途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 米国との和解を選択したロシアの事情(その1:ロシアが発した警告シグナル)

<<   作成日時 : 2008/04/25 07:00   >>

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NATO東方拡大を目論んだブッシュの本音。
それは、未曾有の金融危機を脱却する切り札として、
東欧に「武器」を売るための「顧客開拓」をすることにあった。


今回の金融危機で空いた「穴」は恐ろしくデカい。
ちょっとやそっとでは元に戻らないかもしれない。


なので、リカバリーのためには複合的な対策が必要だ。
まずカネ回りを良くするために大幅利下げを断行した。
イールドカーブを立たせることで
傷ついた銀行の利ざやを改善させる算段だ。


同時にそれが招いたドル安で恩恵を被る民間輸出企業が、
落ち込んだ内需の穴を埋める役割を果たす。
足りない内需を外需で埋める算段だ。
しかし、それもうまくいかない場合はどうするか。


そのリスク対策として放たれた
もう一つの矢が「武器拡販」であり、
その顧客開拓のためのNATO東方拡大だったのだ


【参考】NATO首脳会議、米のミサイル防衛システムを統合方針
http://www.asahi.com/international/update/0404/TKY200804040036.html

ブカレストで開かれている北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は3日、米国がこれまで独自にポーランド、チェコへの配備を計画してきた欧州ミサイル防衛(MD)システムを、NATOの集団的防衛の枠組みと統合させていく方針を決めた。

この日の首脳会議で採択された「ブカレスト宣言」は、弾道ミサイルの脅威が「同盟全体にとって増大しつつある」との認識を示した。その上で、米国主導の欧州MD網がNATOへの貢献にもつながると評価。将来的には、同盟全体を対象としたMD網の一環として位置づける方法を探っていくことで一致した。



しかし、NATOの東方拡大は、
どう贔屓目に見てもロシア包囲網にしか見えないため、
この米国の動きにロシアは猛然と反発し、
米露対立激化に拍車がかかるかのように見えた。

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ところがそうはならなかった。
大方の予想に反して、
急転直下、米露はMDに関して基本合意に至ったのです。

【参考】東欧でのミサイル防衛、米ロが基本合意へ(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080402AT2M0102P01042008.html


なぜロシアは米国との和解を選択したのでしょうか。


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<ロシアは米国のMD構想に本気で反対していた


「MD」にあれだけ反対していたロシアが
米国との和解を選択したことは驚きでした。


ロシアは本当に反対していたんです。
その反対ぶりの程度はこれを見ればわかる。

【参考】東欧ミサイル防衛システムは「軍拡競争招く」、プーチン大統領が批判
http://www.afpbb.com/article/politics/2229161/1623031

オーストリアを公式訪問中のロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は23日、米国が東欧で進めるミサイル防衛(MD)システム配備計画を強く批判した。

〜(中略)〜

同国のハインツ・フィッシャー(Heinz Fischer)大統領と約1時間にわたり会談したプーチン大統領は、会談後の共同記者会見で、MDシステムは「新たな軍拡競争を招く、非生産的で有害な計画」だと警告した。



そして、前回ご紹介しましたが、
挙句の果てには、「攻撃も辞さない」発言まで飛び出した。

【参考】ロシア、米国が推進する東欧MD基地の攻撃を示唆(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/article/20070426000049


ロシアにとって、
この問題はそう簡単に妥協できる話ではなかったはずなのです。
事実、昨年10月の米露交渉は完全に決裂している。

【参考】MD問題で米露決裂(国際情勢評議会)
http://wolf66.blog106.fc2.com/blog-entry-48.html

MD計画では、チェコにレーダー施設、ポーランドに10基の迎撃ミサイル配備を想定している。米国はイランのミサイルなどを念頭にしているが、ロシアは現実的な脅威ではないと主張、自国の近接国での計画推進はロシア対策の色合いもあると反発している。



このように、
和解直前までの米露関係は冷え切っていたのです。


ところが、先月、
急遽、米露「2プラス2」が取り行われることになった。


【参考】米ロ「2プラス2」、17・18日ロシアで開催(日経)
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080313D2M1300I13.html

ペリーノ米大統領報道官は12日の記者会見で、ライス国務長官とゲーツ国防長官が17、18両日にロシアを訪問し、米国による欧州でのミサイル防衛網構築などを外交・国防関係閣僚で話し合う「2プラス2」を開くと発表した。ブッシュ大統領とロシアのプーチン大統領が先週、電話で話し合った際に開催で合意した。

米ロの2プラス2は昨年10月に初会合を開いて以来、2度目。ロシアが反発しているミサイル防衛網問題のほかに、対テロ戦争での協力など2国間の安保課題を協議する。(2008/3/13)



そして、これをきっかけに
米露関係は急速に改善していくことになるのです。


一体、何が起こったのでしょうか。


最近本読んでますか?







