途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 原油価格高騰の謎を解く【後編】(「Next石油時代」の主導権争いを読む:その5)

<<   作成日時 : 2008/07/25 23:39   >>

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今から去ること3年前、
ある一人のアナリストの大胆予測をきっかけに
原油先物市場は大相場を演じ始めた。
1バレル50ドルでも高かった原油価格は、
それからたった3年で3倍になった。
このアナリストの出処は、
「BRICSレポート」で中国を「ほめ殺し」にした、
あの米系投資銀行だったのだ。


マーケットに絶大な影響力を持つこの投資銀行の予測は、
新たな参加者を雪崩のようにオイルマーケットに引き寄せた。
その出来高の増加に伴って、価格も急上昇したのだ。


この爆騰の犯人として短期的な値ざや取りを目的とする
いわゆる「投機筋」に矛先が向けられた。


しかし、「価格変動の本質」からわかったことは、

「短期的な売買の繰り返し」だけでは、
長期的な上昇トレンドの存在を説明することはできない


ということだった。


それは、ウラを返せば、

「昨今の原油価格高騰の背景には、
保有期間の長い『長期投資家』の存在がある」


ということに示していることに他ならなかった。


では、その「長期投資家」とは
一体誰のことなのでしょうか。


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<運用難に苦しんでいた「年金」>


「年金運用」というマニアックな世界がある。
将来の年金を確実に支払うために、
積立金を投資して増やす商売のことである。


その「年金運用」においては、「分散投資」が好まれ、
21世紀に入るまでは、株や債券などの
いわゆる「伝統的資産」というやつで運用されていた。

【参考】分散投資(第一生命)
http://www.dai-ichi-life.co.jp/legal/welfare/business/outline/fund/bunsan_toushi.html

分散投資とは、1つの資産に集中して投資するのではなく、複数の資産にわけて投資する方法をいいます。
値動きの異なる資産にわけることで安定した収益を得やすくする効果があります。

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上図は、1992年〜2007年までの国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の4つの資産に投資した時に得られた各年ごとの収益率です。
各資産ごとのリターンは毎年異なっており、リターンのブレ幅も異なります。
しかし、一定の割合で資産を組み合わせて運用した場合には中央の赤い太い線のように、リターンが安定していることがわかります。



【参考】代替的投資の意義と特徴(大和総研)
http://www.dir.co.jp/consulting/report/library/alternative/0001.html

伝統的資産とは、公開企業の発行する株式や債券を指し、国内外の株式と債券(国内株、国内債、外国株、外国債)は、一般的に、年金資産の運用にとって基本的な4資産と位置付けられている。これに対して、非常にラフな表現を用いると、伝統的資産以外の投資対象への投資は、すべて代替的投資と位置付けることができる。

これまで、年金資産がこれらの基本的4資産を中心に運用されてきたことには、それなりの理由がある。4資産と年金資産の相性が良かったのである。



しかし、
先進国の経済が成熟してくることによって
金利は長期的低下傾向を示し始め、
債券からの利息収入は減少の一途をたどった。


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では、一方の株の方はどうかというと、
こっちはこっちで、今世紀に入ってから、
3年連続のマイナスリターンを記録するという
まさに前代未聞の事態となっていた。


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利息収入を期待する債券もダメ。
値上がり益を期待する株もダメ。
こんなことは未だかつてなかったことだった。

【参考】年金資産運用における代替投資の意義と留意点(株式会社エー・エム・シー)
http://www.assetmc.co.jp/teramoto/seminar/h16-04-01.pdf

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それは、
「伝統的資産」だけで運用することの限界を示していた。
「年金」が新しい投資対象を探し始めたのだ。





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<「商品」の固定観念を打ち破る>


これまで「商品」は投資対象としてみなされていなかった。
「商品」は「投機屋」のやる、「胡散臭い代物」だとみなされ、
「まっとうな投資家」が手を出すものではないと考えられていた。

(注)
これは私がそう思っているというわけではなく、
世間の抱いているイメージがそうではないかという視点で書いておりますので、
もしお気を悪くされた方がおられましたら、予めお詫び申し上げておきます。



その「固定観念」を変えたのがGSだった。
今でこそ「証券会社の」アナリストが
原油価格の予測をすることは珍しくなくなったが、
ムルティが出てきた当時は考えられないことだった。

