途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 原油価格高騰の謎を解く【前編】(「Next石油時代」の主導権争いを読む:その3)

<<   作成日時 : 2008/07/11 11:47   >>

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昨今の原油高を追い風に業績絶好調のエクソンモービル。
しかし、「もの言わぬ」大株主であったはずの
創業者・ロックフェラー一族は、
そんなエクソン経営陣に強烈な「ダメ出し」を放った。
この全く予想外の展開は、
早晩、時代の大きな「パラダイムシフト」が訪れることを
彼らが断言したことに他ならなかった。


では、その「パラダイムシフト」とは何なのか。
それは

「早晩『石油時代』が終わり、
代替エネルギー中心の『Next石油時代』が始まる」


ということだ。


しかし、代替エネルギーへの本格的な転換が起こるためには、
開発から、普及して採算ラインに乗るまでの間、
原油価格の高止まりが続く必要がある。


ということは、彼らの放った「ダメ出し」のもう一つの意味は、

「代替エネルギーへの転換が進むまでは
原油価格が暴落することはあり得ない」


ということを断言したことに他ならなかった。


なぜ彼らは
そんなことを断言することができるのでしょうか。


それは、今般の原油価格の上昇が、
過去2回のオイルショックの時と比べて
決定的に違う点があったからなのです。


では、それは一体何だったのでしょうか。
(すいません、今回ちょっと話「くどい」ですm( __ __ )m)


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<『何処の』原油の値段なのか>


今や

「1バレル=○○ドル」

と言われて、「何のこっちゃさっぱり」という
リアクションをする人の方が少なくなったように思います。


それだけ我々が「原油価格」というものに馴染み
かつ敏感になってきたことの表れでもありますが、
この、普段耳にする「1バレル=○○ドル」という数字が
何を意味しているのか、についてまで
考えたことがある方は意外に少ないかもしれません。


そんなこと言ったって、

「そんなの原油の値段に決まってるじゃねえか!!」

という至極もっともなリアクションをされる方が大半でしょう。


たしかにその通りなのですが、
ここではもう少し掘り下げて考えてみたい。
では、どう掘り下げるのか。
それは「『何処の』原油の値段なのか」ということです。


原油はコメとかと同じ「モノ」です。
例えば、同じ「コメ」でも産地のよって品質が異なります。
「タイ米」と「日本米」とでは明らかに品質が違いますよね。
品質が違えば、同じ「コメ」でも値段が変わります。


原油だって同じです。
原油は世界の色んな油田で取れますが、
実はその品質は何処でも同じではありません。
取れる場所によって、原油の品質は違うのです。


品質が違うということは、

同じ「原油」であったとしても、
取れる場所によって
品質に応じて値段が変わってくる


というわけなのです。


では、私たちが普段耳にする
「1バレル=○○ドル」という原油の値段は、
一体「何処の」原油の値段なのでしょうか。


最近本読んでますか?







<生産量極小の原油の値段が世界のベンチマークとなっている>


実は、その「値段」とは

「ウェスト・テキサス・インターミディエイト」
という「米国で取れる」中質原油の「先物」


の値段なのです。
(正確には「期近」の先物の値段)

【参考】NY原油、136ドル台(産経)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/080710/fnc0807100815000-n1.htm

9日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、指標となる米国産標準油種(WTI)8月渡しが前日比0・01ドル高の1バレル=136・05ドルで取引を終えた。


【参考】WTI:ウェスト・テキサス・インターミディエイト(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88

ウェスト・テキサス・インターミディエイト(英語:West Texas Intermediate)、略してWTIは、アメリカ合衆国南部のテキサス州を中心に産出される原油。ウェスト・テキサス・インターメディエイトとも。

〜(中略)〜

ちなみに、日本の主な輸入原油(中東産)はアラブ首長国連邦 ドバイ産の原油(こちらは重質油)価格に左右されるが、このドバイ産原油価格自体もWTI価格に大きく左右される。



何だ??
「原油」の値段というから、
てっきり「中東産」の「現物」の値段かと思ったら
実は何と「米国産」の、しかも「先物」の値段だった。


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その米国産の原油の値段が
世界中の石油の値段に影響を及ぼすということは、
このWTIの「生産量」がさぞかし多いということなのか。

【参考】WTI:ウェスト・テキサス・インターミディエイト(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88

アメリカ国内で産出される原油の6%・世界で産出される原油の1〜2%ほどを占める。硫黄分が少ないため、ガソリンや石油製品の製造に適した軽質油である。



いや、全くそんなことはなかった。


WTIの生産量は
世界の原油のたった「1%」しかない。
仮に米国全体の原油をかき集めても
世界の生産量の10%にも満たないのだ。


【参考】世界の原油の埋蔵量、生産量、可採年数(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/energy/pdfs/b-1.pdf

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よく考えると、これは少し「ヘン」ではないか。


なぜ、米国なんかよりもずっと「生産量」の多い
中東産の原油の値段が、
米国産の原油の値段に左右されてしまうのだろうか。



なぜ、そんな微小な生産量しかない「米国」の、
しかも、その1地域に過ぎないテキサス地方の原油の値段が
世界の原油価格のベンチマークとなっているのでしょうか。


この「カラクリ」を解くカギは一体どこにあるのでしょうか。









<門戸開放の役割を果たした「先物」という「仕組み」>


我々が耳にする「NY原油」なるものの値段は、
「先物」の値段であるということを前章で述べました。


実は、この「原油先物」が上場したのは「1983年」


「1983年」ということは、
2度のオイルショックを経た後に出来たものであり、
逆に言うと、オイルショックの時にはない「仕組み」だった。

【参考】WTI:ウェスト・テキサス・インターミディエイト(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88

