途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 政府の再配分機能は信頼に足るものなのか@(格差問題はどう考えればいいのか:その4)

<<   作成日時 : 2008/02/13 07:54   >>

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「IT革命」と「経済のグローバル化」は、
「純粋な資本主義経済」への流れに拍車をかけた。
しかし、「自由」を獲得する代償として、
政府の関与を排除したため、格差拡大を容認する方向に
働いてしまったのだ。


つまり、いわゆる「市場原理主義」は、
再配分機能を失わせ、富の集中に拍車をかけることになり、
「経済成長=国民全体の満足度」とはならないため、
差をつけられた多数の人の不満を増幅させたのだ。


従って、国民全体の効用を高めるためには、
「市場に任せる部分」と「政府が関与する部分」を
うまいことブレンドしていかなくてはならない。

【参考】世界を読み解く3つのキーワード(その2:経済のグローバル化・フラット化)
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_10.html


市場メカニズムに成果の配分機能をまかせてしまうと、
富の集中を招いてしまうので、国民全体の効用を
上げるという意味では、その再配分機能の一端を
政府が担うべきであるというのが、
総論としての格差是正の処方箋となると考えられるわけです。

【参考】富の再分配(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E3%81%AE%E5%86%8D%E5%88%86%E9%85%8D

富の再分配(とみのさいぶんぱい)または所得再分配(しょとくさいぶんぱい)とは、所得を公平に配分するため、租税制度や社会保障制度、公共事業などを通じて一経済主体から別の経済主体へ所得を移転させることをいう。




しかし、その「政府」の再配分機能というのは、
そんなに信頼に足るものなのでしょうか。



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<2通りの再配分機能>


政府の再配分機能として考えられるは、
上のリンクにあるように「税制」「社会保障制度」「公共事業」等
が上げられると思います。


これらをもう少し概念的にわかりやすく考えると、
政府の再配分機能というのは、

● 全体の所得のパイを増やさないやり方



● 全体の所得のパイを増やすやり方

の2通りがあり、


● 前者は、
  「高所得者から低所得者への所得移転」を
  「税制」によって行うやり方であり、

  (課税の累進性を高める)


● 後者は、
  「高所得者には手を加えず低所得者への所得補助」を
  「財政出動」によって行うやり方

  (公共事業・補助金等)

となります。


では、その結果どのように格差が縮まるのかというと
下の絵のようになるわけです。

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なるほど、どちらも理屈どおりいけば、
格差縮小につながるので、
やっぱり税制を変えるなり、財政出動するなりして、
政府の関与を高めればいいんじゃないか
という気がしますよね。


しかし、これらの再配分のやり方は、
本当に理屈通り機能するのでしょうか。







<「高所得者いじめ」は結局自分たちの首を絞める>


まず、前者の場合を考えてみましょう。
税制によって格差を縮小しようとするのであれば、
高所得者の税率を上げて、
彼らからより多くの税金を取る必要があります。


たしかに、想定どおり
高所得者から高い税金を取れれば、
その分格差縮小に寄与することになりますが、
本当にその通りいくのでしょうか。


答えは残念ながら「否」です。
なぜか、その答えを説くカギは
「経済のグローバル化」にあります。


前回及び過去記事でも述べましたが、
「経済のグローバル化」とは、
モノやカネが瞬時に最適な場所に移ることを意味します。
それを可能にしたのが「IT革命」ですが。


では、そういう移動が自由な世界において、
税率が上げられてしまった高所得者は
どういう行動に出るでしょうか。
あなただったらどうされますか?



多分「税金の安い海外に行く」っていう方
結構いらっしゃるんじゃないですか。

【参考】日本の税金高い ネットでは「海外脱出だ」(JCASTニュース)
http://www.j-cast.com/2006/07/26002279.html

こんな「海外でも日本の税金が取られる」ケースに反発する声は目立つ。ネット上では、日本の税金の高さから「海外に脱出してしまおう」になる。例えば、「我々金持ちは日本を脱出します」というスレッドでは、こんな具合だ。

「香港行ってみい。日本は税金高いから嫌やちゅう日本人仰山いてるがなあ。こいつら香港に住んで、日本に出張して金稼いでる。成田は遠いから嫌やて。地方の空港がお気にいりや。飛行機も空いてる。そこから羽田や。もっと大金持は相続税のないオーストラリアに資産移しとるで。ワシはシンガポールを考えてるや。ホナ、サイナラ」