【参考】原油価格高騰の謎を解く(中編)
http://keyboo.at.webry.info/200807/article_4.html


その「まっとうな」、
しかも「世界最強の」証券会社であるGSが
「これから原油はさらに爆騰する」と言ってのけた。


やばい。
ただでさえ、運用難で苦しんでいるというのに、
原油が爆騰して本格的にインフレになったら大変だ。



インフレには株が強いといわれていた。

【参考】インフレに強い3つの資産 その1(おとなの資産設計ガイド)
http://www.otoshi.net/asset_e1.html


しかし、
その「定説」が必ずしも正しくないということは、
この絵を見れば一目瞭然だった。

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運用難を打開するために
投資対象を広げなくてはいけない。
そして、迫りくるインフレにも対処しなければいけない。

【参考】コモディティー投資(2)〜海外年金基金のケーススタディー(ニッセイ基礎研究所)
http://www.nli-research.co.jp/report/pension_strategy/2007/vol129/str0703d.pdf

海外の代表的な年金基金の例を2つ紹介しただけだが、コモディティー投資の理由として、@分散投資、Aインフレへの対応、B高い期待リターンが狙える、の3点を共通してあげている。



だったら、「商品」そのものを買ってしまえ!!
世界最強の証券会社のシナリオに乗った巨人が、
ついに重い腰を上げたのです。





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<明らかになった真犯人>


ムルティが「原油100ドル」シナリオを掲げた翌年の2006年。
世界の有力年金基金が、こぞって商品投資を本格化させた。

【参考】原油価格をどう見るか(日本総研リサーチアイ)
http://www.jri.co.jp/thinktank/research/eye/2007/0206.pdf

さらに、金融面では、2006年以降、欧米の有力年金基金等が原油をはじめとした商品への投資を本格化したことが、原油価格の下支え要因に。ユーロ圏(オランダ)のABP、米国のCalPERS、英国のHermesは各国(地域)で最大規模を誇る年金基金であり、これらが2006年に商品市況に投じた運用資金は公表ベースで合計約46億ドル(図表4)に上る(ちなみにNYマーカンタイル原油先物市場の市場規模は2006年12月末時点で約1200億ドル)。


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彼らは直接先物に投資をするというよりは、
ETFやインデックスファンド等の新たな投資商品を介して
商品市場に参入していった。

【参考】コモディティ市場のモニタリング(日銀レビュー:07/10)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev07j10.pdf

年金基金等外部からのコモディティ市場への運用資金の流入については、ETF(ExchangeTraded Funds)やコモディティ・インデックス等の新たなコモディティ投資商品の導入が契機となったとの指摘も多く聞かれる。すなわち、従来コモディティ市場は金融市場に比べ流動性が低いことが投資家参入への障壁となっていたが、2003年以降に相次いだ金・銀などコモディティ投資を証券化したETFの上場や、コモディティ・インデックスをベンチマークとする投資商品の導入が市場の流動性を高め、資金流入の活発化に繋がったとみられている



そして、彼ら有力年金の動きを契機に、
世界中の年金基金が商品を投資対象に組み入れるようになった。
その勢いの凄まじさは、
インデックスファンドの残高急増に表れていた。


【参考】GSCI指数と商品インデックス投資の残高(三貴商事)
http://ameblo.jp/analyst-kimura/entry-10110123943.html

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中でも一番残高の大きい「SP-GSCI指数」
ムルティ属するGSが湾岸戦争の時に開発した指数だった。
この指数は
原油の占めるウェイトが何と「4割以上」もあった。

【参考】S&P GSCI商品指数(ゴールドマンサックス)
http://www2.goldmansachs.com/japan/service/gsci/index.html

S&P GSCI™は常に期近先物に投資します。フォワードの期近物を、毎月5〜9営業日目に、先物の価格の終値を機械的に次の期近物にローリングして算出します。


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だから、
商品の「インデックスファンド」に投資続ける限り、
好むと好まざるとに関わらず、
必ず一定割合を原油に投資することになるのだ。



