途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 米国は本当にこのままダメになるのか【後編】(2008年世界情勢を考えるための10の視点:その4-2)

<<   作成日時 : 2008/01/18 12:29   >>

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<ドルが崩壊して困るのは米国だけではない>


これまで見てきたように、世界のパワーバランスが
「米国一極集中」から「多極化」に移行するに従って、
「基軸通貨」も「ドル一極集中」から、「多通貨分散型」に
移行していくと思われる。

【参考】世界の外貨準備に占める米ドルの割合(エコノミスト)

画像



そして、その流れは起こり始めているが、
では、一気にドル離れが加速するのかというと
そういうことにはならないと思われる。


【参考】各国の外貨準備でドル離れ進む、代わってユーロが台頭(AFPBB)
http://www.afpbb.com/article/economy/2330674/2482573


なぜか。
それはまさにドルが
現在「基軸通貨」の地位にあるからです。



ドルが「基軸通貨」の地位にあるということは、
米国民だけでなく、世界中の多くの人(機関)が
ドルを使い、それを保有していることになる。


特に昨今は新興市場を中心に外貨準備の積み上がりが激しいが、
そのつみあがった外貨準備の大半は「ドル」だ。

【参考】「サブプライム問題」波及メカニズムを探る(その8:カネ余りの正体【余剰資金増加の観点】)
http://keyboo.at.webry.info/200709/article_2.html


ただでさえドルが安くなっているのに、
ドル離れを加速させるような行動を取ったら何が起こるか。
当然さらなるドル安に拍車をかけることになる。
そうなると、
今現在大量に持っている自分のドル資産が傷ついてしまう。



当然「一抜け」出来ればしめたものだが、
みんな同じようなことを考えているので、
一人がやってしまえば、みんな雪崩のように打って出てくる。
それは、自分で自分の首を絞めてしまう自殺行為だ。


つまり、ドルが崩壊して困るのは米国だけではない。
世界中でドルを持っている多くの人が困るのだ。
中国だって日本だって、持っている米ドルの量はハンパじゃない。

【参考】世界の外貨準備・経常収支・米国債保有の状況(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/economicNews/idJPnTK002336920071001

米債保有の世界トップ10カ国・地域(公共・民間、単位:10億)
(単位:10億)
1. 日本 $611
2. 中国本土 $408
3. 英国 $210
4. 石油輸出国 $124
5. ブラジル $105
6. ルクセンブルク $ 64
7. 香港 $ 59
8. 台湾 $ 58
9. 韓国 $ 51
10.ドイツ $ 44


ドルの崩壊は、米国だけでなく、
それを大量の保有している各国の国益を損なう。



なので、感情的な問題は別にして
現時点でドルを崩壊させるわけにはいかないし、
そうならないように各国が協調して対処する姿勢が
とられるのではないかと私は思うのです。





<資本注入に応じた意図は何なのか>


以上の話から、サブプライム問題で巨額損失を出した
米国金融機関に対して、政府系ファンドを中心に
諸外国が資本注入に応じている理由の一端が
垣間見えるような気がするのです。

【参考】米金融、外資頼み 中国・中東…政府系ファンド続々出資、サブプライム支援(フジサンケイビジネスアイ)
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200712210030a.nwc

低所得者向けサブプライム(高金利型)住宅ローンの焦げ付き急増を震源にした信用不安が渦巻く中、巨額損失を抱える米大手金融機関が相次いで海外の政府系投資ファンド(SWF)の支援を仰いでいる。「米国金融の根幹を他国に牛耳られる」(金融筋)との懸念はあるが、リスク投資が手控えられる中、経営と金融システムの危機回避には、出資者を選別している余裕はなさそうだ。

米石油会社、ユノカルの買収に乗り出した中国海洋石油(CNOOC)が、米議会などから「安全保障上問題がある」との猛反発を受けて撤退したのはわずか2年前。しかし、世界に名だたる金融機関が中東や新興市場国の資本にすがる緊急事態に、そうした批判はほぼ皆無だ。



これは、かつて日本が不良債権処理の際に行った
「公的資金注入」の民間版だといえますが、
では、彼らはなぜ資本注入に応じたのでしょうか。


今回の出資元は「民間」とは言いながら、大抵は政府系ファンド。
となれば、それは「純投資的」意味合いだけでなく、
「国家としての意図」もあるのではないかと考えられる。


