途転の力学

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS ロシアにとっての「サブプライム問題」の意味(米国との和解を選択したロシアの事情:その2)

<<   作成日時 : 2008/04/29 20:00   >>

トラックバック 0 / コメント 5

画像



自らの包囲網となりかねない米国のMD構想に
強弁に反対していたロシア。
それでも計画を推し進めようとする米国に対して
さらなる敵愾心をあらわにするかと思いきや、
一転米国との和解に踏み切った意外な展開。
それは、ロシアにとって米国よりも脅威となる存在があることを
示すものだった。


では、ロシアにとって米国よりも脅威となる存在とは誰なのか。
それは紛れもなく「中国」である。


そんな馬鹿なと思うかもしれない。
今世紀に入ってからだけの両国関係を見ると、
仲が悪いどころではない。「蜜月」だ。


それはこういうところなどにも随所に現れていた。

【参考】プーチン大統領:東シベリア送油管「中国供給を優先」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=0908&f=business_0908_005.shtml

ロシア政府は2004年12月、シベリアの石油を極東に運ぶ石油パイプラインについて、日本が支持する太平洋ルート案を承認した。これは東シベリアのタイシェトから中国国境に近いスコボロジノを経由し、最終的にナホトカ近郊までパイプを敷設するというもの。しかし、その後、スコボロジノまでの第1段階の建設を先行させ、スコボロジノからは中国向けの「支線」を優先させる案が出てきた。このため、今回のプーチン大統領の発言は、一時優位にあった日本の立場を極めて厳しくするものとなっている。



そして、その「蜜月」関係を象徴するかのように、
両国は長年の懸案であった領土問題を解決してしまったのだ。

【参考】中ロ 国境秘話(北大スラブ研究センター 岩下 明裕氏)
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/populi/edition21/churo.html

2004年10月14日、外交の世界に衝撃が走った。中国とロシアの間の領土紛争の懸案であった2島の帰属が最終決着した、というニュースがもたらされたのである。プーチンと胡錦涛の両首脳は、これを「歴史的快挙、双方の勝利」としてうたいあげ、これを解決困難としてきた諸国は、日本を含めショックを受けた。



これによって、
両国の親密度は切っても切り離せないものであるかと思われた。


しかし、そうはならなかった。
前回見たように、ロシアは「その」中国に対して
徐々に警戒シグナルを発し始めたのだ。

【参考】ロシア、中国車工場認めず・4社が申請(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071010AT2M0901I09102007.html
【参考】兵器の自主開発加速へ 中国、ロシアからの購入減少(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/127389/


では、なぜロシアは蜜月関係から一転、
中国に対して警戒シグナルを発するようになったのでしょうか。


ご訪問頂きありがとうございます。
当ブログは下記ランキングサイトに参加しています。
あなたの清き一票をよろしくお願いします!!

banner_02.gifにほんブログ村 経済ブログへ


【お知らせ】
「ニュースウォッチ」はメルマガに移行させて頂きました。
こちらも是非ご購読よろしくお願いいたします。
よろしければ下のバナーをクリック頂き登録画面にお進み下さい。

画像


★また、当ブログは「解析」ブログであり、
思想信条を世に問う「評論」ブログではありません。
宜しければこちらをご一読頂き、
趣旨をご理解頂いた上でご利用下さいますようお願い致します★


画像
↑過去記事をご覧頂ける方は、こちらをクリックして下さい。

メディアに負けないように知識を身につけましょう。そして自分の頭で考えるようになりましょう。





<『蜜月』に見えた中露関係は「戦略的な」ものだった>


このナゾを解くためには、
次の問いに対する答えを考えれば良いことがわかります。


それは、

「そもそもなぜロシアと中国が『蜜月』関係となったのか」

という問いです。


この問いに対する答えはそんなに難しくないかもしれません。
それは「圧倒的なパワーを持つ米国へ対抗するため」ですね。
そして、そのことは過去記事でも言及してまいりました。

【参考】多極化時代のパワーバランスを読む
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_17.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_18.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_19.html


その試みは徐々に功を奏し、
ついには米国に対抗しうる「非米同盟」としての結集体である
「上海協力機構」を成立させるにまで至った。

【参考】上海協力機構(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E5%8D%94%E5%8A%9B%E6%A9%9F%E6%A7%8B

