途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 「Next石油時代」の主導権争いを読む(その1:ジッダ会合を主催した産油国サウジの危機感)

<<   作成日時 : 2008/07/04 12:00   >>

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中国を始めとする新興国の台頭は、
米国の相対的パワーバランスの低下をもたらしていた。
それは、ソ連崩壊以後20年あまりに渡って続いてきた
米国一極集中体制に変化の兆しが出てきたことを意味していた。
「多極化時代」の始まりだ。
多くの人々が時代の移り変わりを感じ始めていた。

【参考】多極化時代のパワーバランスを読む
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_17.html


さらに昨年起こったサブプライム問題。
基幹産業である金融に大打撃を受けた米国は、
はっきりと「衰退」の道を辿り始めたように見えた。


人々のコンセンサスはドルの急落に表れていたし、
米国も覇権を手渡し、1強国の座に甘んじることを
受け入れているかのように見えた。
中国への友好的態度にその姿勢が表れているように思われた。


米国が覇権の座を明け渡し、
本格的な「多極化時代」が訪れたかに思われた。


そして、その新しい時代の主役は
これまでの欧米から中国・ロシアに変わると思われていた。
少なくとも世の中のコンセンサスは、その方向に傾きつつあった。


では、その見方は本当に正しいのでしょうか。



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<産油国サウジアラビアが主催した「ジッダ会合」>


今、世界中の最大の関心事となっていると思われるのが、

「原油価格は一体いつになったら下落に転じるのか」

ということではないでしょうか。

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現状、世界最大のエネルギー源である原油価格の急騰は、
世界中に混乱をもたらし、生活に窮した消費国の人々が
ついに暴動を引き起こす事態にまで発展している。

【参考】原油高、世界が悲鳴 デモ暴徒化・マグロ休漁…(朝日)
http://www.asahi.com/business/update/0607/TKY200806070269.html

「現在の原油価格水準は異常」――。日米中印韓の5カ国は7日、エネルギー相会合の共同声明で危機感をあらわにした。米国産原油の先物相場は1バレル=140ドルに迫る。生活も直撃、世界各国にデモやストライキが広がる。「第3次石油危機」との声も出始めた。


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そんな中、先月22日、
サウジアラビアのジッダで、とある会合を開かれました。


開催都市にちなんで「ジッダ会合」と名づけられたこの会合は、
そんな社会不安が増大する最中に行われた
原油生産国と消費国とが対策を協議する場であった。

【参考】ロイターサミット:産油・消費国協議をサウジで22日開催=OPEC(ロイター:08/06/11)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-32192620080610

石油輸出国機構(OPEC)のバドリ事務局長は10日、産油・石油消費国による原油価格をめぐる協議を22日にサウジアラビアで開催することを明らかにした。



これだけを見ると、この「ジッダ会合」は
価格高騰に苦しむ消費国側から産油国に働きかけて
開かれた会議のように思われた。


しかし、実はそうではなかった。
この会合は消費国ではなく、
産油国のサウジアラビアが主催して行われたものだった。


【参考】「産油・消費国は対話を」 サウジ呼びかけ、不足なら増産も(日経:08/6/10)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080610AT2M1000C10062008.html

サウジアラビア政府は9日、最近の原油価格急騰への対応を話しあう産油国と消費国の会議開催を呼びかける声明を発表した。石油輸出国機構(OPEC)と協力して市場への安定供給を続けると強調。「すべての石油会社と消費国の国民に必要量を供給する」として、供給が不足するような事態になれば即座に増産する用意を表明した。



つまり、
この会合は、消費国が産油国に泣きを入れて
開かれた会合ではなかったのだ。



これは一体どういうことなのでしょうか。


最近本読んでますか?







