途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 外資排斥論は本当に正しいのか(その1:「国益を守る」とはどういうことなのか)

<<   作成日時 : 2008/02/21 08:22   >>

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我々日本人が「外資」に対するアレルギーを
強く持っているということは、例を挙げるまでもなく
多くの方が実感されていることかと思います。
(2008年世界情勢を考えるための12の視点:その10です)

【参考】“外資アレルギー”克服カギ…対日投資有識者会議が初会合(フジサンケイビジネスアイ)
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200801310026a.nwc
【参考】空港外資規制は必要? 不必要?(YAHOO意識調査)
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizresults.php?poll_id=1803&wv=1&typeFlag=1





しかし、ここに来て国内の「格差」をもたらした要因を
「グローバル化」の進展に求める論が台頭する中で、
そのアレルギー現象がまた盛り上がってきているように感じます。

【参考】「M&Aを止めろ!」キャンペーン(トラックバックピープル)
http://tbp.jp/tbp_9217.html

貧困問題の原因は、グローバリゼーションです。このグローバリゼーションの急先鋒として機能している手段(仕組み)はM&Aであり、今回「M&Aを止めろ!」キャンペーンを展開することで、貧困問題解決を訴えていきます。




「外資規制」を擁護する論の根拠としては、

「外資による支配は『国益』に反する」

ということがよく引き合いに出されます。

【参考】「福田無策不況」が広がる(AERA)
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20080218-01-0101.html

自民党の国交部会では若手が「国益を守るには後出しジャンケンでもいいじゃないか」と規制強化を公然とぶち上げる



そして、
その流れに乗っかったのかどうかはわかりませんが、
「国益を守る」という名のもとに、
実際に外資を排除する動きが出始めており、
一見その動きはもっともらしいように見える。

【参考】サッポロ特別委「スティール提案、株主利益害するおそれ大きい」(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080204AT3L0403N04022008.html
【参考】空港会社への外資規制は必要=冬柴国交相(時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200802/2008020100376

冬柴鉄三国土交通相は1日の閣議後会見で、国交省が今国会提出を目指す空港整備法改正案に盛り込む予定の空港会社などへの外資規制に批判があることに対し、「空港や空港ビルは代替のきかない重要な施設。一部特定の外資に支配されることは国益に反する」と必要性を強調した。



しかし、ここで私たちは考えなければならない。


そもそも「国益」とは何なのか。
外資は「国益」に対してどういうデメリットをもたらすのか。
そして、外資を排除することは、
「国益」を守るのに本当に適うことなのでしょうか。


今回は、日本に根強い「外資排斥論(規制論)」ついて
考察をしてみたいと思います。


実は、この議論を突き詰めていくと、
「外資」に向けたはずの刀の矛先が、
気がついたら思わぬ方向に向いていたという
予想できなかった(?)「オチ」が待っているのです。



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<そもそも「国益」とは何なのか>


では、まずこの命題からいきましょう。
「国益」とは一体何なのか。


ググってみると、こんな感じ。

【参考】国益
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%F1%B1%D7
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%9B%8A

(はてな)
国家や、その国全ての国民の利益。主に対外的な政策において用いられる概念。「国益を保護するため」の外交、軍事活動である。


(wiki)
国家が独立を伴って存続する上で必要な物理的・社会的・政治的な要素を国家価値という。しかし国家価値だけでは抽象的すぎて概念的にも不便であるため、より具体的な目標として設定されるのが国益である。何を国益と定義するのかという部分については曖昧な部分も多い。ただし、国益とは本来的に政府の利益であり、個人、特定団体の利益ではない。



この2つの解説からわかるポイントは、

● 「国益」とは当然「国家」の概念であるということ
  (本来的に政府の利益である)