さらに、あるQ&Aサイトには、「高額所得者や大企業に重税をかけると海外に逃げ出すと言いますが・・・」という質問が寄せられた。これに対しては、こんな回答があった。

「世界には一定の資産を移動すれば、その国の居住を認める国があります。先進国ではカナダやオーストラリアなど。当然、移住する人は高額所得者です。 (略) アメリカもそうなのですが、その国の税収を支えているのは中・高所得者です。意外と低所得者の税負担は少ないのが現実です。金持ちに対する妬みや嫉妬は、なかなか無くならないのが人情なのかもしれませんが、金の卵を産むアヒルを嫉妬で殺すような愚かな考えはそろそろ捨てるべきでしょう

〜(中略)〜

海外生活を送る日本人として有名な大橋巨泉さんも、過去に同様の発言をしている。

日本って嫉妬社会じゃないですか。表面的には資本主義なんだけど、実際は突出した金持ちをつくらない社会主義ですよ。ボクが現役で一番よく働いていた頃、税金で収入の85%を取られていたよ。年間1億円稼いでも、手元に残るのは1,500万円なんだ」(日経ビジネス00年7月10日号)

いまは税率は少々下がったが、巨泉さんのような人は増えている。



つまり、変に高所得者の税率を
これ見よがしに上げてしまうと、
彼らの「海外脱出」を促してしまい、
せっかく税金が増えるどころか、
かえって根こそぎ取りっぱぐれてしまう
という事態が発生する。



そうなると、政府にとってせっかくのカネづるであった
高所得者からの税金がなくなるということは、
当然税収の大幅ダウンということになり、
税収の大幅ダウンは、公共サービスの縮小につながり、
結局回りまわって、低所得者にも多大な「負」の影響を
もたらすことになってしまう。


つまり、感情に任せた「高所得者いじめ」が、
巡り巡って自分たちの首を絞めるという
何とも皮肉な結果をもたらしてしまうわけなのです。


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金利の高いところにカネが向かうのと同様に、
税金の安いところにヒトは向かう。


「グローバル化」は国同士の競争ももたらしている。
日本がいつまでも「住みやすい国」であると
あぐらをかいてしまうのは間違っているということです。

【参考】産業構造審議会基本政策部会(第3回) 議事要旨(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/economic_industrial/committee/summary/eic0000024/index.html


● 財政がどうしてここまで危機的な状況になったかの理由を
  検証し反省するべき。社会保障制度に対して信頼性がなく、
  政府はもっと説明責任を果たすべき。

● 社会保険料の引き上げは、大手企業の海外活動の比重を
  高めるとのデータがあるが、社会保障制度に対しての信頼、
  政府に対しての信頼が現在はまったくない。
  企業だけでなく個人も日本を捨てて海外に移住しようとする者が
  出てきてもおかしくない状況である。
  制度・政府に不信感があることをもっと切実に考えるべきであり、
  破綻する時は急であることを認識しておくべきである。




では、一方の「全体のパイを増やすやり方」は
どうなのでしょうか。








<財政出動は本当に効果があるのか>


財政政策の効果を計る指標として
「乗数」というのがあります。


これは何かというと、
政府がおカネを1単位ばら撒いたら、
GDPはいくら増えるかをあらわしたもので、
「1」を上回ると効果があると判断できるというものです。

(例:政府が1億円財政出動した結果、GDPが2億円増えれば、
   乗数は「2」となり、財政出動の効果があったと言える)


【参考】乗数効果(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%97%E6%95%B0%E5%8A%B9%E6%9E%9C

生産者(企業や政府)が投資を増やす → 国民所得が増加する → 消費が増える → 国民所得が増える → さらに消費が増える → さらに国民所得が増加する → さらに消費が増える → ・・・という経済上の効果を意味する。経済学的な数式分析を行うと、この増加のサイクルは投資の伸びに対して乗数(掛け算)的な伸びとなることから、乗数効果と呼ばれている。



こうした理論的裏づけの元、
不況の時には政府がカネを出して関与することが
「是」であると考えられ、実際にバブル崩壊後の日本でも
巨額の財政が出動されました。

【参考】 一家の借金2千万(国際派日本人養成講座)
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog129.html

