途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 中国内部が抱える対立構造A(中国分裂の可能性を探る:その2)

<<   作成日時 : 2007/10/30 09:47   >>

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画像



未曾有の経済成長に沸き返る中国。
その繁栄とは裏腹に中央政府は過熱感を警戒。
成長が唯一のレゾンデトールである政府にとって
行き過ぎの反動は何よりも怖いのだ。


しかし、過度な抑制は成長の恩恵に預かっていない
地方の不満を増幅させている。
だから地方の暴走を中央が制御できない。
放任も地獄、引き締めも地獄の難しい舵取り。


地方対都市(中央)の経済格差が
中国の社会不安の大きな要因となっている。
では、他に対立の構図は存在しないのでしょうか。



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<党規約の改正が意味することは何か>


前回もご紹介しましたように、
先日行われた中国共産党の党大会では、
成長重視のケ小平・江沢民路線から党規約を改定し、
安定成長路線へと方針を大転換しました。

【参考】「胡色」鮮明、新体制へ 中国共産党大会閉幕(朝日)
http://www.asahi.com/international/update/1021/TKY200710210163.html

大会では、胡氏が提唱する持続可能な経済発展を目指す戦略思想「科学的発展観」を盛り込んだ党規約改正案が採択された。経済成長至上主義を改め、環境問題や格差の是正に取り組む姿勢を示している。



これは非常に重要な意味を持っています。


というのも、中国共産党において、
党規約を改正し、これまでの路線を転換するというのは、
単なる「政策変更」ではありません。


これは、胡錦濤にとっては前政権、すなわち

「江沢民」を真っ向から否定する

ことを意味するのです。


権力闘争がお家芸の中国において、
江沢民率いる「上海閥」と
胡錦濤率いる「北京閥」が
壮絶な権力争いを繰り広げているというのは
兼ねてから指摘されておりました。

【参考】胡vs上海閥 激しい応酬 野口東秀
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/89074/


従って、党規約を改正したということは、
江沢民を公に否定した(できた)ことを意味し、
胡錦濤は権力基盤を固めたと
捉える事ができるのです。


【参考】中国共産党大会、党規約改正に権力闘争の影(産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071018/chn0710181922002-n1.htm

北京で開かれている中国共産党大会は18日、党規約改正案の審議に入った。同党の思想、組織、行動の最高準則と位置づけられる党規約は、これまでも権力者の交代などに伴って“政争の道具”として使われることが多かった。今回の改正案審議の舞台裏にも、胡錦濤総書記と江沢民前総書記がそれぞれ率いる2大派閥による路線・権力闘争の影が見え隠れする。



では、今回の党規約改正によって
「北京閥」が勝利を収め、
胡錦濤の権力基盤は固まったのでしょうか。







<「名」を捨て「実」を取った「上海閥」?>


それは、党大会において発表された
政治局常任委員の人選で明らかになりました。


中国における最高指導機関は
「全国人民代表者会議(全人代)」ですが、
閉会期間中は「中央委員会」が代行することになっています。


そして、「中央委員会」にある中央政治局と常務委員会は
党の最高意思決定機関であり、「中央委員会総会」の閉会中は
当委員会の職権を行使することになっています。


ということは、
実質的には中央政治局の常務委員が
最高権力の地位に位置することになり、
この常務委員に誰が選ばれるかで、
その時のトップの力加減が試される
ことになるのです。


【参考】中国共産党(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%85%B1%E7%94%A3%E5%85%9A


従って、党規約を自分色に変える事ができても、
この政治局の常務委員人事を抑える事ができなければ、
せっかく描いたビジョンも「絵に描いた餅」ということになるわけです。


では、その「常務委員」の顔ぶれはどうなったのか。

画像



結果は一目瞭然で、江沢民率いる「上海閥」が
実に3分の2を占めることとなってしまった。


【参考】江沢民色残る顔ぶれ 中国共産党最高指導部(産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071022/chn0710221958003-n1.htm

