途転の力学

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help リーダーに追加 RSS NATO東方拡大を目論む米国の本音(サブプライム問題で明らかになった米国の事情:その4)

<<   作成日時 : 2008/04/22 23:00   >>

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「金融」と並ぶもうひとつのイノベーションシステムである「軍需」。
それは、「公共事業」として米国景気を下支えする
「ビルト・イン・スタビライザー」の役割を果たすものだった。


その「公共事業的役割」を果たす「軍需」は、
米国景気を下支えするために必要なものだった。


「金融」が崩壊した今、
再度この「公共事業」の出動に期待がかかったが、
もはや米国財政にその余裕は残されていなかった。


ただでさえ「金融」が崩壊して「民需」が落ち込んでいるのに、
頼みの綱の「財政」も期待できないとなると、
米国の「内需」全体が弱含む可能性が高い。
「内需」がダメなら「外需」に頼るしかない。


しかし、先日発表されたGEの決算は
「外需」頼みのシナリオに疑問を投げかけるものだった。
ドル安だけでは不十分だ。
やっぱり売れるものがないといけない。


では、米国が世界の誇る「売り物」とは何か。
米国が世界最高の技術力を誇るものは何か。
それは「武器」だ。
「武器」でなら圧倒的な競争力を持っている。


今世紀最大とも言われる
未曾有の金融危機を脱却する切り札はこれしかなかった。


桜咲く4月、ブッシュが東欧歴訪に旅立ったのは、
米国本土がそんな状況にあるときでした。

【参考】米大統領が東欧歴訪、NATO将来像で欧州との溝埋まるか(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080401-OYT1T00653.htm



果たしてブッシュは一体何をしに行ったのでしょうか。


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<「NATO」とは何なのか>


ブッシュが今回東欧を歴訪した直接の目的は、
ブカレストで開かるNATO首脳会議に出席するため
だったのですが、その前にウクライナを訪問し、
同国のNATO加盟に関して支持表明を行いました。

【参考】ブッシュ米大統領:ウクライナのNATO加盟支持 NATO会議控え、国際協力評価(毎日)
http://mainichi.jp/select/world/news/20080402ddm007030047000c.html

ブッシュ大統領のウクライナ訪問は就任以来初めて。大統領は会見で、イラク戦争やコソボの平和維持部隊に参加したウクライナの姿勢を高く評価。またグルジアのNATO加盟を支持する姿勢も改めて表明した。



これが何を意味するのか。
それを理解するために、ご存知の方も多いかとは思いますが、
まず「NATO」とは何ぞやというところから入りたいと思います。


では、「NATO」とは何かというとこれ。

【参考】北大西洋条約機構(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%A4%A7%E8%A5%BF%E6%B4%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84%E6%A9%9F%E6%A7%8B

アメリカ合衆国を中心としたアメリカ・ヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟。

〜(中略)〜

結成当初は、ソビエト連邦を中心とする共産圏(東側諸国)に対抗するための西側陣営の多国間軍事同盟(集団的安全保障体制)であり、「アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む (Keep the Americans in, the Russians out, and the Germans down) 」という初代事務総長イスメイの言葉が象徴するように、ヨーロッパ諸国を長年にわたって悩ませたドイツ問題に対するひとつの回答でもあった。加盟国は域内いずれかの国が攻撃された場合、共同で応戦・参戦する義務を負っている。


これをご覧いただければ一目瞭然ですが、
「NATO」とは「対ソ連」に対抗するための
米国を中心とした軍事同盟、
即ち「西側諸国」の結集の象徴なのです。



(注)
社会科の時間でやったのを覚えてらっしゃる方もおられるかもしれませんが、
この「NATO」に対抗すべく、「東側」陣営の結集としてソ連を中心に作られたのが、
「ワルシャワ条約機構」でしたよね。

【参考】ワルシャワ条約機構(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AF%E6%9D%A1%E7%B4%84%E6%A9%9F%E6%A7%8B



つまり、NATOとは旧ソ連との「冷戦」における
備えの役割を果たす目的として作られたものなので、
ソ連が崩壊して「冷戦」が終わったら、
この機構もその役目を終えるはずのものだった。



しかし、残念ながらそうはならなかったのです。
では、「冷戦」が終わって「NATO」はどうなったのでしょうか。


最近本読んでますか?