SCOは中華人民共和国の国境対策の機構から、中華人民共和国・ロシア・インドといったユーラシア大陸の潜在的大国の連合体に発展することになり、アメリカに対抗しうる非米同盟(反米ではないことに注意、また当事者がそう断言しているわけではなく、同盟の強制力はない)として成長することは、アフリカや南アメリカの発展途上国・資源国から歓迎されている。また、印パ両国が加盟することで、中印パ3国間の対立の解消も期待されている。


画像



ここからわかることは何か。


それは、

中露両国は、「米国への対抗軸結成」という
共通目的達成のために接近していた


という事実だ。
それはまさに「戦略的」という言葉に表れている。

【参考】胡錦涛主席とロシア大統領が会談 戦略的協力の一層の強化で合意(中国大使館)
http://www.fmprc.gov.cn/ce/cejp/jpn/xwdt/t202156.htm


では、このことは何を意味するのか。

それは、

もし「共通目的」がない場合の両国の
関係というのは、決して良好ではない


ということを表しているのではないだろうか。

【参考】東シベリア石油開発は「地域主義」の試金石(日本エネルギー経済研究所)
http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/812.pdf

「経済シフト」が喧伝されるロシアと中国の関係も、一皮むけば緊張感が滲み出る。長い国境を接する中国に対し、ロシアは歴史的に警戒心を抱いてきた。近年では極東地域の人口減少が著しく、そこに流れ込む中国人の存在もクローズアップされている。2002年末、国営石油会社スラブネフチの民営化に際して出資を申し入れた中国石油天然ガス総公司(CNPC)は、ロシア議会の猛烈な反対に遭い門前払いを食らった。ロシアにとって対中経済関係は、あくまで「戦略的」に深められるべきものなのだ。



つまり、中露は元々仲が悪いのだ。


しかし、米国との対抗上、
中国とは戦略的に手を結んでおかないといけない。
なので、これまでは目をつぶってやってきただけなのだ。


そして、昨年起こったある出来事が、
その関係に変化をもたらすことになったのです。
それは一体何なのでしょうか。


読書はあなたの人生の可能性を飛躍的に広げてくれます。








<中露両国の関係が変化するための条件>


前章の議論を踏まえると、
中露両国の関係が変化するための条件というのが
見えてきます。


それは、

米国との相対的パワーバランスが拮抗することにより
「米国への対抗」という目的が達成されたとき


です。
そしてそれを示唆するかのような出来事が昨年起こった。


それが

「サブプライム問題による米国金融の崩壊」

なのです。


サブプライム問題が米国に与えたダメージについては
本シリーズのはじめに論じてまいりましたが、
米国の基幹産業である「金融」の崩壊が、
米国に与えたダメージは事のほか大きく、
それは確実に米国の「絶対的」国力を落としてしまった。

【参考】サブプライム問題で明らかになった米国の事情
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_3.html
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_4.html
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_5.html


そして、それが世界のパワーバランスに与える影響も
決して小さくなく、サブプライム問題で道連れになる国はさておき、
少なくともその影響がないと言われているロシアにとっては、
米国の失速は自国の相対的国力向上をもたらすことになる。


【参考】「ロシア経済と米国のサブプライムローン問題」(井本沙織のロシア見聞録)
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/saori.cfm?i=20071116cx000cx&p=1

こうした対策をみれば、中央銀行が「国際金融市場の危機的な状況によって、第3四半期におけるロシア銀行セクターの流動性の低下があった」と認識していたことがうかがい知れる。さらに、金融市場の流動性を維持させるため、一部の準備預金を銀行が活用できるようにした。ロシア中銀の銀行セクター流動性維持対策の結果、市場には1000億ルーブル(約4700億円)の資金が流入するとの見通しである。対策の効き目があったのか、あるいは国際金融市場の落ち着きがロシアにまで及んだのか定かではないが、銀行間市場の金利が10月19日時点では4.35%まで下がった。

ロシア経済に対する米国のサブプライムローン問題の影響は、そこまでと言ってもいい。




このことは、ロシアにとって一体何を意味するのでしょうか。


「知識」を獲得して差をつけますか?それとも回り道しますか?さあ、あなたの可能性を無限に広げる「知」の世界へGO!







