途転の力学

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help リーダーに追加 RSS サブプライム問題で明らかになった米国の事情(その1:時価会計の問題点を提起したバーナンキ発言の真意)

<<   作成日時 : 2008/04/13 23:14   >>

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復活ののろしを上げてからしばらくお時間を頂戴しておりましたが、
本日より本格的に新シリーズを開始させて頂きたいと思います。


当たり前ですが、
私が謹慎している間にも世界情勢は目まぐるしく変化しております。


そして、
これまでのパワーバランスに大きな変化を生じさせていると
思われるような、重大なイベントも続々と発生しており、
ただでさえ複雑な世界情勢が更に複雑さを極めて
ワケわからなくなっている方もいらっしゃるかと思います。


パワーバランスの変化については
以前少しばかり考察したことがありますので、
ご興味ある方はご覧になって下さい。
その時は、こんな風に考えておりました。

【参考】多極化時代のパワーバランスを読む
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_17.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_18.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_19.html


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では、あれから状況はどのように変化したのでしょうか。


本日より始めさせて頂く新シリーズでは、
この、直近急激に変化している
世界のパワーバランスの状況を考察してみたいと思います。


やや長めのシリーズになると思いますが、
よろしくお付き合い頂ければと思います。


このシリーズでは色んな国が登場します。
台頭著しい中国・ロシアの話も当然します。
そして、新たな展開を見せつつある欧州やアジア、
またアフリカやアラブ地域にも目を向けていきます。


しかし、その広大な考察の旅の出発点は、
やっぱりこの国から始める必要がありそうです。


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<「サブプライム問題」のもう一つの論点>


昨今は「多極化」や「米国の衰退」というのが、
パワーバランスの変化を読み解く上での一大テーマとなっていますが、
それでも、やはり米国の存在を抜きに世界情勢を語ることはできません。



そして、今の米国を見る上でのキーワードの一つが
例の「サブプライム問題」であるということは、
論を待たないであろうと思われます。


従って、今回の考察の出発点は、
米国に端を発する「サブプライム問題」から始めたいと思います。


当ブログをご覧頂いている方には、
「サブプライム問題」というと「またかよ〜!」って話に
なるかもしれませんが、
今回はこれまでと違った視点からこの問題について考えます。


これまで当ブログで扱ってきた「サブプライム」関連の記事では、

1.サブプライム問題発生の原因

2.その波及メカニズム




3.問題解決のための処方箋(の一部)

について言及してまいりました。

【参考】「サブプライム問題波及メカニズムを探る」シリーズ
(1、2の論点)
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_27.html

【参考】米国はこのまま本当にダメになるのか
(3の論点)
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_6.html
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_7.html


その中で、今般の「サブプライム問題とは

● 「信用の崩壊」の問題であると同時に、

● 金融機関の不良債権問題


であると結論付けました。


そして、その処方箋としては、

@ まず、処理の引き伸ばしを断ち切る  
(借金返済のために借金をする自転車操業をやめる)

A 損失を確定させて最終処理を行う  
(引当を積むのではなく、損切りしてバランスシートから消す)

B その上で、必要あれば公的資金を注入する  
(その銀行の破綻が金融システム全体に影響を及ぼす場合)

ことによって、経済全体にカネが回る仕組みを回復させること
が必要であると考えました。 


たしかにそれはその通りであり、
「問題」自体の論点は一通り押さえられていると思われます。


しかし、「パワーバランス」の観点からは
もう少し違った論点が考えられるのです。


では、今回は「サブプライム問題」から
何を考えようとしているか。


それは、

今般の「サブプライム問題」というものが
「米国に与えた意味」について


です。


そして、その「意味」を掘り下げることによって、
実は、米国という国を動かす「力学」というものが
少しずつ明らかになってきたのです。


では、その「意味」とは一体何なのでしょうか。



最近本読んでますか?







