途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 政府の再配分機能は信頼に足るものなのかA(格差問題はどう考えればいいのか:その5)

<<   作成日時 : 2008/02/14 07:54   >>

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モノやカネの瞬時の移動を可能とする
「グローバル化」された世界においては、
税制による過度の高所得者いじめは、
彼らの離反を招くことによる大幅税収減をもたらし、
それは公共サービスの縮小につながるため、
巡り巡って低所得者層にも大打撃を与える可能性が
あることがわかった。


また、もう一つの政府の再配分機能である
「財政出動による全体のパイを増加させる方法」も、
理論どおりにその効果が表れていないこともわかった。


しかし、
それは「財政出動」そのこと自体が悪いわけではなく、
そのやり方に問題があったことが原因だった。
政府にカネの使い方があまりにも非効率だったのだ。


これは一体どういうことなのでしょうか。



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<財政出動が効かなかった理由>


「財政出動」というと何か特別なものと考えがちですが、
「財政出動」といえども、
それはあくまで「投資」の一種である
ということです。


まず、議論の前提として
この点を認識しておく必要があります。


「投資」であるということはどういうことなのか。
そこには当然「効率」が問題となってくるはずなのです。
何でもいいからカネを突っ込めばいいという
話にはならないということなんですね。



つまり、「カネを突っ込むこと自体」が悪かったわけではなく、
「カネの突っ込み方」が悪かった
即ち、これまでの財政は「投資効率が極めて悪かった」
ということが言えるというわけです。

【参考】財政政策乗数の日米比較(日銀)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/kako/data/iwp03j04.pdf

投資機会のない経済主体から投資機会のある経済主体への富の移転はマクロ的な景気刺激効果をもつことを理論的に証明している。

こうした見方は、近年、我が国で活発に議論されている構造改革の議論と密接に関連している。つまり、財政政策が、衰退産業や規制によって保護されている非効率な産業から、優れた投資機会を持つ産業への富の移転効果を持つものであれば、そのネットの効果は理論的にはプラス(乗数が1を上回る)が期待されるというものである。



しかし、そもそも政府は民間ではできない
儲からないことをやる主体ではないのか。
そういう主体である財政出動を「効率」の観点から
評価することは正しいのか。


この場合の「効率」が悪いとはどういうことなのでしょうか。






<政府の再配分機能は信頼に足るものではなかった>


それは、

「コストに見合う社会的便益を生まない」

ということです。


では、その「社会的便益」とは何なのか。
それは、
「事業の結果による社会構成員にとっての効用の増大」
を指すようです。

【参考】評価手法の分類と特徴(行政評価を考えるver2.0)
http://homepage3.nifty.com/npm/hyouka/0914-4.htm


難しい言葉でわけわからないかもしれませんが、
「その公共事業によって、
その地域に住んでいる人が被ることのできる恩恵」

とでも言えましょうか。


例えば、道路や橋が出来て、
隣まちとの往来が増えることによって
交易が盛んになり地域経済に寄与したとかで、
その地域の住民が広く恩恵を被ったのであれば、
その事業は社会的便益をもたらしたと言えます。


しかし、逆に道路や橋を作っても、
全く利用されず、閑古鳥が鳴くような状況では、
それを作った建設業者への補助金に過ぎず、
そこの住民みんなが恩恵を被れるわけではないので、
社会的便益をもたらしたとは言えないというわけです。


では、日本で過去に行われてきた公共事業は、
本当にコストに見合った社会的便益を生んできたのでしょうか。
本当に必要とされるものに投資されてきたのでしょうか。


道路ができることによって車の往来は増えたでしょうか。
橋がかかることによって交易量は増えたでしょうか。
ハコモノができることによって地域は活性化したでしょうか。


恐らくそうはならなかったものが多かった。

【参考】ケインズ理論の誤謬(深尾光洋の金融経済を読み解く)
http://www.jcer.or.jp/column/fukao/index28.html
(ちなみにネタ元は、いつもお世話になっている
SAKAKIさんのサイトから頂きました。
【参考】ケインズの終焉(湖北庵通信)
http://syoukensyougo.blog69.fc2.com/blog-entry-219.html

