途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 国際的な問題が先送りされる可能性(2008年世界情勢を考えるための10の視点:その3)

<<   作成日時 : 2008/01/15 23:10   >>

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週末に行われた台湾の立法院選挙は、
与党の民進党の苦戦が予想されておりましたが、
結果はその予想を遥かに通り越して、
何と野党の国民党が3分の2を超える議席を獲得して圧勝。


2005年の日本の衆院選挙での小泉自民党の圧勝を
思い起こさせるようなとんでもない結果になりました。

【参考】台湾立法院選、野党の国民党が圧勝・3分の2超す議席(日経)
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20080112D2M1202W12.html


過去記事でも何度かお伝えしましたように、
今年2008年は台湾にとって独立の絶好のチャンスであり、
当然それがわかっていた民進党は、領有権を放棄するための
憲法改正の準備を着々と進めており、この選挙と総統選で勝てば、
期待が現実のものになる可能性が十分に考えられた。

【参考】 「台湾問題」とは何なのか
http://keyboo.at.webry.info/200711/article_1.html
【参考】台湾「独立」の要件とは何か
http://keyboo.at.webry.info/200711/article_2.html
【参考】台湾「独立」が「爆弾」になる理由
http://keyboo.at.webry.info/200711/article_4.html


そして、大多数の台湾住民も自分たちは独立した国家である
という認識を持っていたので、そうであればこのチャンスを
活かす行動を取るかと思われたが、そうしなかった。

【参考】2006年 両岸関係の世論調査総合報告(台湾週報)
http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/07/070219d.htm

台湾の将来について、77%の人が「台湾は主権の独立した国家」の考えに同意しており、78%から89%の人が台湾の将来は2,300万の台湾国民が決めるべきと考えている。また、46%〜55%の人が両岸の「最終的統一」に反対であり、65%の人が中国の「台湾は中華人民共和国の一部分」という主張に反対だった。さらに、半数以上の人が国家統一綱領が台湾は最終的には中国と統一しなければならないと定めていることに反対を示している。


彼らは独立に反対する国民党を選んだのです。
なぜ中国からの独立志向を持っている彼らが、
独立に反対する国民党を選んだのでしょうか。





<独立志向の民進党が大敗した理由>


今回の台湾立法院選挙では何が争点となったのでしょうか。
我々外様から見てみれば、2008年なので当然「独立」が
最大の争点になると思っていた。


つまり、正式に「台湾」となるのか、
それとも「中華民国」のままいくのかという選択。


しかし、現実は違った。
一番効いたのはやはりこれでした。

【参考】台湾立法院選、野党・国民党が大勝の勢い(日経)
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20080112D2M1202G12.html

台湾独立を志向する陳水扁政権の与党・民進党は有権者の「台湾人意識」をあおる戦術をとったが、政権を担ったここ8年間の経済運営などへの失望を覆せなかった。


そう、国民の関心は「独立」よりも「経済」にあったのです。
理由は簡単。今の暮らし向きが悪いからです。


明日の飯のタネにも困るのに、
「独立」とかなんか考えてられるかい
ということなのかもしれません。
確かに目先だけを考えると「独立」で飯は食えませんからね。


ここにも自分たちの暮らしを改善してくれない
現政権に失望し、「変化」を求める有権者の姿勢が
見て取れた。



過去記事にも書きましたが、
この現象は我々にとっては「デ・ジャブ」です。


基本的に人間というのは
自分に余裕のない限りは、より身近なことに関心が高まる
傾向にあるようです。

【参考】 2008年世界情勢を考えるための12の視点(その1:今年は何と言っても政治の年)
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_2.html


なので、人々の暮らし向きが苦しい(と感じている)
と感じている局面では、『遠い「独立」よりも近くの「経済」』
に有権者の関心は向かう。
台湾も例外ではなかったわけです。


このことから、
今日のお題を考える上で重要な示唆が得られます。






<先進国の景気悪化+選挙=国内問題にシフトすると?>


それが「懸念」なのか、実際にそうなっているかは別にして、
先進国の経済状況は「少なくとも良い状態ではない」
ということは誰の目にも明らかになっている。

【参考】米景気減速の影響で世界経済も後退、日本も輸出鈍化、国連経済見通し(AFPBB)
http://www.afpbb.com/article/economy/2334575/2510795