平成4年8月 宮澤内閣 10.7兆円
平成5年4月        13.2兆円
平成5年9月 細川内閣  6.2兆円
平成6年2月        15.3兆円
平成6年6月        大型減税
平成7年9月 村山内閣 14.2兆円



では、本当にこの巨額の財政出動は、
「全体のパイを増やす」効果をもたらしたのかというと、
残念ながら、実証研究では
その効果が証明されなかったのです。


【参考】財政政策乗数の日米比較(日銀)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/kako/data/iwp03j04.pdf

本稿の分析によると、日米両国について財政政策乗数は1を下回る可能性が高いとの結果となった(日本の財政政策乗数については、マイナスの可能性も排除できない)。これは標準的なケインズ理論が常に成り立っている訳ではなく、民間主体が財政政策の効果を打ち消す方向に行動する、なんらかの非ケインズ効果が存在している可能性を強く示唆しているものと思われる(p4)。



実証研究でも確かに効果が証明されていないが、
実感としても、財政が効いていないことは
容易に推察できる。


なぜなら、あれだけカネを使っておきながら、
景気は一向に回復せず、
バブルのどん底を見るのは、
実に平成14年(2002年)までかかったからだ。


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理論的には効果があると思われていた財政出動の効果が、
なぜ、現実の世界では効果が出なかったのでしょうか。
そして、政府の財政出動は
否定されるべきものなのでしょうか。


これに関しては色々議論がされておりますが
(リカードの中立命題等)、
最も核心に迫っている理由は恐らくこれだと思います。


結局のところ、財政政策によって、流動性制約家計が消費を増やしたとしても、それがマクロ的な景気刺激につながると考える理屈は存在しない。

財政政策のマクロ的な景気刺激効果を考える上で見落としてはならないのは、財政政策の再配分効果の側面である。例えば、Carlstrom and Fuerst(1998)は、不完全資本市場のもとで、投資機会のない経済主体から投資機会のある経済主体への富の移転はマクロ的な景気刺激効果をもつことを理論的に証明している。

こうした見方は、近年、我が国で活発に議論されている構造改革の議論と密接に関連している。つまり、財政政策が、衰退産業や規制によって保護されている非効率な産業から、優れた投資機会を持つ産業への富の移転効果を持つものであれば、そのネットの効果は理論的にはプラス(乗数が1を上回る)が期待されるというものである。

もっとも、こうした見方は労働市場がスムーズに調整されることを前提としているなど、実証的には議論の余地がある。ただし、従来、産業間の再配分政策効果の観点から財政政策の功罪を論じた分析は、我が国では少なかったため、今後はそうした視点からの分析が求められていると言えよう(p15)。



難しい言葉で書いてありますが、
決定的に重要なポイントは、

「投資機会のない経済主体から投資機会のある
経済主体への富の移転はマクロ的な景気刺激効果を
もつことを理論的に証明している」


という部分であり、ということは、
少なくとも「財政出動そのものが悪いわけではない」
ということが言えるわけです。


そうであれば、実際に効果の出なかった
日本の財政出動は何が間違っていたのかというと、

「財政出動そのものが間違っていたからのではなく、
政府のカネの使い方が間違っていた」


ということになるわけなのです。


では、このことは一体何を意味するのでしょうか。

(その9−5に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200802/article_9.html

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
地方への分権って余計にばら撒きになりそうですけどね・・・。

河川、道路網って県をまたぐ場合もありますから
やりづらいんじゃないですか?

仕組みがわるいんじゃなくて、運用が悪いんだと
思うんですが・・・。

BN
2008/04/25 17:30
BNさん>
コメントありがとうございます。ここで地方分権を論じたつもりはなかったのですが、地方への分権が余計ばら撒きにつながるかどうかについては、もしかしたらおっしゃられるような面もあるかもしれません。ただ、少なくとも権力が霞ヶ関に集中しすぎている今の状況は絶対に良くないと考えております。あと、「仕組みがわるいんじゃなくて、運用が悪いんだと思うんですが・・・。」というのはどの辺を指しておっしゃられているのでしょうか。「財政出動そのものが間違っていたからのではなく、政府のカネの使い方が間違っていた」というところにあるように、私は「運用」の問題と認識していたつもりなのですが。ご意見の趣旨をちょっとつかみかねておりますので、よろしければもう少し詳しく教えて頂ければと思います。
新快速 播州赤穂行き
2008/04/25 21:09

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