さらに、ムルティのシナリオに
「年金」資金がこぞって乗っかってきたのはいいものの、
自身の大きさに比べて、
商品相場のパイはあまりにも小さ過ぎた。


【参考】商品市場に年金マネー 欧米勢、インフレ警戒 運用残高800億ドル(野村年金サポート&サービス:06/04/12)
http://blog.n-sas.co.jp/biznews/post_272.html

欧米の年金基金を中心に、国際商品市場への資金流入が加速している。世界景気の拡大と原油など商品価格の上昇でインフレ懸念が台頭し、資産の一部を商品投資へシフトしたため、運用資産残高は過去2年で5倍に膨らみ800億ドル(9兆5千億円)近くに達している。ただ、金融市場に比べ規模の小さい商品市場における年金基金の存在はあまりに大きく、価格形成などこれまで想定していなかった影響も出てきた。(日経金融新聞)


【参考】第47回金融審議会金融分科会第一部会議事録(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai1/gijiroku/20071107.html

次に、9ページ目ですが、これはコモディティ投資を実施しております年金基金等の投資実績をリストアップした表です。これらは公表されているデータだけですが、非公表のものも含めれば、もっと大きな市場になっていると考えられます。有名なところでは、2006年末に米国最大の年金基金でありますCalPERSが商品指数への投資を発表しております。27兆円もある大きな基金ですから、わずか5%をコモディティに向けるだけで、現状の指数運用の全残高の10%に相当する額にもなる。いかに価格に与えるインパクトが大きいかということがご理解頂けると思います。


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しかも、彼らは短期的な相場の変動に左右されず、
長期にステイする可能性の高い資金だ。

【参考】原油価格をどう見るか(日本総研リサーチアイ)
http://www.jri.co.jp/thinktank/research/eye/2007/0206.pdf

こうした長期運用を前提とした資金は、あらかじめ決めた投資配分を基に、相場上昇時にはウエイト調整の売りを出す一方、下落時には買いをコンスタントに入れる傾向がある。加えて、有力年金基金が商品投資へ動き出したことで、他の年金基金も追随し、原油価格をはじめとする商品市場により多くの運用資金が流入する可能性が大きいと言える。



これは「はめ込み先」としてはもって来いの存在だ。


「短期的な投機家」が価格を吊り上げたと世間では言われている。
確かにそういう側面もあったのかもしれない。
しかし、彼らはこの有力な「はめ込み先」の存在があるからこそ、
こぞって参入してきたのではないのか。


これだ。
原油価格高騰の謎は「年金資金」の大乱入にあったのだ。
年金の大乱入がなければ、ここまで原油価格は
長期かつ急激な上昇トレンドを描かなかったはずだ。



だから、こういう議論が出てくるのだ。

【参考】年金基金の商品インデックス・ファンドの買い持ちは投機か―業界で議論激化(ヘッジファンドニュース:08/06/20)
http://www.hf-klug.jp/hfnews/hfinvestor/hfinvestor002289.html

ウォールストリート・ジャーナルは19日付の電子版で、原油や農産物などの商品価格が急騰する中で、年金基金などの機関投資家によるインデックス・ファンドの長期投資(買い持ち)が投機にあたるかどうかという議論が高まっている、と報じている。

折しも、上院の国土安全保障政府問題委員会のジョー・リーバーマン委員長と委員のスーザン・コリンズ議員が18日、商品価格の高騰を抑制するため、機関投資家によるインデックス・ファンド(商品指数連動型ファンド)投資を「過剰な投機」と見なして抑制する法案を記者発表し、投機をめぐる議論が活発化している。



年金が商品投資を縮小しない限り、
そして、商品のインデックスファンドに投資し続ける限り、
原油価格は暴落しない。



ロックフェラーはこの仕組みがわかっていたのではないか。
だからこそ、「石油時代の終わり」を断言することができたのだ。

【参考】「石油時代」の終わりを告げる「大御所」の決意
http://keyboo.at.webry.info/200807/article_2.html


そして、年金の大乱入のきっかけを作ったものこそが、
「ムルティの100ドル予測」に他ならなかった。

またしても「GS」だった。


そこには、何の政治的意図もなかったのでしょうか。


(次回に続く。更新頻度が低くなってしまっており申し訳ありませんm(__)m)
http://keyboo.at.webry.info/200808/article_1.html


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