途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 格差問題はどう考えればいいのか(その1:格差拡大に対する不快感の弾力性の高さ)

<<   作成日時 : 2008/02/06 11:24   >>

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これからの日本社会を考えていく上において、
「格差」という問題を避けては通れないようです。
(2008年世界情勢を考えるための10の視点:その9です)


この「格差」という言葉が、
最近至る所で目にし、耳にするようになったのは、
わざわざ例を出すまでもなく、みなさんご承知の通りだと思います。

【参考】格差社会(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E7%A4%BE%E4%BC%9A

格差社会(かくさしゃかい)とは、ある基準をもって人間社会の構成員を階層化した際に、階層間格差が大きく、階層間の遷移が不能もしくは困難である(つまり社会的地位の変化が困難、社会移動が少なく閉鎖性が強い)状態が存在する社会であり、社会問題の一つとして考えられている。



そして、この「格差是正」というキーワードが、
小泉改革路線を否定する政治運動をもたらし、
先の参院選で小沢民主党に大勝をもたらした一因と
なったことは記憶に新しいところです。

【参考】小沢民主党大勝の原因を探る
http://keyboo.at.webry.info/200707/article_22.html


確かに、今社会に蔓延している「雰囲気」としては、
「格差」が非常に広がっているように感じられる。

【参考】STOP!THE格差社会(連合)
http://www.jtuc-rengo.or.jp/campaign/index.html


しかし、ここで我々は考えなければならない。
世の中の雰囲気ほど、
実際に「格差」は広がっているのだろうか。
さらに、そうだとすれば何が原因なのだろうか。



今回は、今話題の「格差問題」について
今更感があるかもしれませんが、考えてみたいと思います。


この問題を深く考えていくと、
実は単に「格差」という問題を超えた、
日本が抱えるもっと大きな構造問題が見えてきそうなのです。



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<「水準」で見るか「変化」で見るか>


今回の議論の手始めに、各種データから、
「格差」の実態について見てみたいと思います。

(注)
本来は「格差」の定義から議論を始めなければいけないことは
承知しているのですが、それを始めると長くなってしまうので、
ここでは、いわゆる「格差」=「『所得』格差」として議論を進め
させて頂きます。




データに関しては、以下のサイトを参考にさせて頂きました。
このサイトほんまにすごい!!

【参考】社会実情データ図録(Honkawa Data Tribune)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html


まず、「所得格差」をあらわす指標として
「ジニ係数」というものがありまして、
その数値を国際比較したのが下の絵。

【参考】ジニ係数(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%8B%E4%BF%82%E6%95%B0

係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。ちなみに、0のときには完全な「平等」―つまり皆同じ所得を得ている状態を示す。目安として、一般的には0.2〜0.3(市場経済(自由経済)においては0.3〜0.4。これは市場経済では競争を促すため、格差が生じやすくなる)が通常の値と言われている。なお、0.5を超えると格差が大きく社会の歪みが許容範囲を超えるので、政策などで是正することが必要とされる。



【参考】所得格差の長期推移及び先進国国際比較(社会実情データ図録)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4660.html

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そして、次が国内での格差を見た絵。

【参考】家計調査による所得格差の推移(社会実情データ図録)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4663.html

画像



これらの数値をどう見るか。
たしかに、ジニ係数の水準は年々切り上がっているし、
所得倍率の格差は直近たしかに上昇していることから、
「格差」は拡大基調をたどっているように見える。



しかし一方で、実は必ずしもそうではなさそうだという意見が
専門家の間から出てきているのも確かだ。

【参考】日本の所得格差をどうみるか(JIL労働政策レポート)
http://www.jil.go.jp/institute/rodo/documents/report3.pdf

【国際比較について】

● OECD諸国における日本の所得格差の大きさは、
  80年代、90年代ともにほぼ中位に位置しており、
  国際的にみて不平等だと断定する論拠はない。

  また70年代に、これらの諸国において最も不平等が
  高いと言われた研究成果には留保が必要なため、
  近年になって不平等化したとの結論も妥当しない。


【国内比較について】

● 世帯ベースでみた所得格差は、最近20年間で確かに拡大した
  ようにみえる。しかしそれは、世帯構成の変化や人工の高齢化
  など、政策的に制御が難しいみせかけの要因によって生じている。