<ライスとゲーツを笑顔で迎え入れたプーチン>


「2プラス2」会合のためにクレムリンに向かったライスとゲーツ。
その二人を迎え入れたプーチンの顔は、
いつものような「強持て」ではなかった。
その横顔には薄っすらと笑みすらこぼれていた。

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彼は二人を歓待したのだ。
そして、ブッシュからの親書を見たプーチンの口からは、
実に驚くべき言葉が発せられたのです。

【参考】ライスとゲーツをクレムリンに迎え入れたプーチン(タス通信)
Putin receives Rice, Gates in Kremlin
http://www.itar-tass.com/eng/level2.html?NewsID=12485007

Putin believes that some of the problems in relations between Russia and the United States “have been resolved definitively”.

“We met in this format six months ago, and I think the dialogue was productive,” Putin said.

“Six months have passed, and I think that some problems have been resolved definitively,” he said.

プーチンは米露間のいくつかの問題が「決定的に解決した」と信じている。「我々は6ヶ月前にこの枠組みで会ったが、この対話は生産的なものであると思う」とプーチンは語った。6ヶ月を経ていくつかの問題が決定的に解決したと思う」とプーチンは述べた。



「Some problems have been resolved definitively.」
(いくつかの問題は決定的な解決を見た)


そして、その言葉通り、
ロシアはあんなに反対していた米国のMD構想に対して
いともあっさりと合意してしまったのだ。

【参考】東欧でのミサイル防衛、米ロが基本合意へ(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080402AT2M0102P01042008.html

米国が東欧で計画しているミサイル防衛(MD)施設配備をロシアが容認する方向で両国が最終調整に入った。6日に開く米ロ首脳会談で基本合意を目指す。1 日までに両国外交筋が確認した。MD施設の利用限定などを盛り込んだ米提案をロシア側が原則容認。米ロ対立の象徴とみられていたMD問題を解決することで、両国は関係改善を図りたい考えだ。



この態度の急変ぶりはどういうことなのか。
なぜ、米国とこのタイミングで和解する必要があるのか。


それは、

ロシアにとって、
米国よりも脅威となる存在がある


からではないでしょうか。


そして、その「存在」に対するロシアの警戒心を表すシグナルが
昨年から既に発せられていたのです。


その「シグナル」とは何なのか。
そして、その「存在」とは一体どこの国のことなのでしょうか。


読書はあなたの人生の可能性を飛躍的に広げてくれます。








<ロシアが発した警告シグナル>


以前「パワーバランス」の特集を組んだときは、
「米国」vs「中露」の見事な対立関係が見て取れました。

【参考】多極化時代のパワーバランスを読む
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_17.html

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そして、この「中露」関係は
今後も深化していくものと思われていましたし、
実際「表面上は」そのように見えた。

【参考】中露初の合同軍事演習は「両国友好と協力の象徴」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=0819&f=politics_0819_002.shtml
【参考】中露:政府キャンペーン奏功、経済関係が密接に(中国情報局)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071102-00000002-scn-cn
【参考】胡錦涛主席とロシア大統領が会談 戦略的協力の一層の強化で合意(中国大使館)
http://www.fmprc.gov.cn/ce/cejp/jpn/xwdt/t202156.htm

プーチン大統領は会談の席で次のように表明した。胡錦涛主席のロシア訪問は、今年の両国関係における最も重要な活動である。双方の努力により、歴史的に残されていた全ての問題は解決されており、両国関係を長期的に健全に発展させる基礎は整った。今回の訪問は特別な意味と深遠な影響をもっている。



ところがどっこいしょ。
「ウラ」まで見てみると、そう単純な話ではないようなのです。


では、どう「単純」ではないのか。


もし、中露関係が「蜜月」であるならば、
果たしてこういうことは起こるでしょうか。


【参考】ロシア、中国車工場認めず・4社が申請(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071010AT2M0901I09102007.html

安値でシェアを伸ばす中国車は地元メーカーと競合し、相次ぎ進出認可を得た日米欧メーカーに比べ技術導入のメリットが少ないとの判断が背景。中ロ両国政府間で改めて協議に入ったが、コスト競争力が高い中国車メーカーへの警戒感が世界で広がる可能性もあり、中国車の海外展開に不透明感が出てきた。