● そして、「国益」とはその「国家」という概念に
  基づいた「国民全体の利益」のことを指す


ということです。


私の表現が稚拙なので、
何が言いたいのかさっぱりわからないかもしれませんが、
要は何が言いたいのかというと、

「国益」とは「政府が国民に果たすべき最低限の役割」
という観点から解釈することができるのではないか


ということなのです。


では、
政府が国民に果たすべき最低限の役割とは何なのか。


それは、
「国民の生命と財産を守ること」
これしかありません。


もちろん、そのために政府がどのくらい関与するのか
については、色々議論があるところではありでしょうが、
概念としてはこれに尽きると言っていいと思います。

【参考】夜警国家(現代政治用語辞典)
http://pol.cside4.jp/theory/14.html

国家の任務が防衛や治安維持など最小限の役割に限定された国家。



というわけで、
幾分回りくどくなってしまいましたが、
以後の議論展開においては、

「国益を守ること」=「国民の生命と財産を守ること」

と定義して議論を進めたいと思います。


では、外資の進出は、
「国民の生命と財産を守る」という意味での
「国益」にどういうデメリットをもたらすと
考えられているのでしょうか。





<「外資」のあり方を考えるために必要な2つの視点>


いわゆる「外資規制論」が容認される背景は実にわかりやすい。


つまり、外資は当然「外国」の資本なので、
「自国民」の生命と財産を守るという意味での
「国益」に反する行動を取る可能性が
あるのではないかという考えです。



たしかにこれはわかりやすいし、
一見納得も出来る論拠であるし、
実際に「外資規制論」はこれを根拠に論を展開されている。

【参考】空港外資規制 安全保障上の歯止めが必要だ(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080208-OYT1T00965.htm

空港は日本の交通、物流の拠点であるだけでなく、検疫や出入国の管理など、公益性の高い業務を担っている。その空港が外資に支配されれば、国の安全が脅かされる恐れがある。株式を上場する以上、歯止めは必要だろう。



【参考】小泉首相は実はアメリカの手先ではないか…(るいネット)
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=96710

郵政民営化法案では350兆円の国民の貯金資産の運用を新たに作る民営化会社の元、既存の民間企業に任せる形になっています。これは、既に様々な人が懸念している通り、350兆円もの郵貯・簡保資金が外資の自由にされてしまう



【参考】郵政民営化法案廃案に失望した米国ウォール街だが、再挑戦の構え。日本のマスコミを裏から動かそうとしている(森田実の時代を斬る)
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C02057.HTML

ウォール街は世界の経済の支配者である。ウォール街は世界中の富を独占するために、各国の経済を支配しようとしている。そのための基本戦略が「グローバリズム」と「民営化」だ。日本はこのウォール街に踊らされている。日本国民の共有財産である350兆円が米国へ移転するのを阻止するためには、小泉政権を打倒する以外に道はないのである。



う〜ん、確かにこれらの記事を拝見すると、
外資を排斥しさえすれば、
「国益」は守られるような気がしないでもない。


しかし、本当にそうなのか。
「外資」を排斥することは「国益を守る」ための
必要十分条件となるのでしょうか。


私たちが「国益を守る」という観点で
「外資」のあり方を判断するにあたっては、
以下の2つのことを考えなければならない。


それは、

● 外資であれば、
  「国益」が守られない可能性があるのか


ということだけでなく

● では外資を排除すれば、
  「国益」が守られるということが
  本当に保証されるのか


ということも合わせて考えなければならない。


しかし、巷であふれている「外資規制論」には、
この後者の視点が決定的に欠けていると思われる。
これでは、正しい判断はできないのではないでしょうか。





<焦点を当てるべきは「外資」だけではない>


外資の進出が「国益を守る」上でおいて、
どのようなデメリットをもたらす可能性があるかについては、
前章でご紹介しましたし、わざわざ例を挙げなくても
恐らく容易に想像がつくことでしょう。


個々の案件(とくに郵政民営化の件)については、
反論の余地が十分にあるものもありますが、
「可能性」という点では、
外資の危険性を完全に否定することは
確かにできないと思われます。



(注) 
郵政民営化に関する根強い「米国陰謀論」については、
過去に反証を試みたことがありますので
ご興味ある方は、ご参照ください。

【参考】米国陰謀論は本当なのか(郵政民営化の本質を探る:番外編)
http://keyboo.at.webry.info/200710/article_10.html
http://keyboo.at.webry.info/200710/article_11.html
http://keyboo.at.webry.info/200710/article_12.html


