか。






<「強い経済」と「整備された資本市場」をあわせ持つ強み>


その理由はこれです。

【参考】ASEAN、2015年までに経済共同体・目標を正式採択(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071120AT2M2001H20112007.html

首脳が採択した「ASEAN経済共同体ブループリント(青写真)宣言」はモノ、サービス、投資など5分野の自由化を核に、市場や製造拠点を一体化する行程を示した。中国やインドが台頭する中、創設40周年を迎えるASEANの人口約5億人、域内総生産(GDP)約7000億ドルの市場を融合、存在感の保持を狙う。


これまで小国の集まりでバラバラだった
東南アジア諸国が
共同体として2015年に一つの経済圏になります。


「経済共同体」になるということは、
市場規模が一気に拡大することを意味します。
また、東南アジア諸国は新興国でも経済的に発展する
素地が整っている地域で政治的にも安定している。
これは質の点でも量の点でも大きなビジネスチャンスである。


さらに、BRICS諸国と比べると、
まだ株価も大して上がっていない。
まだまだ成長の余地があると見ることも出来る。

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しかし、もしかしたらこれが一番重要で、
かつASEANが他の新興国と差別化できる決定的な要因として
考えられるのは実は他にあるのです。


それは、

ASEANには「アジアの金融センター」である
シンガポールがある


ということです。
(東京はお上の規制強化によって全く魅力がなくなってしまい、
もはやアジアの金融センターではなくなってしまいました)

【参考】金融センター目指すシンガポール 世界のファンド集結(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060626mh06.htm


そのシンガポールを中心に
ASEANの資本市場がリンクされるようになると、
先進国にも匹敵するような一大資本市場が形成されることに
なるわけです。


この巨大かつ先進的な資本市場は、
BRICSにはない大きな強みです。
BRICSには「強い経済」はあるけれども、
「整備された資本市場」はまだありません。


【参考】Goldman targets Asean opportunities(FT)
http://www.ft.com/cms/s/0/a6b68160-9d18-11dc-af03-0000779fd2ac.html

(抜粋訳)

ASEAN主要国は、お互いの資本市場のリンケージを高めようとしている。今週、タイ・インドネシア・ベトナム・マレーシア・シンガポール・フィリピンの証券取引所の首脳陣は、各国の資本市場間のさらなる提携を深めることと、「ASEAN」資産クラスの名称を提案することで合意した。

The main Asean economies are trying to increase links between their financial markets as well.

This week, the chiefs of stock exchanges in Thailand, Indonesia, Vietnam, Malaysia, Singapore and Philippines agreed to consider ways to deepen links between their respective capital markets, and to promote the notion of an “Asean” asset class.



GSはまさにいち早くそこを狙っているというわけなのです。
中国・ロシアの資本市場の成熟を待つくらいなら
ASEANに行けというわけなのです。

【参考】国連、途上国の経済統合を歓迎(JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/world/0712/0712277989/1.php

シンガポールのトミー・コー大使(現ASEAN議長)は、「西側は現在中国、インドそして日本に目を向けているが、5億5千万の人口、国内総生産1兆ドルの東南アジアに目を向けるようになるだろう。ASEAN加盟10カ国は、2015年までに統一市場を形成する」と語っている。


一大経済圏の誕生と、
それに伴う巨大かつ先進的な資本市場の創設。


「強い経済」「整備された資本市場」
「経済共同体」誕生によって、
この両方を兼ね備えるであろうと見込まれる「ASEAN」は、
BRICSブームの次の役割を十分にあるいはそれ以上に
担っていると考えられるわけなのです。


では、なぜASEAN諸国は、
この期に及んで「経済共同体」創設に動いたのでしょうか。






<「危機感」がもたらした「経済共同体」>


というのは、
これまでも東南アジア地域は全くバラバラであったかというと
そういうわけでは決してなく、
「ASEAN」という地域協力機構の存在からもわかるように、
自らの存在感を上げるために努力をし、
成果を上げてきたからです。


