途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 台湾「独立」の要件とは何か(中国分裂の可能性を探る:その5)

<<   作成日時 : 2007/11/02 08:23   >>

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中国共産党政府にとって
「目の上のたんこぶ」である「台湾問題」。
しかし、それは国共内戦に負けて本土から逃れてきた
国民党政府が不必要に売ってしまった「ケンカ」であった。


少数派であった本土人(外省人)は
多数派を抑え込むために圧政を敷いた。
これはもともと台湾に住んでいた人たち(本省人)
にとってはいい迷惑であった。


ここに「『本省人』対『外省人』」の対立関係が生まれた。
台湾は一枚岩ではないのだ。


しかし、台湾も民主化が進み、
本省人の利益を代表する「民進党」が結成され、
ついに、その「民進党」から総統が輩出された。


ここから、台湾の動きに変化が見られるように
なったのです。
(すいません、このシリーズほんとに長くなりそうです)



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<「台湾」名で国連加盟申請をした意図は>


本省人からしてみれば、台湾は「台湾」であって、
「中華民国」ではない。


中国全土を代表する正当な政府であると言うつもりも
なければ、当然本土の領有権を主張するつもりもない。
「中華民国」などと名乗ってしまうから
ややこしいことが起こるのだ。


だから、民進党から選ばれた陳水扁総統は、
こういう行動に出たわけです。

【参考】台湾名で初の国連加盟申請 陳総統、存在をアピール(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/69106/


これまでも台湾は国連への加盟を申請してきました。
しかし、それは「台湾」名ではなく「中華民国」としてでした。


「中華民国」ということは、「タテマエ上」、
「中国本土の正当ある政府」と主張しているため、
本土の共産党政府と国交を結んでいる国が多い中、
その申請は当然却下されてきたわけです。


しかし、今回は様相が違います。
「中華民国」という「タテマエ」を捨てて、
初めて「台湾」として国連加盟を申請したのです。



つまり、それは本土政府に振り上げていた刀を
引っ込めることを意味するわけですから、
理屈上、国連は申請を却下する理由はなくなるわけですし、
これで「台湾問題」はめでたく一件落着ということになる。



はずだった。
しかし、そうはならなかったのです。

【参考】「台湾」名称の加盟提案を却下 国連総会(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/86167/

国連総会は21日、本会議を開き「中華民国」ではなく「台湾」の名称で初めて出された台湾の国連加盟提案について、18日から始まった62会期(1年間)の議題としないことを正式に決めた。議題の採否を決める一般委員会が議題にしないことを決め、総会に勧告していた。(共同)



国連は採択どころか今後一年間(2008年9月まで)
議題にすらしないという判断を下し、
門前払いしてしまったのです。


では、なぜ門前払いされてしまったのか。
国連はその理由をこう述べています。

【参考】国連、台湾名義の加盟申請を受理せず(iza)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/70632/

書類を返却した理由について事務総長報道官は、中華人民共和国を中国の唯一の正当な政府とし、国連の代表権を有するとした1971年の総会決議に基づき、国連事務局は「1つの中国」政策を維持しているためと説明した。



これって何かおかしいですよね。
「中華民国」ならまだしも「台湾」名で
加盟申請するということは「1つの中国」問題に
あたらないはずなのに、国連は申請を却下してしまった。


そこまでして中国(本土)に義理立てしたかったのでしょうか。


実はそうではない。
ちゃんとした理屈がありそうなんですね。
(ここからは思いっきり仮説です)





<台湾の国連加盟申請はなぜ却下されたのか>


一体どういう理屈なのか。


それは、国連からしてみれば、

「おまえら『国連申請の』名前を変えただけで
実際は変わってないでしょ」


というわけ。


どういうことかというと、
確かに国連への申請は「台湾」名にしましたが、
実際の国名が「中華民国」から「台湾」になったわけではない。


さらに、台湾はまだ名目上
本土の領有権の主張を取り下げたわけではない。


【参考】中華民国(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E6%B0%91%E5%9B%BD

中華民国の主張する国土の総面積は11,418,174kmである。このなかには現在中華人民共和国の中国共産党政府が実効統治している区域に加え、外蒙古(モンゴル国、トゥヴァ共和国)、清朝がロシア帝国に割譲させられた領土(江東六十四屯、パミール高原)、インドのアルナーチャル・プラデーシュ州、それにミャンマー北部の地域(ミッチーナ以北の地域、胡康河谷、江心坡及びに南坎)も含まれている。これは、中華民国が清朝の全ての国土を継承したという認識によるものであり、中華民国はモンゴル国の独立を公式的には承認していない(詳細は中華民国における外蒙古の扱いを参照のこと)。さらに、日本の主権下にある尖閣諸島に1969年、「青天白日旗」を掲揚し、付近海域の石油採掘権をアメリカ企業に与えた上に、1971年6月以降は中華人民共和国による同様の主張に対抗するべく、領有権を主張している。



【参考】中華民国憲法追加修正条文(台湾週報)
http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/06/060410c.htm