そして、両国が本当に信頼しあっている関係であるならば、
こんなことが起こるでしょうか。


【参考】兵器の自主開発加速へ 中国、ロシアからの購入減少(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/127389/

兵器調達は主にロシアからで、戦闘機のほか、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦4隻、キロ級潜水艦12隻を相次ぎ購入するなど、「大まかに言えば9割前後はロシアからの輸入兵器に頼っていた」(研究者)といわれる。

〜(中略)〜

国産兵器開発は、60年代の中ソ対立時代からの思想で、ロシアからの兵器購入は新しい技術を手に入れることが主な目的だった。

ロシアからの兵器購入が減少しているのは、ロシアが最先端の軍事技術を盛り込んだ兵器を売却しないことも一因とされる。戦闘機もインド向けに比べレベルが劣るというのが通説だ。兵器の部品補充などもロシアに頼る現状から脱却する考えもある。

台湾関係筋によると、05年の中露合同軍事演習以降、超音速長距離爆撃機バックファイアーの購入を打診したが、ロシアに拒否されたともいわれる。



米国は「同盟国」である日本に自国製の武器を
どんどん買ってもらっている。


ロシアにとっても軍需産業は大きな輸出産業なので、
どちらかというとロシアだって武器は売りたいはずだ。
しかも、中国という巨大な購買力を持つ先であれば尚更だろう。

【参考】ロシアの武器輸出額、過去最高の70億ドルに(AFP通信)
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2329615/2476410


しかし、ロシアはそれを止めた。
少なくとも最新鋭の武器については中国に売らなくなったのだ。


これは一体どういうことなのでしょうか。



(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_8.html

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ロシアが、EU、NATOに加盟する可能性はあるのでしょうか?
yuan
2008/04/25 17:16
yuanさん>
コメントありがとうございます。さすがに今のところはそれはないんじゃないかなと思っています。「強国」としての存在感復活を企図しているロシアにとって、EUに入るということは、半ばナショナリズムを捨てることになるので、そういう選択をする可能性は低いと思います。今のところは。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/25 21:33
いつも楽しみに拝見させていただいております。
上記分析を見て、漠然と思いついたことなのですが、この1,2週間、世界中が強烈に方向転換しているような気がして。なにか、巨大なインチキが行われているような。。ユーロ高に大きな変化がおきないのが不思議で仕方ありません。意図的に破綻が先送りされているように思えて。すいません、根拠はないですが。。
米露の強調を可能にするには、相互に巨大な利益が生まれないといけないですよね。ロシアにとって最大のメリットは武器よりも、原油価格の高止まりだと思うんです。
一方、米国にとってはバランスシートの強化のためにもアラブから再度資本注入の必要があったりして、内需の下げ止まりを補うためにも急速な輸出産業の強化が必要で、そう考えると、
原油価格の高止まり容認→ドル安の容認→NATOへの武器輸出増大の黙認
なんてストーリーがあったりするんでしょうか?
sight7
2008/04/25 21:57
sight7さん>
コメントありがとうございます。「巨大なインチキ」が行われているかどうかの判断はさておき、破綻を先送りさせているのは間違いないでしょうね、少なくとも米国に関しては。そのための大インフレ政策を取っているんだと思います。おっしゃるようにロシアにとって原油価格の高止まりが最大のメリットであるというのは間違いないと思います。そして、メリットと同時にもう一つの視点としては、サブプライム問題のおかげで米国が思いのほか痛手を被ったことにより、ロシアにとって米国の脅威が弱まった。そうなると、これまで見て見ぬふりをしていた隣の脅威にどうしても目が行ってしまう。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/25 23:16
(続き)
さらにルーブルはドルとユーロの通貨バスケット制なのでドル安の被害も小さいし、その分原油が上がっているから別にいいよねって感じなのかもしれませんし、少なくとも他の新興国に比してロシアがインフレで苦しんでいるという話はまだ聞こえてきませんので、他の国に比べてドル安を容認しやすい事情もあるのだろうと思います。そういう観点からも、おっしゃられるいような「原油価格の高止まり容認→ドル安の容認→NATOへの武器輸出増大の黙認」というストーリーはあり得るんじゃないかなあと思います。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/25 23:16
ご回答及びご解説いただき、ありがとうございました。感激です。

しかし、米国もすごい国ですね。。中ロの対立を露呈させつつ、その両方としっかりズブズブの関係を持つわけですもんね。日本もそんな中で有利に展開する戦略をきっちり立ててもらいたいものです。
中東も騒がしいようですが、今後は中ロ関係に注目してみます。
sight7
2008/04/26 15:20

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