しかしながら、では外資を排除すれば、
本当に「国民の生命と財産」は守られるのでしょうか。


それは間違いなく「否」ですね。


なぜか。
それは、日本の行政の不手際や規制によって、
私たち国民の生命や財産が奪われた経験を
数多く持っているはずだからです。


【参考】政府の再配分機能は信頼に足るものなのか
http://keyboo.at.webry.info/200802/article_8.html
http://keyboo.at.webry.info/200802/article_9.html


【参考】阪神・淡路大震災(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%AA%E7%A5%9E%E3%83%BB%E6%B7%A1%E8%B7%AF%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD#.E5.86.85.E9.96.A3.E3.83.BB.E5.9B.BD.E6.94.BF.E3.81.AE.E5.AF.BE.E5.87.A6.E9.81.85.E3.82.8C

官邸をはじめとする政府、国の機関も被害地域の惨状を把握するのにテレビ・ラジオが最大の情報源であったため、村山富市内閣総理大臣(日本社会党)の大規模派遣がなかなか指示されなかった事から対応が後手に回った。

〜(中略)〜

最も早く救援体制を敷いた米海軍第7艦隊(横須賀)が、「艦艇を神戸港に入港させてのヘリコプターによる負傷者の救援」を政府に申し入れたところ、神戸市の受け入れ体制の未整備、政治的理由、接岸施設の被災による危険性などの要因により、拒否する事態を発生することとなった。



【参考】総量規制(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8F%E9%87%8F%E8%A6%8F%E5%88%B6

1990年3月に当時の大蔵省から金融機関に対して行われた行政指導。大蔵省銀行局長通達「土地関連融資の抑制について」のうちの不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑えることをいう。行き過ぎた不動産価格の高騰を沈静化させることを目的とする政策であったが、想定以上の急激な景気後退(いわゆるバブル崩壊)の引き金となってしまった。



【参考】家が建たない 「国交省が引き起こした官製不況だ」(産経)
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/071224/sty0712241744005-n1.htm

耐震強度偽装事件を受け、国土交通省は「構造計算などで偽装はありえない」とする“性善説”から“性悪説”へシフトし、さまざまな再発防止策を打ち出した。建築確認の厳格化を盛り込んだ基準法改正は、その柱。本来なら消費者を守るための施策だが、皮肉にも景気に暗い影を落とす結果を招いている。



【参考】投信の売れ行きに急ブレーキ サブプライムに加え、金商法が影響(JCAST)
http://www.j-cast.com/2007/11/11013132.html

野村アセットは「ここ1、2年の動向をみても、株式相場が悪いときに連られて売れ行きが鈍ることはありましたが、50%も減ったことは記憶にありません」と話す。つまり、売れ行きが落ちたのは、株式市場の低迷だけが理由ではないというのだ。投信会社が口を揃えて指摘するのは「金融商品取引法」の施行の影響だ。




他にも色々ありますが、
こういう例を思い起こしてみると、
「外資の排除」=「国益を守る」という
単純な図式には首を傾げざるを得なくなる。



特に、阪神大震災の際に、
最も早く救援体制を敷いていたのは
何と「米軍」だというから驚きだ。
むしろ、お上の後手後手の対応は、
神戸の人の生命と財産を奪ったではないか。


そう考えると、
実はこの「外資規制」の問題というのは、
「外資」に焦点を当てるべき問題というよりは、
むしろ「規制のあり方」そのものに
焦点を当てるべき問題ではないか。


画像




つまり、
まず

「何のために規制を敷くのか」

そして

「どういう場合に規制が容認されるのか」

という議論がまずあった上で、

「では『誰に』『どのような』規制をかけるのか」

という段階に進む。


こうした枠組みの中で、
「外資規制」についても考える必要があるのでは
ないでしょうか。


(その2に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200802/article_13.html



(ご参考)

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