WTI先物は、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)においてNYMEX Light Sweet Crudeとして取引が行われている。1983年5月に上場され、現在は同取引所の主要な取引品としての地位を確立している。



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では、「先物取引」とは一体何なのだろうか。

【参考】先物取引(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%88%E7%89%A9%E5%8F%96%E5%BC%95

先物取引(さきものとりひき)とはいわゆるデリバティブ(派生商品)の一つで、価格や数値が変動する各種商品・指数について、未来の売買についてある価格での取引を約定(やくじょう)するものを言う。

〜(中略)〜

なお、実際の先物取引ではほとんどの場合、期限(納会日)までに反対売買をすることで差額を現金決済(差金決済)することが一般的で、実物によって清算されることは稀である(実物で清算する場合、先物の売り手は実物を指定倉庫に用意する必要が、買い手は全価額を用意したうえで引き取る必要がある)



「先物取引」ということは、その仕組み上
満期に絡まない限り、
現物(実物)の受渡をする必要がなくなる。


ということは、満期に絡まない限り、

その売買によって受渡されるものは、
原油という「モノ」を取引していながら、
原油の「実物」ではなく、「カネ」で済む


ということになる。


つまり、「原油」といえども
「先物」になった瞬間に、それは「金融商品」となるのだ。


「金融商品」になるということは、
これまで実物の原油を扱う「実需筋」の人たちだけが
参加していたオイルマーケットへの門戸を、
全ての人に開放することを意味していた。


【参考】実需(¥塾)
http://www.enjyuku.com/d2/si_069.html

商品などを自分で利用する目的で求めること。「実際の需要」の略。住宅でいえば、自分が住むために購入することを意味する。これに対して、賃貸にして収益を得るため、つまり投資目的で購入することを「仮需」という。商品先物取引などでは、投資家に対して、原料を仕入れて加工するメーカーなどを「実需者」と呼ぶ。また、マーケティングでは、供給サイドの生産計画での需要予測に対して、現実の販売実績を実需ということもある。



実は、これこそが

「米国の原油の値段が世界のベンチマークとなっている」

という「カラクリ」を解くカギはとなるのですが、
それは一体どういうことなのでしょうか。








<爆発的に急増した「取引量」が価格決定権を奪った>


原油の「先物市場」が創設されたことによって、
これまで「実需筋」に限定されていた
オイルマーケットへのアクセス権が全人類に開放された。


その結果、実際に
オイルマーケットの参加者層が爆発的に広がったのだ。

【参考】WTI:ウェスト・テキサス・インターミディエイト(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88

NYMEXでのWTIの取引が始まった当初は、専門の投資家による取引が多かったが、一般の個人投資家やヘッジファンドによる取引、インターネットを通した取引の割合が増加してきている。



参加者層が広がって、参加者が増えるということは、
当然「取引量」が増えるということになる。


そして、実際「取引量」は増えた。
「増えた」どころではない。
その増え方は「爆発的」だった。

【参考】WTI:ウェスト・テキサス・インターミディエイト(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88

WTI価格はこの取引価格で決まり、その価格は世界の原油価格の中で最も有力な指標である。実際のWTIの一日あたり産出量は100万バレルに満たないのに対し、WTI先物の一日あたり取引量は100倍の1億バレルを超え、価格の大きな変動(中でも値上がり)は世界経済に直接大きな影響を及ぼす。このように、取引量に比べ産出量はごくわずかのため、実際には、他の原油をWTIと同質となるようにブレンドしたもので受け渡しが行われる。



WTIの「原油先物」は一日に
何と「1億バレル」もの商いがされているのだ。
「1億バレル」と言ったら
世界中の一日の原油生産量をさらに上回る規模だ。



これはとてつもなく巨額だ。
これだけ巨額の商いがされれば、
世界の原油価格のベンチマークとなるのも頷ける。


なぜなら、「モノ」の価格の決定権は、
「取引量」の大きさによって決まるからだ。

(注)
例えば、トヨタ株を100株買う人と100万株買う人では、
100万株の方がマーケットインパクトが大きくなるので、
(価格に与える影響が大きくなるので)
取引量が大きいほど「価格決定権」が強くなることが言えるわけです。



これだ!
「先物」という仕組みによって
「取引量」が爆発的に増えたことが、
生産量が極々わずかしかない米国の原油の値段を、
世界のベンチマークに成し得た所以だったのだ。



つまり、「先物」という「仕組み」が、
巨額の取引を引き寄せることによって、
米国は中東から原油の価格決定権を奪ったのだ。



この仕組みがオイルショック後に出来たというのは
単なる偶然なのだろうか。


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しかし、ここで気になる点があった。


確かに「先物」という仕組みの導入によって、
オイルマーケットへの門戸が万人に開放されたとは言うものの、
門戸を開放しただけで「取引量」が増えると考えるのは
やや短絡的過ぎないだろうか。


確かにそれはその通りだ。
門戸を開放しただけでは、
参加者が増える保証など全くなかった。



事実、1983年にこの仕組みが出来た当初から
いきなり参加者が増えたわけではなかった。
むしろ参加者が爆発的に増えたのは、ここ最近の話だ。

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では、なぜ最近になって
急激に参加者が増え始めたのでしょうか。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200807/article_4.html

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