<ロシアにとっての「サブプライム問題」の意味>


それは、今般の米国発サブプライム問題が、

「ロシアにとって米国の脅威が減退した」

ことを意味するのではないでしょうか。


ということは、

元来仲の悪い中国と戦略的に結託して
米国と対抗する意義が薄れてきた


ことを意味するのではないか。


そうなると、
これまで見て見ぬふりをしていた
「別の脅威」にどうしても目が行ってしまう。


急速な経済発展を遂げ、さらに膨大な人口を抱え、
しかも軍事的にも膨張している隣国に対して、
ロシアは日ごろから警戒感を抱いている。

【参考】ロシアで中国製自動車がシェアを拡大 昨年は5万台超を販売(日中経済通信)
http://www.newschina.jp/news/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%90%E3%82%A4/45263
【参考】ロシア製主力戦闘機 中国、一貫生産に成功(フジサンケイビジネスアイ)
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200802230004a.nwc
【参考】中露国境で住民同士が衝突、ロシア人4人が負傷(大紀元)
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/07/html/d66852.html

ロシア・ハバロフスクのアムール河沿岸で18日、中国人十数人が当地の住民と衝突し、ロシア人4人が中国人にナイフで刺され、病院に搬送された。ロシア・メディアはこの事件に注目し、極東での中国人脅威論を再度取り上げ、「ロシアは、極東を失いつつある」と緊急報道した。

〜(中略)〜

文章によると、「ロシア極東の状況は、心胆震え上がるものがある。ここ15年で、大量の中国人が流れ込んだからだ。ロシアの極東地方、ハバロフスクやアムール河周辺には、中国人の違法流入が相次ぎ、ここ極東における中国人の勢力は増大するばかりだ」

〜(中略)〜

ロシア政府は、2007年4月1日から、全面的に外国人労働者を取り締まり始めた。これは、大量の中国人露天商に立ち退きを余儀なくさせるもので、中国に帰国を促し、低価格のダンピング電化製品なども販売禁止に追い込むものだ。ロシア領内の中国人が「四害」と称する、ロシア警察、海上税関、マフィア、ネオ・ナチは、中国人たちにとって頭痛の種だ。


しかし、そう簡単に方向転換していいのだろうか。
米国の脅威は本当に薄れたのだろうか。


サブプライム問題で打撃を受けたからといって、
米国はそう簡単に信用できる相手ではない。


「カラー革命」や「NATO東方拡大構想」で
これまで散々自分たちの邪魔をされてきた。


【参考】NATO東方拡大を目論む米国の本音
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_6.html
【参考】色の革命(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2%E3%81%AE%E9%9D%A9%E5%91%BD

色の革命(いろのかくめい、英:Color revolutions)、または花の革命(はなのかくめい、英:Flower revolutions)は2000年ごろから、中・東欧や中央アジアの旧共産圏諸国で起こった一連の政権交代を総体的に指す。

〜(中略)〜

アメリカ政府の関与を示す証拠として、アメリカ合衆国国際開発庁 (USAID) および国際連合開発計画がFreenetの構築を支援していることがあげられており、Freenetは革命に関連する国の最低でも1国以上でインターネットの大部分を構成しており、例えば実際に色の革命が起こったキルギスではアメリカが支援したFreenetが構築されている。



いくら「敵ではない」と公の場で言われたところで、
とてもじゃないけど信用するわけにはいかない。

【参考】「ロシアは敵ではない」米大統領、ミサイル防衛で演説(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/mideast/93541/

ブッシュ米大統領は23日、ワシントンの国防大学で演説し、米国が東欧で建設計画中のミサイル防衛(MD)施設にロシアが強く反対していることに関し、イランの核攻撃を念頭に置いたもので、自国の脅威につながるとのロシアの懸念は当たらないとの考えを強調した。



そうは言っても隣国中国の脅威は日増しに増している。
これも何とかしなければならない。


「脅威の薄れた米国」「脅威を増している中国」
本音であれば中国への対策を講じたい。


しかし、米国と中国の二兎追うこともできない。
米中に結託されてしまうのは最悪のシナリオだからだ。



一体どうしたものか。
そんな悩めるプーチンの背中を押したのは、
何と他ならぬブッシュだったのです。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200805/article_1.html