この常務委人事は、江沢民前総書記が強い影響力を及ぼした布陣とみられ、胡総書記は今後、独自の人脈と影響力をいかに発揮し党内の安定を図るかが課題となる。



これだけ見ると、
「上海閥」は党規約改正という「名」を捨て、
常務委員の職という「実」を得たことになる。



つまり、胡錦濤の権力基盤は安泰となったどころか、
「上海閥」の影響力がまだ色濃く残っていることを示している。


そして、さらにこれ。

【参考】上海市トップに兪正声氏(産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071027/chn0710272038003-n1.htm

習氏に続き兪氏も「太子党」で、江沢民前総書記との関係が良好とされており、胡錦濤総書記は上海に自らの側近を送り込むことはできなかった。



まだ胡錦濤の「北京閥」は
「上海閥」を抑えきれていないことが明らかになった。



もちろん上海閥の中から裏切り者が出る可能性は
大いに考えられますが、いずれにしろ、
繰り返しになりますが、胡錦濤の権力基盤は安泰とはいえず、
「北京」対「上海」の権力闘争は今後も続く事が予想される。


つまり、都市(中央)も一枚岩ではなく、
権力闘争に起因する、
都市間の対立構造を抱えているのです。



さらに、権力闘争を考える上で
もうひとつ、無視できない存在があります。







<無視できない「人民解放軍」の存在>


それは「軍」の存在です。


中国における「軍」とは、
言わずと知れた「人民解放軍」なのですが、
これは「国軍」ではなく、
あくまで中国共産党所有の「私兵」なのです。

【参考】中国人民解放軍(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E6%B0%91%E8%A7%A3%E6%94%BE%E8%BB%8D

中国人民解放軍(ちゅうごくじんみんかいほうぐん Zhōngguó rénmín jiěfàngjūn)は、中国共産党中央軍事委員会(主席:胡錦濤)の指揮下にある中国共産党の軍事部門(私兵)。



「中国共産党の私兵」であるということは、
その指揮命令系統が国家に帰属するものではなく、
あくまで共産党の中央軍事委員会の指揮の下に
行動を起こすということです。


中国は創始者の毛沢東が公に宣言したように、
「銃口から政権が生まれる」という「人民戦争論」を
唱え続けてきたため、軍の指導権を握ったものは
絶対的な権力を有してきました。


【参考】毛沢東思想(中国文化辞典)
http://www.togenkyo.net/culture+index.content_id+65.htm

毛沢東思想は従来のマルクス主義、レーニン主義では説明できない中国革命の現実から生まれたものといえる。その特徴は、@「農村が都市を包囲する」という農村根拠地論、A「銃口から政権が生まれる」という人民戦争論、B植民地、半植民地における「新民主主義革命論」に代表される中国社会の分析、C文革時代の「継続革命論」にみられる社会主義における階級闘争論、D人民の「能動主観性」に依拠した急進主義や理想主義、などに見ることができる。



それは今となっても同じであり、
江沢民が、国家主席を辞任後も
影響力を保持し続ける事が出来た理由は、
中央軍事委員会トップの座を
なかなか胡錦濤に明け渡さなかったからです。

【参考】中国共産党中央軍事委員会(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%85%B1%E7%94%A3%E5%85%9A%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E8%BB%8D%E4%BA%8B%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A

中央軍事委員会主席は軍の統帥権を持つため、実質的に中国のトップと言える。ケ小平がヒラの党員になりながらもこのポストだけは最後まで手放さなかったのはそのためでもあるが、総書記、国家主席と中軍委主席の3つのポストが分散していた1980年代に安定を欠いたため、1993年からは全てのポストを1人に集中させるようにしている。江沢民はケ小平のマネをしようとしたが、院政を万里、喬石などの元老に批判され、また批判票も多く出た。



従って、軍部の支持を得られるかどうかというのが
最高指導者にとって死活問題となるわけで、
政権運営においては、軍部の意向をまったく無視する
わけにはいかないという国情が中国にはあるのです。


