途転の力学

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help リーダーに追加 RSS 国連の本質とは何か

<<   作成日時 : 2007/10/25 10:15   >>

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「テロ特」の問題は、今まであえて触れてきませんでしたが、
前防衛次官の証人喚問にまで発展してしまい、
国会でかなり喧しい状態になっておりますので、
一応軽く触れておこうと思います。


「テロ特」すなわちインド洋での給油の問題について、
これを延長すべきかどうかについては、
賛成・反対色々な意見がありますが、
ここではその是非についてはあえて言及しません。


本稿で言及したいのは、
自民党の「給油法案」への対案として小沢さんが
提示した「アフガンへの陸自派遣案」についてです。


これは、現在インド洋で行われている給油活動と比べて
明らかに武力行使の可能性が高まることから、
党内外に波紋を呼び、物議をかもし出しました。

【参考】アフガン支援部隊「政権とったら参加」小沢氏が論文で表明(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20071005AT3S0502405102007.html

小沢氏は9日発売の月刊誌「世界」で論文を発表。「国連の活動に積極的に参加することは、たとえ結果的に武力の行使を含むものでもむしろ憲法の理念に合致する」としたうえで「政権を取ったらアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への参加を実現したい。スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に参加すべきだ」と改めて主張している。


では、なぜ武力行使の危険性が高い案をあえて
対案として出してきたのでしょうか。




<国連至上主義の小沢理論>


それは、小沢さんの判断基準が
「国連のお墨付きがあるかないか」
という一点に絞られているからです。


「給油活動」は国連のお墨付きがないから駄目で、
「アフガンでのPKO」活動はそれがあるからOKという理論です。


つまり、「国連のお墨付きがあるかどうか」
ということが判断基準となるのであって、
「武力行使の危険性が高いかどうか」ということは
自衛隊派遣の判断基準とはならない
ということなのです(注)。


(注)実は「給油活動」も米国の独断ではなく国連決議1386に
   基づいているとされているため、国連のお墨付きがあると
   いう解釈も可能となるわけですが、ここでは小沢さんの
   主張に則って議論を進めます。



これは彼の自ら言及しているように、
「国連決議は憲法を上回る」という
「国連至上主義」に基づいた、独自の安保論です。

【参考】アフガン支援部隊「政権とったら参加」小沢氏が論文で表明(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20071005AT3S0502405102007.html

「国連の活動に積極的に参加することは、たとえ結果的に
武力の行使を含むものでもむしろ憲法の理念に合致する」



【参考】「国連常備軍」を創設する(小沢一郎ウェブサイト)
http://www.ozawa-ichiro.jp/policy/04.htm

(引用)**********************************

新世紀を迎えようとする日本が平和を維持し、生き残っていくためには、国際社会との協調を図らないければならない。そのためには、国連を中心としたあらゆる活動に積極的に参加していく以外に道はない。その意味で私は、日本が率先して国連常備軍の構想を提案すべきだと思う。兵器・技術の発達により、もはや昔の主権国家論は通用しなくなった。個別的自衛権や集団的自衛権だけで、自国の平和を守ることは不可能である。集団安全保障の概念、すなわち地球規模の警察力によって秩序を維持するしかない。自衛隊は歴史的使命を終えて、これから縮小することになる。そして日本は国連常備軍に人的支援と経済力を供出すべきである。

(引用おわり)**********************************


この主張は、その是非はともかく、
非常に重要な問題提起だと考えられます。


小沢さんの主張は自国の安全保障政策を
国連の決定に委ねるというものだからです。



たしかに、国連は
「多数決によって各国の意思を等しく反映させる
ことができる、世界の最高意思決定機関」
であると考える方は多いかもしれません。


そして、国連が絶対的に中立で、
世界の有事に対して必ず正しい決断を出す場所であれば、
安保政策をその決定に委ねるという判断は
「アリ」なのかもしれません。


では、問題は
「国連がそんなに中立でかつ権威のある機関なのか」
ということになりますが、果たして本当にそうなのでしょうか。




<北朝鮮とイスラエルに非難決議を出せなかった国連>


私たちは、国連の「権威」が試された事象を
つい最近経験しています。


その事象とは、

「イスラエルのレバノン侵攻」

「北朝鮮の核実験」です。


「北朝鮮の核実験」はいわずと知れた事件だと思いますが、
当然これは国際的非難を浴びました。


また、「イスラエルのレバノン侵攻」とは、
レバノンの武装勢力「ヒズボラ」が、イスラエル兵2名を
拉致したことに対し、イスラエルが報復措置として
レバノンに対して空爆を行った事件のことで、
これも一般人を含む無差別攻撃であったことから、
国際的非難を浴びました。

【参考】レバノン侵攻 (2006年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%90%E3%83%8E%E3%83%B3%E4%BE%B5%E6%94%BB_(2006%E5%B9%B4)


この国際的非難を浴びた2つの事件に対して、
世界平和を著しく脅かしたとして、
国連の安保理決議にかけられます。

【参考】北朝鮮制裁決議案、国連安保理に提出
http://blog.goo.ne.jp/nsorit/e/42598a14882568cd0a6420568fc26fb6

【参考】アラブ各国:国連安保理でレバノンを擁護
http://www.janjan.jp/world/0608/0608169677/1.php


ここで当事者である、
北朝鮮とイスラエルに対して非難決議を出すことによって
彼らを抑止しようというのが狙いのようです。


常識的に考えれば、
2つの非難決議案はすんなり通りそうな気がします。


国連が絶対的に中立で、
世界の有事に対して必ず正しい決断を出す場所であれば、
明らかの北朝鮮・イスラエルには非があるわけですから、
国連は彼らに非難決議を出すはずだと思われました。