そして、もっと重要なのは、
専門家による判定ではなく、
大衆の大半が「景気が悪いと感じている」
ことなのです。



なぜ、専門家の判断より大衆の判断の方が重要なのかというと、
それは「今年が選挙の年」だからです。


「景気が悪い」という実感は、当然大衆である
有権者の不満を招き、それが現政権への批判票として
彼らの投票行動につながるからです。



専門家がデータを示していくら「格差は拡大していない」
と言ったとしても、当の有権者がそう感じていなかったら、
選挙の年の政権運営を考えるに当っては意味がないわけで。
(私個人の考えも別にして)

【専門家の判断】景気は回復基調続く=大田担当相
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK005624920080115

【大衆の実感】景況感 9カ月連続悪化 見通しも低水準 12月街角調査
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200801120018a.nwc


ということは、そういう景気の悪い(と有権者が感じている)国で
かつ選挙がある(近い)年の政権運営としては、
とりあえず目先の景気対策にシフトする可能性が
極めて高くなるわけです。


つまり、目標設定上は、
「緊急かつ重要な問題」が重視されるようになる。


しかし、それは言い換えれば、
「緊急でないが重要な問題」は極端な話無視される
可能性も高くなるということなんですね。


画像



【参考】重要なこと緊急なことを区別する(フランクリン・プランナー)
http://www.franklincovey.co.jp/products/system/important.html

では、あなたにとって本当に実行するべきことはどの領域にあるでしょうか。第II領域の「緊急ではないが重要」な活動は、問題が発生することを見越してその予防をしたり、真の成果を出すための長期プランを考えたり、重要な会議やプレゼンテーションに備えたり、豊かな人間関係を築くなどです。長期的な視野にたってみると、自分にとって本当に必要なのは「緊急ではないが重要なこと」の領域にないでしょうか。

こういった活動をおろそかにすると、小さな問題が深刻な危機になりやすく、第I領域の「緊急かつ重要」なことに費やす時間が増える悪循環に陥り、ストレスも増えるばかりです。反対に、「緊急ではないが重要」である計画や予防や準備に十分な時間を費やすと、重要なことが差し迫った緊急な問題になるのを防いで、第I領域を減らす効果がもたらされます。



台湾における「独立」の問題は、
上の表でいう「緊急でないが重要なこと」に当りますが、
「景気」という「緊急かつ重要な問題」がより重視されました。


また、日本における「憲法改正」の問題も、
「緊急でないが重要なこと」に当りますが、
「格差是正」という「緊急かつ重要な問題」の前にかき消されました。


このように、景気が悪くなると、
有権者の関心は国内問題にシフトすることになり、
政策もよりそっちの方に傾斜せざるを得なくなります。
(「緊急かつ重要な」景気対策が最大の争点に)



経営と同様、政権運営も使える資源は限られていますから、
国内問題にシフトするということは、
同時に国際間で協力して解決しなくてはいけない問題に
対処する資源が足りないため、これらの問題が先送りに
される可能性があるということが言えるのです。







<「緊急ではないが重要な問題」は景気のいい時でないと取り合われない>


では、国際間で強調して解決しなくてはいけない問題とは
何なのでしょうか。


パッと思い浮かべただけでも以下の2つは
あげられるのではないでしょうか。


● 環境問題(地球温暖化問題)

● 天然資源の枯渇化問題

● 食糧問題



これらは非常に重要であると世界的に認知されていますが、
今日・明日にでも危機が訪れるわけではありません。


しかし、長い目で見れば絶対解決しなくてはいけない問題で
あるため、「緊急ではないが重要な問題」
と位置づけられることができそうです。


従って、そういう性質の問題は、
今現在の暮らし向きに不満のある有権者にとっては、
関心が二の次になりますし、景気後退に陥っている
国の政権運営上も、この手の問題の優先順位は低くなります。


それを証拠に、これまでの先進国の選挙では、
目先の景気対策を訴えた側が勝利し、
長い目で見て重要な問題を訴えた側が
総じて敗北している。



「緊急でないが重要な問題」が有権者に受け入れられるのは
景気がよくて他の事を考える余裕があるか、
その国の有権者がよっぽど成熟しているか
のどちらかです。


「自分のことを差し置いても地球全体の問題について
考えよう」という極めて成熟した有権者がいる国
なんていうのは恐らくありませんから、
この手の問題は「緊急にならないうちは」
景気のいい時でないと真剣に取り合われない
性質の問題であるとも言えそうです。



この手の地球全体にかかわる問題は、
先進国が主体的に動かないと解決しない問題なので、
従って、その当の先進国の景気が悪化している現状では、
問題が先送りされる可能性が高いのでは
と考えられる気がするのですがいかがでしょうか。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200801/article_6.html


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