<「時価評価」に懸念を示したバーナンキ発言の意図>


「サブプライム問題」とは
「信用の崩壊」であり、「金融機関の不良債権問題」である
ということは前章で述べましたが、
では、実際どのくらいのダメージを与えたのでしょうか。

【参考】世界の金融危機、さらなる深刻化を金融関係者は懸念(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCBG0754.html

問題がサブプライムローン関連以外にも拡大していることから、金融セクター全体の損失は米国内総生産(GDP)の約7%に相当する1兆ドルを超えるとの見方もある。これは貯蓄貸付組合(S&L)や商業銀行が1986−1995年に出した損失の2倍を超え、日本の銀行が株式・不動産バブルの崩壊で出した損失とほぼ同じ規模。


【参考】銀行に新たな負担も、デフォルト寸前企業の与信枠利用で−モルガンS(Bloomberg)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=arFAB5miLRBg&refer=jp_top_world_news

米銀シティグループや米証券メリルリンチを含む金融機関にとって、企業による与信枠利用は米住宅ローン関連証券の損失で既に傷んだバランスシートのさらなる悪化につながる可能性がある。サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連の評価損や信用損失は2320億ドル(約23兆8000億円)に達しており、金融機関は融資を抑制している。


【参考】銀行を襲う新たな頭痛のタネ:ホームエクイティローンの毀損(WSJ)
Latest Trouble Spot for Banks:Souring Home-Equity Loans
http://online.wsj.com/article/SB120527998662928743.html


これ以外にも金融機関の損失関連の記事は山ほどありますが、
先週のみずほFGの業績下方修正の報にもあるように、
正確な損失額がまだ完全に把握されているわけではありません。


しかし、その事態の深刻さは
この人の、この発言に見事に表れているのです。

【参考】金融商品の時価評価、G7で議題に・FRB議長「市場、不安定に」(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080411NTE2INK0311042008.html

バーナンキ議長は時価会計に関して「投資家に対して金融機関が保有する資産の価値について情報を与える」前向きな面を評価しつつ、流動性が急激に縮小しているような局面では不安定要素になっているとの見方を示した。時価評価については、欧米金融機関のサブプライム関連損失を膨らませる主因とみられており、G7では市場安定の観点から現状が妥当かどうかを議論する。



会計の世界では、「時価評価」への流れが進んでおり、
特に金融商品に関しては、「時価」で評価するのが
もはや当たり前となっております。


しかし、「時価会計」の導入に関しては、
上記バーナンキの発言のような懸念も昔からあったのですが、
そんな懸念はよそに、
欧米主導で「時価評価」のルールが決められた経緯があります。

【参考】読み誤った時価会計の導入時期(経済産業研究所)
http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fujiwara/02.html

証券・金融市場のグローバル化に伴い、各国で異なる会計基準を国際会計基準の下で統一していく方向性は正しい。売買目的の金融商品に時価会計を導入するのも正しい。
しかし、時価会計の導入時期と、売買を目的としていない長期保有の有価証券に対する時価導入には、慎重さが欠如していたようだ。

時価会計主義は、大昔からあったわけではない。80年代前半、英国は高インフレに見舞われ、資産額を物価に合わせて再評価する会計方法「インフレ会計論」を唱える会計学者たちは、英国の会計学会を二分した。当時、英国の大学院でファイナンスを専攻していた筆者にとり、会計学は必修科目の1つであった。時価会計のグローバル化はその後、ユーロ市場の拡大化と、英国のインフレ会計の流れをくむ会計士、学者、かつ会計理論を同じくする英連邦の国々が中心となり広がっていった。



当然、ルールを決める人たちが
自分たちに不利になるルールを決めるはずがなく、
この「時価評価」のルールは欧米金融機関に有利に働いていた。


しかし、そのルールがまずいのではないかと
ルールを作ったはずの「米国」の
しかも「金融政策のトップ」が言い出した。



これは単なる一個人の感想ではない。
そこには何らかの明確なメッセージがあるはずだ。
では、このバーナンキ発言の意味は一体何なのか。


それは、

「これまでのゲームのルールを変えないと
いけないほどにまで、
米国の『金融』は追い込まれてしまっている」


ということではないでしょうか。


そして、
「米国」にとっての「金融」の崩壊とは、
日本にとってのそれと比較すると
ちょっと違う意味合いを持っているのです。


それは一体どういうことなのでしょうか。



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<「金融」の崩壊が米国にもたらす意味とは?>


「金融」が崩壊すると「信用」が崩壊します。
それは「鶏と卵」の話になるかもしれませんが、
いずれにしろ、経済全体にカネが回らなくなって、
景気の悪化をもたらす。


このメカニズムは日本でも米国でも同じです。
では、どの点が違っているのでしょうか。


それは、

「金融」、特に「金融業」というものの「位置づけ」

です。


では、日本における金融業の位置づけとは
どのようなものなのでしょうか。
みなさんは日本の銀行・証券に対して
どのようなイメージを持っておられるでしょうか。


恐らくあんまりいいイメージは持っておられないかと思うんですね。


特に銀行に関して言うならば、
不良債権処理で貸し渋りはするわ、
図体ばかり大きくなっても全然儲からないわ、とか。


そして、日本は「モノづくり」の国と
言われているくらいですから、

そもそも

日本における「金融業」は基幹産業でも何でもない

のです。

だからこそ、今「金融立国」なんて話が出てくるわけですが。

【参考】「金融改革プログラム −金融サービス立国への挑戦−」の公表について(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20041224-6.html