では、その「国家としての意図」とは何なのでしょうか。





<「ドル崩壊」を国際協調で阻止する意図が示された?>


米国経済が回復するには、
当然サブプライム問題の解決が必要でしょう。


過去記事でもお伝えしましたように、
「サブプライム問題」とは「信用の崩壊」の問題であり、
金融機関の不良債権問題であります。


【参考】 「サブプライム問題」波及メカニズムを探る
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_27.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_28.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_29.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_30.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_31.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_32.html
http://keyboo.at.webry.info/200709/article_1.html
http://keyboo.at.webry.info/200709/article_2.html
http://keyboo.at.webry.info/200709/article_3.html


従って、この問題を解決するためには、
日本の不良債権処理の時と同じく、

@ まず、処理の引き伸ばしを断ち切る  
(借金返済のために借金をする自転車操業をやめる)

A 損失を確定させて最終処理を行う  
(引当を積むのではなく、損切りしてバランスシートから消す)

B その上で、必要あれば公的資金を注入する  
(その銀行の破綻が金融システム全体に影響を及ぼす場合)

ことによって、経済全体にカネが回る仕組みを回復させること
が必要なのです。経済はカネが回ってなんぼですから。
その機能が今の米国では不全に陥りかけている。

【参考】56%が融資基準を厳格化 サブプライムでFRB調査(IZA)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/worldecon/76446/

米連邦準備制度理事会(FRB)が13日に発表した米国の銀行の融資担当者調査によると、信用力の低い借り手を対象にしたサブプライム住宅ローンの融資基準を「厳格化した」との回答が56.3%を占め、焦げ付きの増加で金融機関が新規貸し出しに慎重になった実態が明らかになった。


米国は今回の不良債権処理について、
日本が10年かかったことをわずか半年でやろうとしている。



金融機関は積極的に損を出そうとしているし、
損出しをさせた上で大規模資本注入の策も取っている。

【参考】サブプライム関連損失12兆円規模…シティなど米金融3社(フジサンケイビジネスアイ)
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200801160012a.nwc


しかし、市場が弱気に傾いている局面においては、
残念ながら、それが完全に評価されているわけではないようだ。

【参考】米シティ、第4四半期の評価損181億ドルは不十分との声(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-29784620080116

ただ、第4・四半期で悪材料が出尽くし、今後の業績向上への土台ができると期待していた市場関係者の間では、評価損が不十分、との声が聞かれる。

シティがもっと大規模な評価損を計上しなかったのには、資本を考慮してのことだったのかもしれない。シティは今回少なくとも145億ドルの資本増強を発表したが、もっと大きな評価損を計上していれば、さらなる資本増強が必要。資金調達コストは現在、安くはない。



たしかに、クレジット市場が機能できていないので、
保有債券の値付けができず、損が実現できないことに
起因しているため、今後損失が膨らむ可能性は否定できない。

(Aの損切りが物理的にできない状況)


しかし、諸外国が協調して米国に手を差し伸べたという行為は、
そこに米国とのパワーバランス合戦を優位に進めたいという
地政学的意味合いもあるかもしれませんが、

それよりも、

● このまま放っておけば米国への信任がさらに揺らぎ
  それはドルへの信任低下につながる。

● ドルへの信認低下は当然ドル安を招き、自らが大量に
  保有しているドル資産の価値をさらに下げてしまう。

● それは、米国だけでなく自分たちの国益にも大いに
  反することになるので、ドル崩壊シナリオは何としても
  避けなければならない。
  
● つまり、自分たちの国益にかなわない米国の衰退を
  食い止めるために協調して手を差し伸べよう。


という意図の方が強いのではないかと感じました。
(もちろん、それが見返りを求めない善意のお人好し
行為とは全く違うことは言うまでもありませんが)


そして、その「国際協調」の意図は身を結ぶのでは
ないかと思います。


従って、結論と致しましては、

● 世界の多極化が進むにつれて世界の基軸通貨も
  ドル一人勝ちの体制から多通貨分散型に移行する。

● しかし、その流れが一気に進むとドル崩壊を
  招く懸念があり、それは米国だけでなく
  世界各国の国益を損ねることになるので、
  ドル崩壊を食い止める策を世界が協調して
  取ることになる。


と個人的には考えています。


ちょっと大元のお題とはかなりずれる内容となってしまったかも
しれませんが、米国の動向については
そんなことを想定している次第であります。

(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_8.html

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
しかし、ドルは大幅に下落しないと、実質的な米国の立直りはないでしょう。
hbar
2008/03/26 06:01

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