途転の力学

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 本当の黒幕は誰だったのかA(郵政民営化の本質を探る:その8)

<<   作成日時 : 2007/10/12 23:24   >>

トラックバック 5 / コメント 2

画像



全省庁がいやがる郵政民営化を断行したはずなのに、
「公務員制度改革」には及び腰だった小泉さん。
それは、小泉さんが官僚全部を相手にケンカをすることを
恐れていたということを露呈してしまった。


それなのに、全省庁が嫌がる本格的な行財政改革の
一歩であったはずの郵政民営化法案が通ってしまった。
これは一体何を意味するのか。


それは、今般の「郵政民営化」が、
当初の理念に反して、実は「全省庁」がいやがる改革とは
ならなかったということが考えられる。


では、このスキームの一体どこに穴があったのでしょうか。


郵政民営化の根底にあるのは、
財政投融資を受けた特殊法人の不良債権問題であることが
判明したわけですから、このスキームの実効性の判断基準は
以下の2点で考えることができそうです。


@ 財投へのカネの流れを止めることができたのか
  (入口の問題)

A 特殊法人の実態が明らかになったのか
  (出口の問題)






<仕組み上の「穴」はやっぱり存在した(入口の問題)>


では、まず@の入口の問題から。


これまで何度かご紹介してきましたように、
今般の財政投融資改革で何が行われたのかというと、
郵貯・簡保から財投への全額預託を廃止し、
財投へのカネの流れを断ち切るということでした。

【図1:自主運用前】

画像



【図2:自主運用後】

画像



では、郵貯・簡保からカネを断ち切られた特殊法人(財投機関)
はどうやって資金調達をするのかというと、
自らの信用力を担保に、つまり政府保証のない債券(財投機関債)
を発行して、自力で資金調達をするということになったのです。


これであれば、無駄なカネが郵貯・簡保から流れることも
なくなるし、資金調達したければ自らの信用力の裏づけが
必要となる(信用がなければ金利が高くなるか、債券を買って
くれる人がいなくなる)ので、特殊法人の財政規律が高まる。
こういうわけなのです。


しかし、ここでひとつ落とし穴がありました。
もう一度【図2】をご覧ください。


以前この図をご紹介した際はあえて触れなかったのですが、
ここに、資金調達のもう1つのチャネルの存在に
お気づきになられたでしょうか。



それは国の信用で発行できる「財投債」の存在です。
国の信用で発行できるのですから、
「財投債」とは勘定科目上「国債」です。
「国債」ですから、当然「政府保証」がつきます。


つまり、特殊法人の資金調達のチャネルを

預託金(政府保証あり)⇒財投機関債(政府保証なし)
   
に一本化するはずだったのが、

預託金(政府保証あり)⇒財投機関債(政府保証なし)
                財投債(政府保証あり)


の二本立てになってしまったのです。


「財投債」経由で流れた資金は、
政府保証がつくという意味で、
これまでの「預託金」と何ら変わらない。


ということは、
チャネルの名前が変わっただけで
実質的には何も変わらない可能性がある
という
仕組み上「穴」が存在するように見えてしまうわけです。


では、
この仕組みは本当に「穴」から崩れてしまっているのでしょうか。





<現時点では「穴」から崩れているわけではない(入口の問題 その2)>


まず、財政投融資の残高自体がどうなったかを見てみましょう。
下の絵をご覧ください。

【参考】財政投融資の残高推移(財務省HP等より)

画像


画像




この絵から直感的にわかることは、

● 財投全体の残高は着実に減っているが  
  (415兆円 ⇒ 290兆円)

● 預託金と同様の性質を持つ「財投債」の
  残高は着実に増えており、

  (44兆円 ⇒ 139兆円)
   
● 本来の資金調達チャネルとなるはずの
  「財投機関債」は「財投債」ほど伸びていない

  (財投債:95兆円増に対し、財投機関債:19兆円増)

ということです。


つまり、残高自体は着実に減っているものの、
新規の資金調達はかなりの部分は
いまだ「政府保証」付きのカネによって賄われている  
ということがわかる。



では、一方郵貯・簡保からのカネの流れはどうなったのか。
それを表したのが下の絵です。

【参考】郵貯・簡保と財投との関わり(総務省、郵政公社ディスクロージャー誌より)