現在の国民経済計算の上では、政府による消費や投資はすべてGDPの増加要因として記録させる。極端な話、全く無駄な仕事しかしない役人を雇って給与を支払えば、GDPの支出面で政府消費の増加として記録される。また全く無駄な公共投資を行っても公的資本形成の増加としてGDPを直接押し上げる。

国民経済計算では、政府の消費や投資は、すべてコストに見合う価値の公務サービスの生産や国富の増加があると「仮定」しているからだ。このようなGDP統計の作り方をしているから、1990年代央までは不況が深刻化するたびに補正予算が組まれ、公共投資が追加されてきた。

〜(中略)〜

こう考えると、政府による無駄な消費や支出の増加をGDPの増加要因として国民経済計算の中で直接認識することが間違いであることが理解できるだろう。

〜(中略)〜

具体的にいえば、全く無駄な公共投資の追加には、本来GDPを押し上げる効果はなく、工事で支払われた賃金が消費に回る効果しかない。無駄な公的保養施設や干拓工事の実施などは、それが行われた地方の国富を増加させることはなく、環境の破壊によるマイナスしかない。プラス効果は、建設の時の賃金の増加による消費拡大効果だけである。

〜(中略)〜

コストに見合う社会的便益を生まない公共投資は、本来実施すべきではない。こうした健全な常識を働かせることができない一部のエコノミストが、政府投資拡大の経済効果を過大評価してきたのに対し、一般大衆は目に余る無駄な公共事業を目にして、政府支出に対する拒否反応を示すようになってきた。

〜(中略)〜

景気を刺激するためには、本当に価値のあるサービスや投資を選択して支出しなければならない。それでなければ、単に統計上の見かけのGDPを増加させるだけだ。



つまり、多くの公共投資は、
「一時的な」バラ撒きに過ぎなかったものが多く、
建設業者への補助金的性格が色濃い、
極めて非効率なものだった。



だから実績として効果をもたらさなかったのだ。





<お上を信頼しないのにお上に関与を求めるアンビバレンスな感情>


これまで見てきましたように、
理論的には格差縮小のためには、
政府が財政出動した方がよいと思われる。


しかし、財政政策つまりケインズ経済学が
効果を発揮するためには、
再配分を担う政府が優秀であることが前提である
ということがわかった。



では、日本の政治家・官僚は再配分機能の適切な
担い手としての優秀さを持ち合わせているのかというと、
これまでの実績から明らかなように、
残念ながら、持ち合わせていないと考えた方がよさそうだ。


つまり、「政府」の再配分機能というのは、
残念ながら信頼に足るものではなかったのです。



しかし、もちろん国民も馬鹿ではありません。
「政府」が信頼に足る存在ではないということは
とっくに気づいている。

【参考】政党・政治家を「信頼しない」が82%…世論調査(読売)
http://news.2ch.net/newsplus/kako/1026/10262/1026214766.html
【参考】中央官僚74%が「信頼せず」(読売)
http://news.2ch.net/newsplus/kako/1023/10238/1023876772.html

読売新聞が先月25、26の両日に実施した全国世論調査(面接方式)によると、中央省庁の官僚を「信頼していない」は、「どちらかといえば」を合わせると74%に上り、「信頼している」(「どちらかといえば」を含む)22%を大きく上回った。 官僚からイメージする言葉を挙げてもらったところ、「天下り」が41%で最も多く、次いで「政界・業界との癒着」35%、「無責任」34%など、マイナスイメージが上位を占めた。「無責任」は、94年5月調査と比べると21ポイントも増えた。




結局カネをつぎ込んでも効果がなくて、
無駄な借金が将来に残ってしまうのではないか
というお上に対する根強い不信感がある。

これが決定的な問題なのです。

【参考】 一家の借金2千万(国際派日本人養成講座)
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog129.html