では、一方の米国においてはどうなのか。


実は、既にご存知の方も多いかとは思いますが、

米国における「金融業」とは、
国際競争力を有する世界に誇る「基幹産業」


なのです。

この点が日本の場合と決定的に違うところです。

【参考】米国基礎的経済指標(JETRO)
http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/archive.do?countryname=%CA%C6%B9%F1

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「基幹産業」である「金融」がボロボロになった。
その質的なインパクトたるや日本の比ではない。
日本で言えば、製造業が崩壊に陥るようなものだ。



つまり、今般のサブプライム問題で
基幹産業である「金融」がボロボロになったという事実は、
米国にとてつもないインパクトをもたらしており、
この問題に「国策」として対応せざるを得なくなっている。

【参考】国策に昇華したサブプライム対応(上坂&原田 マーケットの底流を読む)
http://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/investment/depths/in05_report_depths_20071217.html

米国にとって金融業はNASAの国家プロジェクトの如くまさに基幹産業であり、ここが瓦解すると米国経済のレゾンデートルが瓦解し兼ねず、すでに米政府はサブプライム危機対応を国策プロジェクトとして取り組まざるを得なくなっている。



では、「金融」の崩壊が米国にもたらした
インパクトとは、どのようなものだったのでしょうか。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200804/article_4.html

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ぐりぐりももんが
2008/04/14 09:20
多極化とは何をもって言うのか?そんな疑問をTBに込めています。
Shah亜歴
2008/04/14 22:42
ぐりぐりももんがさん>
コメントありがとうございます。当ブログが「値千金」のものになれるかどうかわかりませんが、少しでもみなさまのお役に立てるような記事をかければと思っております。ただ。私は相場の現場にいる人間で、政界や財界との濃い人脈があるわけではなく、記事はすべて公開情報を元に書いておりますので、その点を踏まえてご判断は慎重にお願いできればと思います。これからもよろしくお願い致します。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/15 08:21
Shah亜歴さん>
コメント・TBありがとうございます。おっしゃるように「多極化」の定義を突き詰めると色々議論の余地はあると思いますが、私の中では「多極化」とはパワーバランスの拮抗を考えた際の相対的なものであると考えておりますので、概念的には以下のような感じで捉えております。

http://keyboo.at.webry.info/200708/article_18.html
(国力の絶対水準を数値で表すとし、仮に10年前が 「米国:100、中国:30、ロシア:20」であったのが、10年後の現在、「米国:100、中国:60、ロシア:50」になったとすると、米国の絶対的な国力水準は落ちていないが、相対的な力関係では影響力が落ちているといえる。)

私は特に特定のイデオロギーを有するものではありませんが、米国はそう簡単には転ばない、ましてや「衰退」とか「没落」なんて事態には(仮になって欲しくても)、日本と中国が今の関係である限り、恐らくないんだろうと思っています。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/15 08:21
金融が基幹では再生のしようはありません。最後まで儲け続ける相場師は居ません。やはり付加価値を付けてこそです。
hbar
2008/04/22 07:06
hbarさん>
コメントありがとうございます。私は金融の世界にいるから申し上げるわけではありませんが、金融に付加価値がないという認識は違うのではないかと思います。金融は本来リスクマネーを世の中に供給し、経済のイノベーションを促すという立派な機能を持っており、それこそが「金融」というものの「付加価値」なのです。問題はそういう機能を逸脱して「相場」に走りすぎてしまったことにあります。レバレッジの問題なんかもその範疇に入ると思いますが。カネが十分に回るようになれば米国は再生すると思います。イノベーションの種はやっぱり他の国に比べて持っていると思う。Googleやipodも結局出処は米国でしょう。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/22 08:15
金融のビジネスモデルを新たに構築願います。可能性は大きいのですが、ビジネスと見ていないと感じられます。金融のイノベーションをお願いしたいですね。
hbar
2008/04/22 13:04

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