画像



これを見ると、

● 財投との関わりは着実に薄くなっており、
  (年間数十兆円ペースでの減)

● 経過措置(注)に伴う「財投債」の引受額も
  減っているが、

  (21.5兆円(H13)⇒12兆円(H18)⇒5.7兆円(H19計画))

● その分純粋な国債保有も増加しているため、
  (年間10〜20兆円ペースの増)

● 当初の狙いであった、「官」から「民」へ
  カネの流れが変わったとは現時点では言い難い


ということが見て取れます。

(注) 経過措置とは
http://www.mof.go.jp/zaito/zaito2007/Za2007-03-06.html

財政投融資改革により、郵便貯金と年金積立金が全額預託される制度が廃止され、財政融資資金は財投債の発行を通じて市場から資金調達を行うことになりました。 ただし、新しい制度に安定的に移行するためには、制度変更に伴う一時的な影響に配慮する必要があります。具体的には、郵便貯金等に預託金の払戻しを行うために必要な資金を市場調達した場合の市場への影響等を勘案し、郵便貯金や年金積立金などが財投債の一部を直接引き受けるという経過的な措置を行っています。この措置はあくまで時限的な措置であり、郵便貯金等に対する預託金の払戻しが基本的に終了する平成19年度末をもって終了することとしています。


今の段階でこれを総合的にどう評価するかは
非常に難しいところではありますが、
ベクトルとして

● 財投自体が縮小していること
及び
● 郵貯・簡保の財投との関わりが薄くなっている

という方向性は出ていますので、
入口だけを見てみれば、及第点はあげられなくとも、
落第点までをつける必要はないと思われます。


つまり、仕組みとしては「穴」が存在するが、
今のところは、その「穴」の弊害があらわれていない
という点では落第点を与える必要はない。



しかし、今後その「穴」から崩れる可能性はゼロではない
という点では、及第点を与えることもできない。



そういう風に私は理解いたしました。
では、出口の方はどうなのか。





<特殊法人の実態は明らかになったのか(出口の問題)>


この問題に関しては、以前言及したことがありますが、
再度おさらいしておきたいと思います。

【参考】財政再建のための郵政民営化論A(郵政民営化の本質を探る:その6)
http://keyboo.at.webry.info/200710/article_6.html


財投の問題は特殊法人の不良債権問題であり、
不良債権問題解決のためには、
実態を正確に把握することが必要で、
そのためには信頼に足るディスクロージャー(財務諸表)
が必要であるということを述べました。


その議論の中で、財務省が財政投融資改革の
フォローアップ報告書の中で、
特殊法人の財務諸表が以下のように提示されました。

【参考】財政投融資改革の総点検フォローアップ(財務省)
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaitoa/zaitoa171212_a.pdf
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaitoa/zaitoa171212_b.pdf(詳細)


【貸借対照表・損益計算書・財投残高】

画像



【報告書に記載された留意点】

画像



この報告書の中で、
財務省は特殊法人の健全性に関して胸を張っておりましたが、
私は、これに関して3つの懸念を提示いたしました。

【参考】「財投事業の多くは不良債権化している」って本当なの?(財務省)
http://www.mof.go.jp/zaito/zaito2007/Za2007-03-08.html


@ この報告書は財務省(旧 大蔵省)が自ら主催して
  書かれたものであり、完全なる第三者のガバナンスを
  受けたものであるとは言い難い。


A 貸出債権は、債券や株式と違って市場で売買される
  ものではないため、その価値が毀損しているかどうか
  の判断、つまり不良化の判断基準に市場価格のような
  唯一客観的なものがなく、恣意性を挟む余地がある。


B 日本道路公団はへの28兆円の財投は
  既に不良債権化してしまっているということ。
  また住宅金融公庫をはじめ、兆円規模の財投を
  投じている機関で債務超過あるいは自己資本が
  非常に乏しい先が散見される。
  (住金、都市再生機構、国民生活金融公庫等)