合計すると、平成4年からの5年間に、総額70兆円を超える景気対策が行われたが、日本経済は順調な回復とはならなかった。巨額の税金投入だけでは、せいぜい景気の下支えとなる程度で、本格的な景気回復にはつながらなかった。そのつけとして借金を急速に膨張させるただけであった。



しかし、同時に
ここに問題解決の処方箋のヒントが隠されている
とも言えるわけです。
(処方箋の総括については、後ほどの回で行います)


では、本当にそれだけでしょうか。


ここまで政治家・官僚に対する不信が極まると、
「もうこれ以上無駄な関与をしないでくれ」
という声が大半になるはずですよね。


「政府と市場ではどちらの方が信じられるのか」
という命題が、
「政府と市場ではどちらの方が信じられないのか」
という命題に変わる。


そして、「政府のほうが『より信じられない』」から、
政府が下手に関与して非効率が助長されるくらいなら
市場に任せた方が『マシ』という感覚ですね。


私は実際このように感じておりますし、
多くの国民も、5分の1しか支持されない政治家や
4分の1しか支持されていない官僚よりは、
市場の方が『マシ』だと考えると思っていました。


ところが実際はそうなっていない。
むしろ、より規制を強化し、ばら撒きを求め、
政府の関与を強めることを求めている。



先の参院選の結果が如実のそれを物語っている。
小沢民主党を勝たせた原動力は、
「格差是正」をキーワードにした「ばら撒き型」の公約だ。

【参考】小沢民主党大勝の原因を探る
http://keyboo.at.webry.info/200707/article_22.html
【参考】 (参院選)政権公約比較(自民党・民主党)
http://keyboo.at.webry.info/200707/article_2.html
【参考】「産業突然死」時代の人生論(SAFETY JAPAN)
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/104/index3.html

もともと民主党を支持していたのは、都市型の無党派層である。ところが、先般の選挙で民主党が提案したのは、前述のとおり、子どもがいる家庭へのバラまき、農家へのバラまきである。本来の都市型無党派層とはかけ離れた層に対してバラまきをすると言っただけだ。




お上のことは全く信頼していないのに、
それでもお上に期待してしまっている。



このアンビバレンスな感情は
一体どこから生まれてくるのか。
なぜ人々は、お上を嫌っているにも関わらず、
困ったときには過度に頼ってしまうのか。


「格差問題」の処方箋は、
経済政策だけにあるのでしょうか。


(その9−6に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200802/article_10.html

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
新快速播州赤穂行きさん、こんにちは。
すごい力作ですね!TBありがとうございました。
時間のあるときに改めて熟読させていただきます。
ナルト
2008/02/14 14:00
ナルトさん>
お忙しい中わざわざコメント頂きありがとうございます。人権擁護法案や中国の毒ギョーザ等、色々政治の世界も騒がしくなりつつあるようなので、また切れ味鋭いナルト節が日々炸裂するのを心待ちにしております。
新快速 播州赤穂行き
2008/02/15 09:15
政府の再配分が巧くいっていない最大の理由は官僚組織の硬直化に原因を求め得ます。少々大変な面は否めませんが、思い切ったスクランブルが必要でしょう。公務員だけが分るという構造が歪めています。
hbar
2008/02/17 06:44
政府の再配分が巧くいっていない最大の理由は官僚組織の硬直化に原因を求め得ます。少々大変な面は否めませんが、思い切ったスクランブルが必要でしょう。公務員だけが分るという構造が歪めていると考えます。国会答弁を聞いても全てそこでストップしています。
hbar
2008/02/17 06:45
hbarさん>
コメントありがとうございます。後半の部分(「公務員だけが・・・」)は若干意味が掴みかねたのですが(理解が悪くてすみませんm(__)m)、官僚機構に原因があるというのはおっしゃる通りだと思います。最終回での処方箋もその点に言及させて頂いております(記事は金曜の段階で出来ているのですが、土日はアクセス数が少なくなるので、月曜にアップさせて頂く予定です)。
新快速 播州赤穂行き
2008/02/17 13:40

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