【参考】中国人民解放軍建軍80周年からみた上層部内部の激烈な権力闘争(大紀元)
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/08/html/d79005.html


この政府と共産党の私兵である
人民解放軍とのパワーバランスの関係は、
中国の海外政策における「ホンネ」と「タテマエ」を読み解く際に
抑えておくべき事項であると言えます。







<中国の抱える3つの対立構造>


では、これまでの議論を踏まえて、
中国内部が抱える対立構図はどのように
捉えることができるのでしょうか。


それを表わしたのが下の絵です。


画像



この絵で表現されていますように、
中国の抱える内部対立構造とは、


● 経済格差に起因した「都市対地方」の地域対立

だけでなく、

● 権力闘争に起因した「北京対上海」の都市間対立

さらには、

● 人員解放軍が「私兵」であることに起因する
  「政府対軍」のパワーバランスの対立


という構図も存在するということがわかりました。


では、本当にこれだけなのでしょうか。


実はさらに奥深くには、
さらなる問題も抱えているのです。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200710/article_21.html

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
一点だけ「上海閥」について。シナ語では「上海幇」といいます。この「幇」は、「青幇」「四人幇」など同様、「山口組」などの「組」に相当します。

まず定義が必要であると思います。それは1989年の天安門虐殺の後に上海から北京中央に引き揚げられた中央指導者たち、であるでしょう。江沢民がその中心でした。その意味では今や呉邦国と賈慶林だけになりました。曾慶紅が2002年に江沢民を裏切りコキントー支持に回って江沢民を退任させて以来、呉邦国も江沢民には距離を置いていましたから、もうすでにかっての「上海閥」は存在しない、といってもいいでしょう。

マルコおいちゃん
2007/11/06 23:23
また「北京閥」というのも少し違っていると思います。地方閥で言えば、コキントーと温家宝はともに甘粛省で同僚だったことがあります。そのときの上司は周恩来の秘書から指導部へはいあがった宋平でした。派閥的には周恩来系統なのです。

またコキントーと温家宝は上海に対抗して天津の開発を図っているため「天津閥」ともいえます。しかし両者はともに清華大学出身のテクノクラートですから「清華閥」ともいえるでしょう。そういう風に括ると習近平も「清華閥」に入ってしまいます。

整理すれば現指導部は北京上海の地方閥で権力を分けあっているわけではないと思われます。

実際は曾慶紅が後ろ盾になる「太子党」と共青団出身テクノクラートの複雑に絡み合った体制と思われます。今後の権力の綱引きが注目されます。その中心は現在蝙蝠のようにどちらとも判断のできない習近平ではないでしょうか?


またご指摘の中共の私兵「解放軍」内での太子党の躍進が目立ちます。さてコキントーがどこまで太子党と妥協しながら軍を掌握できるかが、彼の権力とポスト胡の権力闘争の行方を占う視点であろうと考えます。





マルコおいちゃん
2007/11/06 23:24
マルコおいちゃんさん>
はじめまして。ご指摘ありがとうございます。たしかに私の図はわかりやすくするためにかなりデフォルメしています。マルコおいちゃんさんのように中国に非常にお詳しい方から見れば、突っ込みどころ満載かと思います(笑)。確かにおっしゃるように権力闘争における人物相関は固定されているわけではないので、私の場合はかなり表層的な分類になっているかもしれません。「習近平」に関しても、私は「いわゆる」上海側と判断しましたが、これについてもおっしゃられるようにどちらとも判断できないような気もします。しかし、もはや「上海閥」は存在しないという見方ができるかというと、そこまで言い切ってしまっていいかはこれまでの調査の限りでは判断できるまでには至りませんでした。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/07 20:02
(続き)
今後の権力闘争のポイントについては「太子党」がカギになるという視点は「なるほど」ですね。あとはその権力闘争が単なる上層部の内紛で終わるのか、はたまた何かのきっかけで周辺まで波及した「革命」にまで発展するのか、そういう観点からこのあとのストーリーを展開させていきたいと考えております。ご教示ありがとうございました。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/07 20:03

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