<本来役目を終えたはずの「NATO」の拡大を図る米国>


ソ連との冷戦が終われば、
その役目を終えるはずの「NATO」という軍事同盟ですが、
「冷戦」が終わって、力が縮小するかと思いきや、
逆にその勢力をどんどん東へ拡大させているのです。


画像




ベルリンとソ連崩壊を期に
旧東欧共産圏諸国がNATOの加盟国に加わり、
2004年にはついに旧ソ連の一部であった
バルト3国までもが、
NATOの一員に名を連ねることになった。


結成当初は本当に「西側」の数カ国であった
NATOの最前線が、
もうロシアのすぐ隣に接近するところまで来ていたのだ。



しかし、ブッシュはさらに加盟国を増やすべく、
積極的なトップ外交を展開している。

【参考】一層のNATO加盟期待 米大統領、ザグレブで演説(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/worldnews/135537/

クロアチア訪問中のブッシュ米大統領は5日、ザグレブ中心部の広場で市民数千人を前に演説し、クロアチアとアルバニアの北大西洋条約機構(NATO)加盟承認を歓迎。「NATOはこの地域のすべての国に開かれている」と訴え、バルカン半島の他国の加盟に期待を表明した。



本来役目を終えたはずのNATOを
米国はさらに拡大させようとしているのだ。



この米国の「本音」は一体どこにあるのでしょうか。


それは、「NATO首脳会議」における
ブッシュのこの発言に見て取れたのです。

【参考】欧州への軍事的関与を弱めることを示唆したブッシュ(FT)
Bush signals softening on EU defence
http://www.ft.com/cms/s/96460838-00a4-11dd-a0c5-000077b07658.html

President George W. Bush on Wednesday signalled a softening of long-standing US resistance to stronger European Union defence capabilities, suggesting for the first time this could help rather than weaken Nato.

The signal came in a speech ahead of Wednesday’s Nato summit in Bucharest, in which Mr Bush said European governments should spend more on defence but suggested it did not matter whether it was to support Nato or EU operations.

(ブッシュ大統領は、長い間欧州の防衛力を維持するための米国の関与を弱めることを初めて示唆した。そのシグナルはブカレストでのNATOサミットにおいて発せられた。その中でブッシュは 「欧州各国政府は自国の防衛のためにもっとカネを使うべきだ」と。)



これはなかなか刺激的な発言だ。


ブッシュは自らの音頭を取って
「NATO」に結集させた各国に対して、

● 欧州防衛に対して「軍事的関与」を弱める

● 欧州各国は自国の防衛のためにもっとカネを使うべきだ


と述べ、各国の「自立」を促したのだ。


これは一体どう解釈すればいいのでしょうか。


読書はあなたの人生の可能性を飛躍的に広げてくれます。








<NATO東方拡大を目論むブッシュの本当の「意図」とは>


それは、

「米国は人はもう提供しない。みんな自力で備えなはれ。
その変わりに最新鋭の武器は提供しますから、
うちから買うたらよろしいがな」


ということだ。
これこそが米国の「本音」なのではないでしょうか。


そして、そのことを裏付けるかのような発言が
ブッシュの口から出てきたのです。

【参考】米大統領「イランのICBMに備えよ」 MDの推進訴え(産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080402/amr0804022004018-n1.htm

イランが欧米を射程に入れた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を目指していると強調、欧州でのミサイル防衛(MD)構築が「現実的で急務」と訴え、ロシアにも参加を呼び掛けた。

〜(中略)〜

「米国は北東アジアを守るため、太平洋にMDを展開している。欧州にはこの種の新たな脅威に対抗する手段がない」と述べ、東欧でのMD施設建設計画の意義を強調した。


これだ。
米国は「武器」を売りたいのだ。
だから東欧にNATO加盟を働きかけているのだ。



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自らの陣営に入れば、自分のところの「お得意様」になる。
つまり、「NATO拡大」は
米国にとって武器営業の「顧客拡大」を意味するのだ。