<「ウハウハ」のはずなのに・・・>


サウジアラビアが「ジッダ会合」開催を呼びかけたのは6月初旬。
それは、一度沈静化しかけた原油価格が、
140ドルに向けて再度加速し始めたタイミングだった。

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原油価格高騰は産油国にとっては喜ばしいはずだった。
特段何の努力をしたわけでもないのに、
たまたま石油を持っているだけでたった数年で
売値が何倍にもなるのだからそりゃ当然だ。


だから、今は産油国にとっては「ウハウハ」の状況だ。
産油国にとっては、
この「ウハウハ」の状況が続くことが望ましい。


しかし、世界で一番原油を持っていて、
今後もこの「ウハウハ」の状況を享受するであろうサウジが、
この原油高を何とかしようとする会合の発起人となった。


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これは一体なぜなのだろうか。


サウジが「ジッダ会合」を主催した表向きの理由は
このように言われている。

【参考】「産油・消費国は対話を」 サウジ呼びかけ、不足なら増産も(日経:08/6/10)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080610AT2M1000C10062008.html

サウジが閣議声明の形で産消対話を呼びかける背景には、産油国に対する消費国の批判が強まる中で、価格の沈静化を狙い消費国との協調姿勢を示す狙いがあるものとみられる。



しかし、本当にそうなのでしょうか。


かつてのオイルショックの時と違って、
今回の原油高は、
産油国が意図的に価格を吊り上げたわけではない。

【参考】オイルショック(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF

1973年10月6日に第四次中東戦争が勃発。これをうけて10月16日に、石油輸出国機構(OPEC)に加盟のペルシア湾岸産油6カ国は、原油公示価格の21%引き上げと、原油生産の削減とイスラエル支援国への禁輸を決定。さらに12月には,翌1974年1月より原油価格を2倍に引き上げると決定した。



そして、価格の高騰をよそに、
現実の世界では需要の伸び以上に
原油の供給が行われている。
だから、産油国が非難される言われは何もないはずだ。


【参考】サウジなど産油国、増産を否定 「原油高の責任ない」 (日経:08/06/09)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080609AT2M0800D09062008.html

世界最大の原油輸出国サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は、「原油価格は市場のファンダメンタルズ(基礎的条件)とは関係なく上昇している」と語り、供給サイドの責任ではないとの見方を改めて強調した。


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それなのに、巨大産油国であるサウジは、
自ら音頭をとってこの会合を急遽開催することを決めた。


そして、十分に供給がなされているはずなのに、
さらに自分たちに責任はないと言っているにも関わらず、
さらなる「増産」という大盤振る舞いをすることによって、
何とかこの原油価格高騰を抑えようという姿勢を見せた。


【参考】サウジ、生産能力1500万バレルに増強も=需要に応じて追加増産−産消国会合(時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200806/2008062300004

原油生産国と消費国の閣僚らが原油高騰問題への対応を協議する会合が22日、サウジアラビアの主催で同国ジッダで開催された。同国のヌアイミ石油鉱物資源相は演説で、同国の生産能力を2009年末までに日量1250万バレルとし、需要に応じてさらに250万バレルを積み増す用意があると表明した。

〜(中略)〜

一方、サウジのアブドラ国王は演説で、原油高で苦しむ貧困国を支援するため、5億ドルの低利融資を提供する方針を明らかにした。



このサウジの意図は、一体どこにあるのでしょうか。








<サウジの危機感>


消費国ではなく、産油国であるサウジ自身が
しかも予定外に急遽この会合を開いたということは、
サウジ自身が何らかの危機感を感じていたことの表れだった。


では、サウジは今の状況の
どこに危機感を感じていたのでしょうか。


それはズバリこれだ。

【参考】玉虫色の合意の終わったジッダ会議(NYTimes)
Agreements Are Elusive at Oil Talks in Saudi Arabia
http://www.nytimes.com/2008/06/23/world/middleeast/23saudi.html?_r=1&oref=slogin

ついほんの2週間前に急遽この会合を主催したサウジアラビアのアブダラ国王にとって、原油輸入国で起こっている価格高騰が、原油大国であるサウジに怒りと苛立ちをもたらしていることを世界に知らしめす機会だった。それは同時に、原油価格高騰が原油消費国により真剣に代替エネルギーへの転換を促すことに対するサウジの懸念も反映されていた。代替エネルギーの利用促進は原油価格に大きな打撃を与えるのだ。

(For King Abdullah of Saudi Arabia, who called for the meeting just two weeks ago, it was an opportunity to show that his oil-rich kingdom was aware of growing anger and frustration caused by surging prices in oil-importing countries. It also reflected some alarm by the Saudis that the price inflation was causing consumer nations to look far more seriously at energy alternatives, which eventually could hurt the price of oil.)