しかしながら、ASEANは「全会一致」かつ「内政不干渉」
の原則をとっているため、皆が合意できそうなことしか
決めてこなかった経緯があります。



従って、ミャンマーやベトナムのような独裁国家を
内包するこの地域における「まとまり」は、
全てが民主主義国家で構成されているEUのように、
通貨統合とか憲法制定のような、
「域内協力」の範疇を超えた本格的な「統合」という
ところまではなかなかいかなかったのです。


しかし、そんな彼らが今回経済面ではありますが、
本格的な「統合」に向けて動き始めた。
何が彼らの重い腰を動かしたのでしょうか。


「ASEAN」の動きを見る上では、
抑えておくべきポイントがいくつかあると思うのですが、
私は以下のような観点から見ることにしています。


● ASEAN諸国は小国の集まりであり、かつ(タイを除いて)
  大国に植民地支配された経験がある。

● さらに、北はインド・西は中国・東は日本と大国に
  囲まれており、地政学的には分が悪い。

● 従って、再度大国に支配されないようにするために、
  小国同士が結束して地域として存在感を示す
  必要があるし、全方位外交をして、
  特定の大国とだけ仲良くすることの
  ないようにするインセンティブが働く。



つまり、東南アジアの連携は、
囲まれた大国の中に埋没しないようにするための
「危機感」から来ているのではないか
と思われるのです。


そう考えると、今回の「ASEAN経済共同体」の
動きも「危機感」に端を発していると考えることが出来そうです。


では、彼らを動かしたのは
何に対する「危機感」だったのでしょうか。






<インド・中国の台頭が彼らの手を結ばせた>


そう、それは間違いなく中国・インドに対する「危機感」です。

【参考】ASEAN構図激変 域内に中印パワー(NIPPON NEWS LOG)
http://nnl.jugem.jp/?eid=1416

東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の会議が行われているセブで14日、インドと中国がそれぞれASEANと首脳会議を行い、経済関係の拡大、深化を進めた。先行する中国の“南進政策”に対し、“ルック・イースト政策”により東南アジアへの進出を狙うインド。これまで日中両国の影響力争いが熾烈だった地域に、新たなパワーが存在感を示し始めた。域内ではベトナムが台頭しており、中印越3国の“綱引き”も熱を帯びている。

〜(中略)〜

かつて日本の独壇場だった東南アジアに、中国に加えインドも進出してきたことについて、ASEANのオン・ケンヨン事務局長は「ASEANは周辺の大国と等距離でバランスの取れた付き合いをする必要がある」と慎重に語っている。


著しい経済発展によって、中国・インドは巨大になりすぎた。
そこに挟まれるASEANは、
このままでは両国に飲み込まれてしまうかもしれない。


ここは存在感を維持するためにも、
生き残りをかけて「経済共同体」になるしかない。
彼らは「いちかばちか」の賭けに出たのだ。


以前、どなたかが

「人間を突き動かすのは恐怖と危機感だ」

とおっしゃっていたのを思い出したのですが、
まさにその通りだなと思いました。


日本はこの危機感を共有しなくていいのでしょうか。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_9.html

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内 容 ニックネーム/日時
 そんな、人のふんどしで相撲をとる夢ばかり見ていないで、自前の経済を考えるべきではないだろうか。百姓が米をつくり、職人がものづくりに励んで経済がなりたつのであって、商人や金融は補助機能にすぎない。
 真面目にひたいに汗する人がむくわれる国にするべきだと思う。
罵愚
2008/01/22 17:43
罵愚さん>
ご意見いただくのはありがたいのですが、ご発言の意図を掴みかねております。「真面目にひたいに汗する人がむくわれる国にするべきだと思う」というのはその通りだとは思いますが、「人のふんどしで相撲を取る夢ばかり見ていないで」というところの意味がわかりません。この主語は私?「人のふんどしで相撲を取る」というのは何を意味されているのでしょうか?またひたいに汗して頑張っておられる「商人」の方もたくさんおられると思いますが?あと「自前の経済」とはどこの国のことでしょう?もし日本のことをさしておられるのであれば、今回のエントリーの趣旨とは反しますので言及してなくて当然です。
新快速 播州赤穂行き
2008/01/22 19:16

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