今回のブッシュのNATO拡大を目論んだ東欧歴訪を、
自らのレガシー(遺産)作りのためと評する向きもあるようだが、
どうもそれだけではなさそうだ。


前回も述べましたが、
「防衛産業」は米国の技術力が結集された
圧倒的競争力を持つ米国の「基幹産業」である。


その海外での売り上げが増えれば、
金融緩和によるドル安と相まって、
米国にとっては二度おいしいというわけだ。


【参考】世界の防衛産業、売上高の63%は米国企業(上)
http://www.chosunonline.com/article/20070527000025
【参考】世界の防衛産業、売上高の63%は米国企業(下)
http://www.chosunonline.com/article/20070527000026

また、世界の兵器市場における供給(販売)国が、ごく少数の特定国にしぼられていくといった傾向も、いっそう高まりを見せている。05年の世界全体における兵器販売で、5大供給国(米国、ロシア、フランス、ドイツ、オランダ)が占める割合は実に82%に上っている。

01年から05年までの5年間に行われた兵器輸出では、ロシアが289億8200万ドル(約3兆5068億円)で最も多かったほか、次いで米国(282億3600万ドル=約3兆4165億円)、フランス(85億7300万ドル=約1兆373億円)、ドイツ(56億300万ドル=約6812億円)、英国(39億3300万ドル=約4759億円)の順となった。



つまり、
NATOの東方拡大を目論むブッシュの「本音」は、

未曾有の金融危機を脱却する切り札として、
東欧に「武器」を売るための
「顧客開拓」をすることにあった


と考えられるのです。


そして、このブッシュの目論みは見事に成功したかに見えた。

【参考】NATO、米ミサイル防衛を支持(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080404AT2M0302X03042008.html
【参考】MD交渉で最終合意 米とチェコ、計画に弾み(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/134995/


しかし、そうは問屋が卸さなかった。
この国が米国の動きに猛然と立ちはだかったのだ。

【参考】ブッシュ米大統領:ウクライナのNATO加盟支持 NATO会議控え、国際協力評価(毎日)
http://mainichi.jp/select/world/news/20080402ddm007030047000c.html

ロシアは「わが国との関係に深刻な危機をもたらし、欧州全体の安全保障に悪影響を及ぼす」(カラシン外務次官)と、旧ソ連だった両国のNATO加盟に強く反対している。しかし、ユーシェンコ大統領は会見で「非加盟国(のロシア)に拒否権はない」と強調した。



そりゃそうだ。
絵を見てもらえれば一目瞭然だが、
この動きはどう贔屓目に見ても
「ロシア包囲網」にしか見えない。


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そして、今回のブッシュのウクライナ訪問。
ウクライナも旧ソ連の一員だ。
その国に旧ソ連を仮想敵としていたNATO加盟を推奨している。


そんなことをされてロシアが黙っているはずがない。
そして、その通り米国への対決姿勢を鮮明にした。

【参考】ロシア、米国が推進する東欧MD基地の攻撃を示唆(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/article/20070426000049


では、この米国の動きは、
米露の対立激化に拍車をかけてしまうのか。


しかし、実は事態は思わぬ展開へと進んでいくのです。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_7.html