「代替エネルギーへの転換」
サウジの危機感はまさにこれではないのか。



原油価格の高騰は、これまでペイしなかった
省エネ技術の革新や代替エネルギーの開発促進を促す。


かつて経験したオイルショックのときもそうだった。


「狂乱物価」によって世の中は大混乱に陥ったが、
そのショックのおかげで
省エネ技術が飛躍的な進歩を遂げた。


【参考】オイルショック(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF

先進国の経済が中東の石油に極端に依存していることが明白となった。中東以外での新しい油田開発、調査が積極的に行われるようになった。原子力や風力、太陽光など非石油エネルギーの活用の模索、また省エネルギー技術の研究開発への促進の契機ともなった。石油の備蓄体制を強化することも行われた。また、モータリゼーションの進展により自動車の燃料消費が石油消費に高比率を占めていたことから、鉄道をはじめとする公共交通機関を再評価する動きが出た。



では、その技術革新の結果起こったことは何だったのか。


それは「原油離れ」による需要減少と、
それに伴う原油価格の暴落だ。


【参考】石油便覧:石油危機と石油需要の停滞(新日本石油)
http://www.eneos.co.jp/binran/part03/chapter01/section05.html

脱石油の動き

第二次石油危機後の先進国を中心とする消費減退によって、石油の地位は大きく変化した。すなわち、自由世界の一次エネルギー消費量に占める石油の比率は、第一次石油危機の1973年には53.5%であり、第二次石油危機の1979年にもまだ51.9%に達していた。しかし、その後自由世界の一次エネルギー消費量が1979年の石油換算約48億トンから、1986年には同じく約49億トンへと微増したのに対し、石油がそのうちに占める比率は45.0%へと大きく低下した(図 3-1-1)。

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〜(中略)〜

原油価格の暴落(1980年代後半)

1985年7月、サウジアラビアは原油需給のバランスを調整する「スイングプロデューサー」としての役割をこれ以上続けない旨の宣言を行い、10 月からは、「ネットバック価格」による原油販売を開始して増産に転じた。消費地における石油製品販売価格から逆算して原油価格を定めるネットバック方式の採用は、政治的に決定されていた原油価格に市場原理を導入するという画期的な意味をもっていた。また、原油供給過剰下において石油製品市況は低迷していたから、ネットバック価格は必然的にそれまでの公式販売価格を下回った。

サウジアラビアの政策転換は、1986年に入って大きな影響をみせ始め、競争力を回復した同国の原油が市場を拡大するとともに、歯止めを失った原油価格は全面安の状況となった。

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世界はかつて2度のオイルショックを経験した。
しかし、それでも完全な「原油離れ」は起きなかった。
それは今原油暴騰によって、
世界中が大混乱になっていることから明らかだ。


しかし、今回こそは違うかもしれない。
今度こそ「3度目の正直」で
本気で石油から脱却しようとしているのかもしれない。


【参考】原発拡大へ国際協力 サミット首脳宣言原案(共同:08/06/30)
http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008063001000337.html
【参考】非食料バイオ燃料を普及 輸出規制の自粛呼び掛け(共同:08/07/01)
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008070101001117.html
【参考】次世代エネルギー「メタンハイドレート」の研究を加速(Moneyzine:08/06/04)
http://moneyzine.jp/article/detail/63463/


なぜそう考えられるのか。


それは、これまで鳴りを潜めていた大御所が、
長年の沈黙を破って重い口を開いたところに
その本気度が伺えるからだ。



では、その「大御所」とは一体誰なのでしょうか。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200807/article_2.html

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