  真の所得格差は一定あるいはやや拡大したに過ぎず、
  日本の所得分配がにわかに不平等化したとはいえない。




以上のことからわかることは、
確かに「変化」の点からは
格差は広がっていると言えるし、
一方「水準」の点からは
問題になるほどの格差ではないとも言える。



なので、「水準」の点から見た専門家の判断も、
決して間違っているとはいえないのです。
(政治的にどういうスタンスを取るかは別にして)

【参考】景気は回復基調続く=大田担当相(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK005624920080115


つまり、データからは、
「格差」が「ある」とも「ない」ともどっちとも取れる
「解釈の余地がある」ということなのです。



しかし、一方でご存知のように一般大衆はそうは感じておらず、
格差は拡大していると「実感」している。

【参考】所得・資産の不平等感(社会実情データ図録)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4670.html

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実際に所得格差の水準が高いわけではないのに、
格差を実感している人が増えている。
そして、それが投票行動となって現れている。
これは一体どう解釈すればいいのでしょうか。






<格差拡大に対する不快感の弾力性が高い>


これは過去記事でも若干言及したことがありますが、

「『格差』があるかないかの判断は、
極めて主観的感覚によるものである」


という点からまず出発する必要がありそうです。


どういうことかというと、専門家がいくらデータで
「所得格差があるとはいえない」と主張したとしても、
当の一般大衆が「格差がある」と感じてしまえば、
政治的には「格差があるもの」と判断せざるを得ない
ということなのです。


【参考】国際的な問題が先送りされる可能性
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_5.html


人間というのは、どうやら
「水準」ではなく「変化」に反応する生き物であるようなので、
先に見ましたように、確かに「変化」の傾向としては
「格差」が広がる方向にあるように見えることから、
世間のリアクションもわからないでもない。

【参考】景況感 9カ月連続悪化 見通しも低水準 12月街角調査(フジサンケイビジネスアイ)
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200801120018a.nwc
【参考】STOP!THE格差社会(連合)
http://www.jtuc-rengo.or.jp/campaign/index.html



では、これが米国人でも英国人でも
同じ反応をするかというと
必ずしもそうとも言えないような気がしていて、
彼らからすると、自分たちはもっと格差のある社会で
生きているので、日本の状況なんか大したことないじゃん
と考える人が結構多いような気がする。



こういうのを専門的な言葉で「弾力性」なんて言ったりします。

【参考】弾力性(exBuzzwords)
http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_2244.html

弾力性とは、何かが変動したときにもう一方が変動するその比率のこと。一般に、価格弾力性と所得弾力性があり、それぞれ需要サイドと供給サイドから見ることができる。例えば、需要の価格弾力性とは、ある商品の価格が上昇したときに、需要がどれだけ減少するかを示す。



この観点から考えると日本人は

「『格差』の変化に対する『不快感』の弾力性が極めて高い」

つまり、

「『格差』のわずかな広がりに対する『不快感』の
増加の仕方が他国に比して大きいのではないか」


と考えられるのです。

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では、なぜ日本人の格差に対する不快感の
弾力性は高いと考えられるのでしょうか。






<「嫉妬」が「正義」の仮面を被ってやってきた>


その理由は明らかです。
ズバリ、「そういう状況に慣れていないから」です。


たとえば、相場を張ることに慣れている人は、
自分の持っている株の値段が多少下がっても
驚いたりしないが、株なんてやったことない人からすると、
たった一円下がっただけでも大騒ぎしてしまうのと同じです。


それは、良い悪いの問題ではなくて、
そういう状況に慣れているかどうかの違いであって、
慣れている人ほど、その事象の変化に対する
リアクションは小さくなる。


つまり、日本人は「格差」という現象に慣れていないために、
わずかな「格差」の拡大に大騒ぎしている。
データを客観的に見ると、そういう解釈も成り立つわけです。



「慣れていない」ということは、
それまでは「そうではなかった」ということになりますが、
では、それまではどういう時代だったのかと言うと、これ。

【参考】一億総中流(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%84%84%E7%B7%8F%E4%B8%AD%E6%B5%81