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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
戦争でも起きなければこの経済危機を解消する程の需要は起きないのでは。CIAでもが戦争を起こす為に暗躍するのでしょうか。
hbar
2008/04/22 07:48
hbarさん>
コメントありがとうございます。必ずしも戦争を起こす必要まではないと思います。MDとかは基本的に「備え」のためのものですので、そういうことが起こるかもしれないという「危機感」を植えつけるところまでで事足りるとも言えるでしょう。もちろん、その「危機感」がコントロール不能になって、本当のドンパチを招いてしまう可能性もゼロとは言い切れませんが、正直イランが欧州に向けてミサイルを発するなんてこともないでしょうし、ましてや今後ロシアが欧州や世界を相手に戦争を起こそうという気もさらさらないと思ってます。北朝鮮の核問題なんかも同じ構図だと見ています。北朝鮮が本当に日本にミサイルを発射する可能性は限りなくゼロに近いと考えています。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/22 08:23
経済も軍事も素人ですが、感想を少しだけ。国防費のGDP比 米国4〜5%でNATO諸国はもっと少ないと思います。さらに国防費には人件費など装備費以外の割合も多いですので、同盟国への武器等の輸出が米国経済に大きな影響を与えないような気がするんですが。どうなんですかね?
いつもはROM
2008/04/22 11:56
いつもはROMさん>
コメントありがとうございます。ご指摘の点は多分どなたかに突っ込まれるだろうな〜と思っておりました(笑)。たしかにおっしゃるように、国防費のGDPに対する割合の小ささ等から、軍需は米国の基幹産業ではないという意見もあります。wikiの解説なんかはどなたがお書きになったのかわかりませんが、やや感傷的な文言でそのことが記載されているようですし、私のストーリーの弱点がそこにある点は否定できません。ただ、「軍需」というものの位置づけに関する私の考えはこれまでのエントリーで書かせて頂いておりますのでここでは割愛しますが、この前の回でグラフを出させて頂いたように、今世紀に入って米国の軍事費とGDPの伸び率とに明らかな正の相関が見られる。ということは、意図してか結果的かはわかりませんが、軍需というものが米国景気を支えるスタビライザーとしての役割を果たしてきたと考えるのではないか(もちろん、他のファクターを考慮していないので、軍需単体でのGDP伸び率に対する寄与度(他のファクターの影響を排除した上での寄与度)は正確にはわからないという弱点は確かにありますが)。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/22 15:29
(続き)
「軍需」は公共投資ですから、その「乗数効果」はそれなりにあるのではないか(「乗数効果」とは経済全体に対する波及効果のことです)。従って「国防費」自体が仮に小さくても、「乗数効果」が大きければ経済全体に与える影響は大きくなるという理屈です(「乗数効果」は正確に調査したわけではありませんが)。そういう推測から描いたストーリーなんですね。従って、ドル安で民間輸出企業が恩恵を受けられない事態が生じた場合のリスクシナリオとして「武器(特にMD)輸出」というのが考えられている可能性があるのではないかと考えたのです。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/22 15:30
(続き)
あと、「軍需」といった場合のおカネの流れを見る際に、どこまでを範疇に入れるかで規模に対する考え方も変わってくるような気もしております(これは正確に調査したわけではなく、あくまで想像ですが、国家が日本の一般会計のように直接支出した場合は「国防費」の範疇に入りますが、例えば日本でいう特殊法人のような機関が間に入っている場合、その支出項目は「国防費」ではなくなったりするとか。そういうカラクリってあるんじゃないのかな〜なんて考えたりもしています。が、この点はあまり突っ込まないで下さい(笑))。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/22 15:30
突っ込むほどの知識はありませんのでご安心を(笑)
最後にもう一点だけ。米シティだけでサブプライム関連の損失累計450億ドルとか。一方、MDの費用はわかりませんが日本向けが5000億円(単年度ではない)との事ですので、単純に1カ国50億ドルと考えて10カ国に売っても売上500億ドル、粗利30%としても何年(数年?)かで150億ドルというざっとした予想もできます。ひとつの企業の損失分も賄えないような気がするんでけど。
いつもはROM
2008/04/22 18:52
いつもはROMさん>
「軍需」といった場合、それはMDだけではなく、例えばイラクへのボーイング機納入等の製品面での広がり、あとNATOだけでなく、イスラエルや最近の朝鮮半島の「作られた」緊張等の顧客面での広がりもありますので、その規模は想定されているものより大きいのではないかと思いますが、ご指摘のように、軍需で今回の金融機関の損失が補えるかというとそれは難しいかもしれませんね。今回金融が空けた「穴」は未曾有の額ですから。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/23 08:53
(続き)
しかし、そこからどうリカバリーしていくのかという対策として、まずドル安政策による輸出企業の収支改善とさらなる利下げによるイールドカーブを立てることによる金融機関の利ざや改善、それに加えての武器拡販という、数ある対策の一環として見る必要があるんだろうと思っています。本文での私のストーリーの書きぶりが、もしかしたら「軍需一本」という誤解を招いてしまった部分もあるかもしれませんが、このようなリカバリー対策の「One of Them」と考えているとご理解頂ければと思います。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/23 08:53

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