第四条 D
中華民国の領土はその固有の領域により、立法院総数の四分の一の提議により、四分の三の出席および出席委員の四分の三の決議を経なければその変更を提出することはできない。また同案の公告から半年以内に、中華民国自由地区の有権者の投票による再審議を行い、その有効票の半数以上の同意がなければこの変更はできない。



つまり、領有権変更に関しては
最終的に住民投票によって決めなければならないのだが、
それが行われていないのだ。

【参考】国連加盟賛否の住民投票、台湾総統「目的は統一拒否」(iza)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20071029id26.htm
(行うべき住民投票は国連加盟の是非を問うものではなく
領有権に変更に関わるものでなければならないはず)


これは明らかに「名」を呈しているのみで
実際は何も変わっていないことを意味する。
これでは国連も申請を受理できるわけがない。



従って、この段階において国連が台湾の加盟申請を
拒否したのは「理屈上」間違った判断ではなかったのです。


このことは当然陳水扁総統もわかっていたはずです。
これはジャブを打ったに過ぎない。


わかっているからこそ、
彼は「憲法改正」を企図し、領有権の問題についても
次のように言及しているのです。

【参考】陳総統「台湾の現状に合致した新憲法の早期制定をめざす」(台湾週報)
http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/06/060925a.htm

陳総統はまた、新興の民主主義国家には往々にして過去の権威政権時代から慰留した憲法を有しており、例えば台湾の現行憲法では、領土について「その固有の境界により、国民大会の決議を経ずして変更することはできない」と明確に定められているが、ある者はその境界はモンゴル共和国と中国大陸を含むべきだと主張し、またある者は清王朝時代の地図ではなく、元王朝まで遡り、境界線をヨーロッパやアジア、アフリカ大陸にまで広げるべきだなどと主張していることを挙げた。陳総統はこれに対し、モンゴルと中国はすでに国連の加盟国でありともに独立した主権国家であり、台湾とは完全に非隷属関係にあると述べたうえで、こうした現実とかけ離れた憲法について、憲法の正当性と合理性を追求し、社会道義を実現する観点から、しかるべき処理を真剣に考えなければならないと呼びかけた。



つまり、台湾が「独立国家」として
承認される(国連に加盟するという意味で)かどうかの基準は、

国名の変更や、独立宣言などの「名」ではなく、
「領有権の変更」という「実」にある


ということが「理屈上は」判断できるのです。


つまり、
国名が「中華民国」であるか「台湾」であるかは
どうでもいい話なのです。


台湾が憲法改正をして、本土の領有権主張を放棄すれば、
「中国本土」は唯一共産党政府のものになるので
「1つの中国」問題は晴れて解決することになります。


そして、その要件を満たす事ができるかどうかが
試されるイベントが来年待ち構えているのです。


それは陳水扁総統の任期切れに伴う
「総統選挙」です。





<重要な意味を持つ来年の台湾総統選>


来年行われる台湾総統選挙は、
民進党(内省人側)から謝長廷氏、
対する国民党(外省人側)からは馬英九氏が
立候補することになっています。

【参考】謝長廷(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AC%9D%E9%95%B7%E5%BB%B7

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【参考】馬英九(wiki)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E8%8B%B1%E4%B9%9D

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では、両者はどういう主張をしているのでしょうか。
彼らの生の声に耳を傾けてみると、、、


【参考】台湾総統選・書面インタビュー 謝長廷氏(民進党)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071008/chn0710081941002-n1.htm

私は「共生」という哲学理念をもって中台関係を処理すべきだと主張している。軍事力の均衡を主張し、両岸(中台)対話の再開に尽力する。対話によって台湾海峡の緊張を緩和するためだ。両岸問題は急いで決断を下す必要はない。(中台がともに)経済を発展させ、政治体制を改革し、社会問題を処理する余裕があれば、自然に平和かつ安定的な中台関係ができる。ただし、台湾は主権独立国家であり、現状にふさわしくない現憲法を改正する必要がある。




【参考】台湾総統選・書面インタビュー 馬英九氏(国民党)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/071008/chn0710081943003-n1.htm

私が政権をとれば、「台湾を主として、人民に利益を」の立場から両岸(中台)関係を展開させ、一年以内の(航空機による)直航実現に向けた交渉を行いたい。チャーター便の常態化から始め、大陸観光客の開放は年間100万人とし、これが台湾経済に大いに貢献すると思う。また、中国の妨害により、中華民国を認めない国が多くある。わが国の正式名称は中華民国であり、私が出馬するのは中華民国総統の選挙だ。来年3月に台湾人民は自らの意志で自らの総統を選出して、これをもって国家の主権を体現し、中華民国の国家主権を示す。



ここからわかることは何か。


それは、

「憲法改正を意図しているのは民進党の側である」

ということです。


国民党の馬英九氏は憲法改正については言及せず、
あくまで現状維持を意図しており、
「中華民国」という国名へのこだわりも見せております。


ということは、台湾が晴れて国連に加盟し、
主権の回復(国際的に認知されるという意味で)を
果たすためには、民進党の謝長廷氏が勝つ必要がある
ということがわかります。



