途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 米国は本当にこのままダメになるのか【前編】(2008年世界情勢を考えるための10の視点:その4-1)

<<   作成日時 : 2008/01/17 21:22   >>

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今年、というか昨年くらいからの大きなテーマとして
「米国一極集中時代の終焉」というのが上げられると思います。


最近「米国が衰退している」「米国の覇権が崩壊している」
という意見を耳にされる機会が多くなったのではないでしょうか。


たしかにここ最近の米国を見ていると、
イラク戦争の成果は芳しくないし、サブプライム問題で
金融機関は破綻寸前になって景気は悪化するし、
さらにはドル崩壊の懸念まで指摘される始末。


それに加えて、中国やロシアなどの新興国の台頭により、
政治的発言力も弱まってきた感じがする。
かつての無敵の輝きは失われてしまったように
感じてもおかしくない。


相場もそれに呼応してか、主要通貨に対して
どんどんドルが売られる展開となっています。

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では、このまま米国はダメな方向にいっちゃうのか。
この問題を考えるにあたっては、
まずそもそも、我々は何を持って米国は世界最強である(あった)と
考えているのかを思い起こしてみる必要がありそうです。


米国が「世界最強」である理由は何なのか。


それは、米国が「他国と比べて」
圧倒的な「経済力」と「軍事力」を持っている

からですよね。


しかし、それだけではない。
米国には他の国にはない、もう一つ大きな強みがあるのです。
それは一体何なのでしょうか。


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<米国が他の国と違うところ>


それは、米国が
ドルという「基軸通貨」を持っていることです。


では、「基軸通貨」とは何なのか、
また、「基軸通貨」を持っていることがなぜ強みとなるのでしょうか。


「基軸通貨」とは以下の性質を持つ通貨を指すようです。

【参考】基軸通貨(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9F%BA%E8%BB%B8%E9%80%9A%E8%B2%A8

● 国際間の貿易・資本取引に広く使用される決済通貨であること
● 各国通貨の価値基準となる基準通貨であること
● 通貨当局が対外準備資産として保有する準備通貨であること。



つまり、「基軸通貨」とは

● 世界中で最も保有されている通貨であり、
● 世界中で最も流通している通貨である


ということが言えそうです。


では、そういう通貨を持つ「強み」とは一体何なのでしょうか。


ここで、先ほど見た基軸通貨の特徴の2番目である、
「世界中で最も流通している通貨」という点がポイントでして、
「世界中で最も流通している」ということは、
それだけドルに対する需要が大きくなるということです。



国際間の取引にドルが使われるということは、
ドル経済圏にいない人たちでも取引の決済のために
ドルを調達する必要が生じるということですから、
ドル需要が膨らむということは感覚的に理解できそうです。


たしかに原油や金などの商品市場を見ても、
マーケットでの値付けはほとんど「ドル建て」だ。
(「1バレル=××ドル」って言うのは聞いたことあっても
「1バレル=○○ポンド」と言うのは聞いたことないですよね)


これってすごい「強み」なんです。
なぜそう言えるのかというと、その理由はこれ。

【参考】サブプライム、世界に飛び火 田村秀男(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/policy/101863/

資本不足なのに、市場不安対策のために金利を下げるドル安政策をとるのだから、米国の株式や債券が投げ売りになるのは当然である。すると、結末は米金融市場の破綻シナリオということになりかねないが、かならずしもそうはならないところに基軸通貨ドルの強みがある。

〜(中略)〜

ドル証券は売られても、米国に資金は依然として集まる。なぜなら、投資家のインフレ対策になる石油も金もドル建てである。これらの商品市場に世界の余剰資金が集まる。石油価格が急騰するので、石油消費国はますますドルを必要とする。



これはめちゃめちゃ「強み」ですよね。
経済が悪化して資本逃避が起こりそうになっても、
自国通貨が基軸通貨である限りは、
勝手にカネが回ってくる仕組みになっているからだ。



逆に言うと、ご存知のように、
現在双子の赤字に苦しむ米国経済にとっては、
ドルが基軸通貨として、世界的に需要があり続ける
状況が必要であることが言えるわけです。

【参考】米国の経常赤字が持続可能ではなくなるとき(経済産業研究所)
http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/yoshitomi/09.html

米国の経常収支赤字は2005年には8000億ドル、GDPの7%近くに達した。それでもドルは平静だ。これは「異常」である。

〜(中略)〜

経常収支赤字の「持続可能性」は、その赤字を賄うに十分な金額の海外の「民間」資本が流入してくるかどうか、すなわち増え続ける米国の対外赤字分だけ、海外民間資本の流入も増え続け得るのかの「持続性」にかかっている。