終身雇用に支えられた9割方の国民が、自分を中流階級だと考え、ほんの少し無理をすればマイホーム・自家用車・家庭電化製品などの耐久消費財に手が届くようになった時代である。ソ連のミハイル・ゴルバチョフは当時の日本を「日本は世界で一番成功した社会主義国だ」と評していたように、経済的な自由度は低かったものの、一般国民の生活は豊かで平等だったといえる。



昔はみんなそれなりに
豊かで『平等』な時代だったのだ。

「一億総中流意識」というのがまさにそれを表現している。


この「平等」という感覚は極めて重要で、
「平等」ということは「みな同じ」ということですから、
見方を変えると、それは「違うものを許容しない」感覚
であることを意味する。



だから、自分たちより優れた人が出てくると、
「賞賛」ではなく「嫉妬」が芽生える。

「おまえだけ金持ちになって『せこい』」という感覚。
そして、「金持ち」を「悪」とみなす。


長い間「平等」を享受してきた日本人は、
こうした「負」の感覚が人一倍大きいのではないだろうか。

【参考】"STOP!THE格差社会を合言葉に(連合)
http://www.jtuc-rengo.or.jp/campaign/shuukai/index.html

私たちの労働運動がめざすのは、市場万能主義のもと競争に明け暮れ、格差が拡大・二極化する社会ではありません。私たちがめざす社会は、「ともに生きる社会」「安心で公正な社会」です。



従って、「格差拡大」に対するリアクションが、
諸外国よりも大きくなりやすいという
特徴を持っているのではないだろうか。


だから、その「嫉妬」が「正義」の仮面を持って表れ、
「金持ち」を叩くことを必要以上に是とする空気が
芽生えてくると思われるのです。

巷で大流行の「陰謀論」の類もこれに属すると思われます。

【参考】金融庁の恐怖政治が日本の空洞化を招く懸念
http://keyboo.at.webry.info/200705/article_17.html
【参考】グレーゾーン金利撤廃が中小企業の資金繰りを逆に悪化させた
http://keyboo.at.webry.info/200706/article_23.html

このところの金融庁の暴走ぶりを見ていると、
明らかにその規制の強化は「経済合理性を無視」しています。
そして、その姿勢は実体経済に確実に悪影響を与えています。

【参考】金融庁の恐怖政治が日本の空洞化を招く懸念(過去記事)
http://keyboo.at.webry.info/200705/article_17.html


そして、その規制の根拠はお得意の小難しいロジックを用いて
色々述べているかもしれませんが、根底にあるのは
「ロジック」ではなく「妬みという感情」ではないかと
最近思うようになってきました。


この「妬み」とは「結果の平等」に長年慣れ親しんできた
日本人の多くが持っている悪しき性癖だと思います。
「出る杭は打ってしまえ」ってやつですね。


その「妬み」を利用して「裁量行政」を復活させ、
「経済合理性を無視した規制」を強化させる。
これを「恐怖政治」と呼ばずして何と言うであろうか。


そして、世論もマスコミも外国人や出過ぎる人(exホリエモン)は
鼻持ちならないから皆で叩くし、お上の「経済合理性を無視した規制」も
その影響を考えずに支持してしまう。
そういうムードが出来てしまう。
この日本の民度の低さも戦前の大政翼賛と変わらないと思う。



しかし、本当にそう結論付けていいのでしょうか。


もし、そうであるならば、
なぜ今よりも「格差」が大きかった60年代に
「格差」が社会問題とならなかったのでしょうか。

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また、現在の格差水準は、
80年代、90年代に比べれば小さいはずなのに、
なぜ「今になって」格差問題が
クローズアップされてきたのでしょうか。


(長くなりそうなので、次回に続きます)
http://keyboo.at.webry.info/200802/article_6.html

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