そして、専門家からも次のような問題点が
指摘されておりました。

【参考】特殊法人(横山会計事務所)
http://www.hi-ho.ne.jp/yokoyama-a/tokushuhoujin.htm

(引用)**************************************

実態が見えない特殊法人

2001年2月、財務省は、財政制度等審議会で特殊法人の会計制度の見直しに入った(財務省は、2001年4月に、「情報アクセスガイド」として主要な特殊法人の財務諸表を公開している)。その中から、一部の財務情報を見てみると、特殊法人の実態が見えない状況が覗える。

(1) 道路建設のコストを資産計上し減価償却しない。
〜(中略)〜

(2)貸倒引当金は法定の繰入率を限度として繰り入れている。
〜(中略)〜

(3)特別損失金7,465億円が資産計上し、損益計算書で利益計上?
(以下略)

(引用)**************************************


つまり、

「国の発表した財務諸表がちゃんと実態を
表しているのかはかなり疑わしい」


という疑念はぬぐえなかったというわけで、
そんな矢先に今日こんなニュースが飛び込んで来ました。

【参考】独立行政法人、隠れ損失6000億円・日経調べ(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071012AT3S1000K11102007.html

(引用)*******************************************

独立行政法人(独法)が2006年3月末で繰越欠損金とは別に約6000億円の「隠れ損失」を抱えていることが日本経済新聞の調べで明らかになった。建物や機械などの資産価値が減った分を費用として収益から差し引く減価償却をせずにすむ独自の会計基準を採用しているためだ。繰越欠損と合計した損失は2兆2000億円に達する。将来は損失穴埋めのため財政負担が発生する恐れもある。

独法は、効率経営を目指し政府の事業を分離・独立して運営する法人。01年以降、国の機関や特殊法人などが衣替えし、現在102の法人がある。透明性向上や効率化のため民間並みの企業会計を導入したとされているが、減価償却は民間と違う会計処理をしている。

(引用おわり)***************************************


疑いが見事に的中してしまったわけです。




<黒幕は誰だったのか>


適切な会計処理を行わずに先送りにして
損失を膨らませる。


これ、かつて日本の銀行が犯した過ちをそのまま
犯してしまったというわけですね。


ここに出口改革がまったくなされていないことが
証明されてしまったわけです。



じゃあ、どうするのか?
民間の銀行がやったように不良債権処理を
断行して公的資金を注入するのか。


いやいや、そんなことをする必要はない。
お上には、「打ち出の小槌」が用意されている。
国の信用力をバックに発行できる、
「財投債」という打ち出の小槌が。



これがあれば、財投機関債が発行できない特殊法人にも
資金を融通することができる。
不良債権処理をせずに延命させることができる。


つまり、貸し手の責任が問われずに済むのだ。
そして、これは入口の問題に立ち返ると、
懸念されていた「穴」から崩れる可能性が高まったことを意味する。


では貸し手とは誰か。
そして、この改革で無傷だったのは誰なのか。


そう、それは紛れもなく財政投融資を管轄する
大蔵省資金運用部(現 財務省理財局)である。



「改革」と見せかけて、
実は「箱」の挿げ替えるだけで乗り切った。
彼らこそ、郵政民営化の
本当の黒幕だったと考えられるのです。


では、大蔵省は小泉さんの理念を骨抜きにしてしまったのか。
小泉さんは本当に大蔵省に負けてしまったのでしょうか。


(最終回に続く)
http://keyboo.at.webry.info/200710/article_9.html

banner_02.gif←あなたのお役に立てたらクリックしてください



(ご参考)

「郵政民営化」をもっと深く知りたい方におすすめの本

郵政民営化論―日本再生の大改革!郵政民営化論―日本再生の大改革!
小泉 純一郎 松沢 しげふみ

PHP研究所 1999-12
売り上げランキング : 351690

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

だまされるな!郵政民営化だまされるな!郵政民営化
荒井 広幸 山崎 養世

新風舎 2005-07
売り上げランキング : 68395

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

あえて「郵政民営化」に反対するあえて「郵政民営化」に反対する
滝川 好夫

日本評論社 2004-04
売り上げランキング : 148690

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ジャパンポスト―郵政民営化 40万組織の攻防 (B&Tブックス)ジャパンポスト―郵政民営化 40万組織の攻防 (B&Tブックス)
八木沢 徹