では、なぜドルは基軸通貨としての地位を獲得することが
できたのでしょうか。





<なぜ米ドルは「基軸通貨」たりえるのか>


ドルは有史以来ずっと基軸通貨であったわけではありません。
ご存知かもしれませんが、第一次大戦前までは
英国のポンドが基軸通貨の役割を担っていました。


では、なぜ第一次大戦を期に、
基軸通貨の座が英国から米国に移ったのか。


それは、第一次世界大戦で欧州各国は経済が疲弊し、
逆に米国は戦争特需で経済が急成長したからです。
経済力の逆転現象が、基軸通貨の禅譲を生んだのです。
この点は非常に重要です。



基軸通貨の座を支えるには、「経済力」だけでなく、
「軍事力」も裏づけになっているのは確かなのですが、
「軍事力」も結局は「経済力」の裏づけが
なければ維持できないものなので、
結局国力の源となるのは「経済力」なのです。



「経済力」を伴う「軍事力」は維持可能ですが、
「経済力」を伴わない「軍事力」は維持不能です。

ソ連が崩壊したのは、「経済力」が伴わないのに、
「軍事力」を維持しようとしたからです。

【参考】軍備拡張競争(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E5%82%99%E6%8B%A1%E5%BC%B5%E7%AB%B6%E4%BA%89

ソ連は計画経済体制で得た資金を軍拡競争につぎ込み、西側陣営に対して大きな脅威となるICBMR-36(SS-18サタン)を1970年代後半に開発、1980年に実戦配備した。これに対抗する形でアメリカは1983年、レーガン大統領がスターウォーズ計画を提唱。さらなる軍拡の道を進んだソ連経済は疲弊し、結局体制崩壊の一因となった。


ということは、
米国が基軸通貨の座を維持し続けるためには、

「米国は圧倒的な経済力、そしてそれに裏づけされた軍事力
を維持し、これからも独特のダイナミズムで発展し続ける国である」

という『信任』が必要だ
ということです。
その『信任』をもってドルが流通することになる。


そして、前章で見たように、
双子の赤字を抱える米国にとっては、
(カネが足りないため、海外からの資本流入が必要)
ドル需要を自動的に喚起する「基軸通貨」の地位が
必要であるというわけです。


では、ドルは今後も「基軸通貨」としての
役割を果たすことができるのでしょうか。





<世界の「多極化」が「基軸通貨」にも変化をもたらす>


「基軸通貨」であるためには、
『他国と比べて』圧倒的な「経済力」と、
その「経済力」に裏づけされた「軍事力」が必要である。


そして、その「力」を持って、強さを世界中に『信任』させ、
自国通貨を使用・保有する動機を促す。
こうして「基軸通貨」としての地位を確立させていくのです。


ここで、ポイントとなるのは、
『他国と比べて』という部分です。



つまり、米国経済そのものの今後の方向性も重要なのですが、
それと同じくらいか、それ以上に、
今後米国に匹敵する力を持つ国が出てくるかどうか
ということがより重要なポイントとなります。


第二次大戦以降、「経済力」・「軍事力」両方を兼ね備えた大国は
米国一国以外にありませんでした。


ソ連崩壊による冷戦終結によって、一方の極が自滅したことで、
生き残っていたもう一方の極である米国の相対的な力が飛躍的に上昇し、
一人勝ちの状態がしばらく続いていた。


しかし、近年の中国の台頭、及びロシアの復活によって、
その状態に変化が生じてきた。


米国の国力の絶対水準が落ちたかどうかはわかりませんが、
米国の力が相対的な意味で落ちていることは間違いない。



それを、「米国の衰退」という言葉で表現されることもあるようですが(注)、
いずれにしろ、そういうパワーバランスの変化が起きている。

(注) 国力の絶対水準を数値で表すとし、
    仮に10年前が 「米国:100、中国:30、ロシア:20」であったのが、
    10年後の現在、「米国:100、中国:60、ロシア:50」になったとすると、
    米国の絶対的な国力水準は落ちていないが、
    相対的な力関係では影響力が落ちているといえる。

【参考】多極化時代のパワーバランスを読む
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_17.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_18.html
http://keyboo.at.webry.info/200708/article_19.html


つまり、これまで世の中があまりにも米国中心に
回りすぎていたのでその修正が起きている。
新興国の台頭は確実に多極化の世界を作り出している。



しかし、これは決して不可思議な現象ではない。
過去の歴史を振り返ってみても、
世界は多極化であるのが普通だったのだから。


従って、長い目で見れば、
新興国がさらに経済力をつけて
相対的地位を上げ、各国の資本市場が
整備されるにつれて
「基軸通貨」も米国の一極集中から、
他通貨分散型に移行すると考える方が
自然のような気がします。



では、それは「ドルの崩壊」を意味するのでしょうか。

【参考】強まるドル崩壊の懸念(田中宇の国際ニュース解説)
http://tanakanews.com/070918dollar.htm

世界の金融専門家たちは、米連銀の利下げでドルの魅力が減り、世界の投資家のドル離れが進み、それがさらにドル下落を加速する悪循環に陥り、国債基軸通貨としてのドルの地位が崩壊するのではないかと懸念している。


(長くなるので次回に続きます)
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_7.html

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