ご訪問頂きありがとうございます。
当ブログは下記ランキングサイトに参加しています。
あなたの清き一票をよろしくお願いします!!

banner_02.gifにほんブログ村 経済ブログへ


【お知らせ】
「ニュースウォッチ」はメルマガに移行させて頂きました。
こちらも是非ご購読よろしくお願いいたします。
よろしければ下のバナーをクリック頂き登録画面にお進み下さい。

画像




(ご参考)

「世界情勢」をもっと深く知りたい方におすすめの本

地政学―アメリカの世界戦略地図地政学―アメリカの世界戦略地図
奥山 真司

五月書房 2004-10
売り上げランキング : 42522

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

貝と羊の中国人 (新潮新書)貝と羊の中国人 (新潮新書)
加藤 徹

新潮社 2006-06-16
売り上げランキング : 53507

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

最新アメリカの政治地図 (講談社現代新書)最新アメリカの政治地図 (講談社現代新書)
園田 義明

講談社 2004-04-21
売り上げランキング : 35037

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

日本人のための憲法原論日本人のための憲法原論
小室 直樹

集英社インターナショナル 2006-03
売り上げランキング : 4934

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

世界の世界の"タブー"が解る本―原理主義・極右・マフィア・黒幕 (Sapio mook)
大薗 友和

小学館 2002-10
売り上げランキング : 76183

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

プーチンのロシア―21世紀を左右する地政学リスクプーチンのロシア―21世紀を左右する地政学リスク
ロデリック ライン 渡邊 幸治 ストローブ・タルボット

日本経済新聞社 2006-11
売り上げランキング : 200157

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
貴分析内容は妥当であり、今回のentry内容は歓迎事態で日本にとても良い傾向と見ます。米露接近、更に日露接近に繋がるものと考えます。領土問題も50・50で妥結したいものです。即ち2島+アルファ(半永久の棚上げでも良い)。
 九州育ちの北海道在住者。
yamanote-1
2008/04/28 14:41
「話は最後まで聞いてから」ということになるとは思うのですが、いつもながら、なるほど、納得のストーリー展開です。
この調子だと、米露の38度線が、性格を変えて中露国境にシフトしていきそうな気配ですね。米国、日本ともに中露に対し等距離を保ちながら、中露でもめてもらえるのが最も有利ですし。でも、そうなると、先送りを繰り返しつつ、当面はインフレ政策続きそうですね。。年後半から持ち直すって分析は吹っ飛んで、来年以降ってかんじでしょうか。
sight7
2008/04/29 14:47
yamanote-1さん>
コメントありがとうございます。ようやくロシアを日本が「対等に」なれるフェーズが来たような気がします。プーチンの拉致問題に関する発言は、明らかに日本へのラブコールサインですよね。そういう「対等な」立場についたという観点からすると、北方領土問題に関しては、いきなり「50・50」の手を日本側が切る必要はないんじゃないかなあという気がしております。
新快速 播州赤穂行き
2008/05/01 10:56
sight7さん>
コメントありがとうございます。まだ考えがまとまっているわけではありませんが、今の状況は見方によっては日本が米・中・露と等距離外交を展開するチャンスなのかもしれません。中国もロシアも明らかに日本にラブコールを送っている状況は米国を揺さぶるのに使えますし、米国との緊密な関係は逆に中・露を牽制する材料にも使えたりするわけで。米国に関しては私は当初結構楽観的に見ており、バーナンキの行動は非常に迅速で評価できると思うのですが、ご紹介したバーナンキの「時価会計」に疑問を呈した発言から、「こりゃ思った以上にやばいな」というのが実態なんだろうと思います。
新快速 播州赤穂行き
2008/05/01 11:22
(続き)
なのでそれがわかっているからこその(?)大インフレ政策なんだろうと思います。ただ銀行は救済できても実体経済の悪化は続くと思いますので、その悪化分をインフレで時間を稼ぎながら吸収していこうという算段のような気がします(インフレによる実質的借金棒引き)。これは非常に綱渡り的な政策なんだと思いますが、今のところはうまく行っているようです。なのでドル安次第の面はあると思いますが、年後半から持ち直すという見方はまだ捨てなくてもいいのかなという気がしております。
新快速 播州赤穂行き
2008/05/01 11:23

コメントする help

ニックネーム
本 文