そういう意味で、来年の台湾総統選挙は
非常に重要な意味を持っているのです。


しかし、よくよく考えてみると、
これまであえて触れてこなかった
1つの疑問点が沸いてくるのです。


(次回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200711/article_4.html


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
非常に参考になるエントリーでした。

憲法上の領有権の放棄が「台湾」たらしめることになるわけですね。
@隼人正
2007/11/02 13:51
物事の新しい見方を培える、良いエントリーですね。

推論ではありますが、中国本土の方々には
「従来からの国民党との確執(ケンカ)から言えば、民進党を支援したい。だが、‘一つの中国’を維持したい思惑から、非中国化(独立)を目指す民進党を素直に支援はできない。」
この様なジレンマがあるのでは、という考えに至りました。
猟虎
2007/11/03 15:01
@隼人正 さん>
コメントありがとうございます。これはあくまで私の仮説なので、本当のところは後の歴史が判断することになると思いますが、台湾問題の矛盾を色々調べていくと、やはり「憲法」の問題に行き着くわけで、それは民進党の首脳も認めているところであり、では「憲法」の矛盾は何かということを考えてみると、やはり「中華民国」というものが中国全土を支配することを前提としているということから、それはストレートに「領有権」の問題になるはずだというふううに考えたんですね。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/04 22:20
猟虎さん>
コメントまたお褒めの言葉を頂戴し、ありがとうございます。たしかにおっしゃるようなジレンマは考えられるかもしれませんね。私個人としては、中国本土(というか共産党政府)からしてみれば、「現状維持」が一番であり、本当は台湾問題には触れたくないと考えていると思っておりまして、軍事侵攻してもいいこと何もありませんし、今の状態で不利益を被っているわけでもないし。そういう観点から考えると、あくまで現状を変えようという勢力に対して否定的になる(現に国民党と共産党首脳は蜜に会談をしている)力学が働くと思われますので、やはり純粋に民進党は支援できないという立場。しかし、そこにはおっしゃるような心理的なジレンマがあるのかもしれませんね。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/04 22:26
 シリーズ途中ですがどうもお疲れ様でした。

 台湾問題や台湾の歴史は私は帝国電網省のコラムの英訳をやった関係でいろいろ調べる機会は多かったのと、それから個人的に台湾人の知人が多く、客家系本省人、閔南系本省人、外省人、先住民の血の入った人などいろいろいて、それぞれの立場から話を聞いてますので、台湾は一枚岩じゃないどころでなくて、独立派や中華派だけでなく現状維持派などいろいろいますからね。

 で、中国が台湾を中華の一部だとする論理と、国民党が中国全土の領有権では飽き足らずかつての清朝の領土まで含めるなど、毛局共産党と国民党は一つ穴のムジナの中華なんですよね。でもこの根拠として是非シリーズで扱って頂きたいのが、スペインやオランダの植民地時代まで遡った台湾の歴史です。そうすると中国が台湾の領有権を主張する根拠や、尖閣諸島に対する主張を考えると、それがそのまま沖縄に当て嵌まりますから、これは非常に危険な要因を孕んでいると思います。
文太
2007/11/07 13:33
 ただ台湾人の98%が漢民族という現状で、台湾人には中華意識というものが非常に強いのも一方ではあって、彼等からは、日本よりも中国の方が圧倒的に近親意識が強いのも事実ではあります。

 中華というものは昔から分裂を繰り返しながらも結局強迫観念的に一つにまとまる習性があって、実際中国の方言などは欧州各言語位の隔たりがあるのに、それでも中国人が「一つの中華」に拘るのはこれはもう民族性としか思えないんですよ。
文太
2007/11/07 13:34
文太さん>
コメントありがとうございます。さすがに現地の方と交流がおありなだけに非常に奥が深いですね。私は中国や台湾に知り合いがいるわけでもなく、ましてやインサイダー情報を入手できる立場にいるわけでもありませんから、どうしても事情をデフォルメしすぎて二元論的な単純構造を描いてしまう悪い癖があるようです。マルコおいちゃんさんからも別のエントリーでコメント頂いたのですが、中国上層部の権力闘争も北京・上海で単純に分け合っている構図ではないようですし、この台湾に関してもおっしゃるように「二元」どころかもっと複雑な様相を呈しているようですね。さて、落としどころを考えずにはじめてしまったこのシリーズですが、最終的には表題どおり「中国分裂」の可能性とその影響(とくに日本に対する)を論じられたらいいなと考えているのですが、仮に中国が分裂して民主化が行われたとして、それが台湾とくっつくという事態が発生した場合、それまで仲間うちで矛先を向け合っていた漢民族が文字通り「一つ」になると、その矛先が日本に向かう可能性は十分考えられると思います。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/07 20:05
(続き)
そうなるとおっしゃるように領有権として「沖縄」を主張してくる可能性も出てくるわけで、民主化は民主化でそれも日本にとっては必ずしもよろこばしい事態にはならないのかなと考えたりしています。ご指摘の「領有権」の根拠の問題に関しては、私も非常に気になるところではありますので、このシリーズが挫折することなく続けれることができれば(お恥ずかしながら、若干迷宮入りの様相を呈してきています(笑))、是非取り上げさせて頂きたいと思います。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/07 20:05

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