日刊工業新聞社 2005-04
売り上げランキング : 247111

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

郵政民営化―「小さな政府」への試金石郵政民営化―「小さな政府」への試金石
竹中 平蔵

PHP研究所 2005-02
売り上げランキング : 197907

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

郵政民営化ハンドブック郵政民営化ハンドブック
郵政民営化研究会

ぎょうせい 2006-09
売り上げランキング : 79064

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

郵政民営化で始まる 物流大戦争 - 売上高24兆円の超巨大複合企業が動く!郵政民営化で始まる 物流大戦争 - 売上高24兆円の超巨大複合企業が動く!
鈴木 邦成

かんき出版 2004-09-21
売り上げランキング : 27130

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」 (超ダイジェスト)超ダイジェスト これならわかる!「郵政民営化」 (超ダイジェスト)
松原 聡

中央経済社 2005-11
売り上げランキング : 14026

Amazonで詳しく見る
by G-Tools






設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
アル・ゴア ノーベル平和賞受賞!地球温暖化警鐘に貢献
     ||| アル・ゴア ノーベル平和賞受賞 |||アル・ゴア前副大統領と国連異常気象会議IPCCにノーベル平和賞 アカデミー賞に続きグローバルウォーミングと闘う男に世界の栄冠 ...続きを見る
米流時評
2007/10/13 12:40
理想と現実
いつもお世話になっている「途転の力学」さんの「福田政権誕生は本当に悪夢なのか」のシリーズエントリーで、福田総理は単なる媚中派なのではなく、超現実主義者ではないかとの指摘があった。 ...続きを見る
日比野庵 本館
2007/10/13 20:58
ノーベル平和賞アル・ゴア、次期大統領の可能性は?
     ||| アル・ゴア次期大統領の可能性 |||アカデミー賞ノーベル平和賞の次にゴア氏が目指すは大統領の座? グローバル環境の闘士と、京都議定書を廃棄したブッシュとの対比 ...続きを見る
米流時評
2007/10/14 10:05
株式の公開とは
日本にはたくさんの株式会社があります。しかし、その全ての株式会社が株式を発行し資金を調達できているわけではありません。証券取引所での審査に受かることのできた企業、つまり上場できた企業だけが株式を公開し、不特定多数の人に株式を発行し出資してもらうことができます。東証1部または2部といった言葉を聞いたことがあるでしょうか。東証1部の審査は非常に厳しく選りすぐられた企業だけが集まっています。証券取引の違反などには非常にチェックが厳しくすぐに上場を廃止されてしまいます。株式の公開を左... ...続きを見る
株って何?
2007/10/14 12:38
伊藤ハムが6億円の特損計上、脱税した業者に代わり関税納付
伊藤ハムが関税を支払わない豚肉の輸入業者に代わり6億円以上の納税を行うことになったようです。国税徴収法に基づいて、伊藤ハムが第二次納税義務者として納税するようですが、この輸入業者と伊藤ハムはどのような関係なのでしょうか。 伊藤ハムは14日、6億2400万円の特別損失を計上すると発表した。関税法に違反していた豚肉を輸入業者から買い取ったが、その後も同輸入業者が関税を納めず、国税徴収法に基づき伊藤ハムが第二次納税義務者として納付することになったため。 ... ...続きを見る
脱税、節税、申告漏れ・・・税金なんでもこ...
2007/10/31 16:24

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
財政投融資という時代では、なくなってきましたね。
長田ドーム
2007/10/13 05:17
10月18日付で発表された、今年の年次改革要望書・暫定訳(一部のみ)です。
発表された事実を、テレビ・新聞は昨日、本日とも一切報道せず。マスコミの存在価値無し。
【苦情先電話】0570−066−066
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-442.html
http://restororation.blog37.fc2.com/blog-entry-967.html
n
2007/10/20 10:52

コメントする help

ニックネーム
本 文