しかし、現実はそうはならなかったのです。


○ まず日・米が提出した北朝鮮への非難決議案については、
  制裁義務を課すことを明記することについて、
  中露(とくに中国)が拒否権をちらつかせて大反対し、
  結局制裁に関して拘束力のない案に修正されてしまいました。

  【参考】国連安保理、北朝鮮への決議を採択
  http://ja.wikinews.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%80%A3%E5%AE%89%E4%BF%9D%E7%90%86%E3%80%81%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%B1%BA%E8%AD%B0%E3%82%92%E6%8E%A1%E6%8A%9E


○ また、カタールが提出したイスラエルのガザ侵攻に対する
  非難決議案(レバノン侵攻と直接関係はありませんが、
  時期がかぶる)については、賛成多数にも関わらず、
  米国が拒否権を発動したため否決されてしまいました。

  【参考】イスラエルのレバノン攻撃
  http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k8/180715.htm


一体なぜ国連は非難決議を
採択できなかったのでしょうか。





<国連の本質とは何か>


この2つの決議案の顛末からわかることは何か。


それは、
国連とは「国際連合=United Nations」という言葉が示すように、
第二次大戦戦勝国列強(中国は戦勝国ではありませんが)
の連合体でしかなく、その本質は、


@ 「戦勝国列強の利害調整を図る場」であり、

A 安保理の常任理事国(米・英・仏・露・中)である
  列強には、「拒否権」という特権が与えられており、

B 「拒否権」が発動されれば、
  他の全ての国が賛成に回ったとしても
  その決議案は否決されてしまう。


ということであり、
その点で列強の利害にそぐわないことは、
たとえ客観的に正しいと思われることでも、
まかり通らなくなってしまう
ということです。


国連とはそういうところなのです。
全会一致を原則とするEUのような組織とは
根本的に違うのです。


ちょっと前まで日本の常任理事国入りが話題になっていましたが、
あれは「拒否権」を持たないことが前提ですね。


しかし、はっきり言って「拒否権」を持たない
常任理事国にはなっても意味がありませんし、
「拒否権」を持つ常任理事国には、
今の列強が相当の善意を見せない限りなれることはないでしょう。


これは中国だけでなく、アメリカだって反対します。
話し合いとかで解決する問題ではありません。


既得権益を簡単に手放さないのは、どこの世界でも同じです。
ましてや国際社会は力が全ての喧嘩の世界ですからなおさらです。


そういう国連というものを
憲法よりも崇めるというのは本当に是なのか。
そのことが問われるべきなんだと思います。


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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
国連の本質が、よく分かります。ご指摘の通りですね。世界はどうしたらよいのでしょうね。国連の根本的刷新を望みます。
秋桜
2007/10/26 08:43
秋桜さん>
コメントありがとうございます。米国の相対的地位低下によって、一極集中から多極化へパワーバランスがシフトすると、利害関係が交錯してしまうので、もともと国連は利害調整機能しか持ち合わせていないことを鑑みると、世界の安定に対して国連の影響力というか、実効的な役割というのは小さくなっていくと思います。これは歴史的に見てもいえることだそうです。なので、そういう時代に安保を国連にゆだねるというのは無策に等しくなってしまうので、(こないだ日本は豪州と同盟関係を結びましたが、そういう地域内の安保協定を形成するのが現実的な策のような気がします。
新快速 播州赤穂行き
2007/10/27 11:25
所謂「小沢理論」は

>小沢さんの主張は自国の安全保障政策を
国連の決定に委ねるというものだからです。

とは違うのではないのでしょうか?

あくまでも「現憲法上」で自衛隊の「海外派兵」のルールとして、「国連決議」を根拠にしようということです。それにしたがって、「海外派兵」した場合は「国権の発動」じゃないという解釈です。したがって、その場合は現在憲法上制約のある集団的自衛権もあるし、武器の使用もできるということです。

ただし、前線部隊を派遣するのか、兵站部隊や民生部分にとどめるかはそのときの政治判断で決めることということです。

@隼人正
2007/11/02 15:11
@隼人正さん>
コメントありがとうございます。たしかに私の論は少々言いすぎですね。大変失礼いたしました。「武器使用」に関する細かい技術論をするつもりはここではありませんが、「国連決議」が派遣に一要件であるというのは、筋があるというかわかりやすいし、政治家にとって「政治リスクが小さい(判断が間違っていたときのスケープゴートして「国連決議」が利用できる)」という点で、支持が得やすいかもしれません。ただ、そもそも「国連」で決められる「決議」というのがそんなにありがたい(正しい)ものなのか(世界平和に寄与するという意味において)という問題意識をどう考えるかというのが、また別の問題としてあると思っており、このエントリーではそういう部分に焦点を当てたかったのです。
新快速 播州赤穂行き
2007/11/04 22:16
>「国連」で決められる「決議」というのがそんなにありがたい(正しい)ものなのか(世界平和に寄与するという意味において)という問題意識をどう考えるかというのが、また別の問題としてあると思っており、このエントリーではそういう部分に焦点を当てたかったのです。


これについては小沢さんも認めています。小沢さんの国連重視は「改憲」までのつなぎの理論だと私は解釈しています。
(あと、民主党左派との安保合意のためのものでしょう)

@隼人正
2007/11/04 22:38

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